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「君はデングラー公爵令嬢の味方だったのか、敵だったのか?」
フェリクスが上半身を机の上に乗り出して聞いた。
「敵?味方?そんな言葉で括られない。お嬢様は俺の全てだった。そのために性悪の妹など死ねばいいと思っていた」
「どう言うことかな。説明してもらえるか」
「これから俺が述べることは妄想だと取られると思うが真実だ。お嬢様を亡くした今俺は生きている意味はない。処刑は覚悟しているし、殺してくれる方が助かる」
フェリクスアランと目を見交わした。
「わかった。どんなに奇妙奇天烈な話でも聞こう」
ダニエルは怯まずにフェリクスを見据えて話し始めた。
「孤児院に入ってしばらくしてマリアが突然おかしな事を言い出した。『私には前世があって、前世はもっと科学が進んだ国で生きていた』と。なんの話か分からなかったが孤児院の生活は院長が下衆で孤児の待遇は最悪だったので夢ぐらい見てもいいと放って置いた。当時孤児院にマリアと同じ歳の同じ名前の女の子がいた。大雨の日その子が崖から落ちて死んだ。俺は妹がびしょ濡れで泥で汚れて帰ってきたのを見た。それで問い詰めたんだ。『あの子は貴族の父親が迎えに来るから私があの子になるの。そしたら私は玉の輿よ。昔みたいに綺麗なドレスが着られるようになるの』何を言っているのか分からなかったが妹が人殺しなのは確かだった。ちょうどその頃孤児院の院長が孤児を売っていた事が明るみに出て混乱していた時だったので、妹は書類を誤魔化してあの子と入れ替わったのだと思う。俺は妹にも見切りをつけて、父がやっていたデングラー公爵家の犬になるべく当時の父の上司に繋ぎを付けた。お嬢様のその後が知りたかったからだ」
「ちょっと待ってくれ。デングラー公爵が君が従者の子と知って援助したと言っていたが」
アランがそう口を挟んだ。ダニエルは皮肉げに笑いながら言った。
「犬にするために教育を付けたが正解です。後からあの従者の息子と知ったようですが、使い捨ての犬が昔処刑した従者の息子でも気にしないのではありませんか」
「じゃあ、虐待を知らなかった従者まで処刑して後悔していると言っていたのは虚言か」
ダニエルはいかにもおかしそうに笑った。
「父は時々俺たちが住んでいる邸に来てましたから当然知ってました。あまりに母の虐待が加速して殺してしまいそうになった時一番に相談したのは父にです。とりすがるように頼んだのに父は黙ってろと言っただけです。それで新人の侍女に助けを求めたわけですから」
「呆れたな」
ぽつりとアランが漏らすとダニエルがさらに言った。
「当主に絶対の忠誠を誓う犬がお嬢様の虐待を知っていて見て見ぬふりをしていた理由は金です。あいつらはお嬢様の養育費を使い込んでいた。亡くなった奥様への愛とか言って真実は金ですよ。先代公爵と比べると今のデングラー公爵は能力は落ちると思いますよ。いくら愛してない娘でも自分の邸で何が起きているか把握できてないなんて能力がない証拠です。真実の愛とか言って罪のない婚約者を切り捨てた所業ができるなら悪を貫けよと思いますね。先代公爵が何をしたかご存知かとでしょう?王家の不和の種を撒き散らかして、なんの証拠も残していかなかった。立派な反王家派の旗頭として仕事をした。なのに今の公爵は第一側妃に脅されてお嬢様を生贄に差し出した!」
ダニエルは机を両手の拳でダンッ!と叩きつけた。
フェリクスもそうだろうとは思っていたが、デングラー公爵の偽りの多い話にうんざりした。
「話を戻すが、それで君は犬になるためにアンカー伯爵の養子になり学園に入学した」
アランが続きを促すとダニエルは頷いた。
「その間もお嬢様がどうしているか、探っていました。あいつらが処刑されても公爵はお嬢様と別居を続け会いに行くことも無かった。お嬢様は身体の虐待を受けなくとも精神的に見捨てられていた。世話をする大人はいても、空腹になる事が無くても孤独に代わりはない。俺はお嬢様になんとか連絡を取りたいと思った」
そう言ってダニエルは目頭を押さえた。
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