悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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「連絡を取りたくともたかが伯爵家の養子が公爵令嬢に連絡をすることなどできない」

 ダニエルの言葉にアランが言った。

「だから学園の教師になったのか?」

 ダニエルはアランを見て皮肉げに笑いながら言った。

「もちろんそんな自分の希望で動くことなどできない。デングラー公爵の指示だ」

「どんな指示だったのだ」

「公爵は第一側妃と第二王子を引きずり落とすつもりだった。近年は王妹殿下が隣国との和平を結ばせて鉱山のお陰で財政も豊かだ。反王家派は旗色が悪い。それなのに地雷のような第一側妃がいて第二王子がいる。第一側妃のしたことはあまりにやり過ぎだった。だからまず第二王子の瑕疵を見つけるために学園に潜り込まされたわけだ」

 フェリクスはその話を聞いて視線をアランに向けた。それに構わずダニエルは続けた。

「第二王子が婚約者を蔑ろにしている事は王宮の人間や上位貴族なら誰でも知っている。第二王子が馬鹿なことをしてくれれば、婚約者の父として第二王子を見捨てる理由ができる。だから入学して第二王子がマリアに首ったけになったと報告した時に喜ばれたよ。もっと徹底的にわかりやすくやれと指示が来た」

「君はマリアが入学して来て、すぐ妹だとわかったのか?」

「ますます母に似て来ててすぐわかりました。あっちもわかったようである日呼び出しを受けました」

「なんのために?」

「兄妹の旧交をあたためるためではありませんでしたね。マリアが言うにはこの世界はマリアが前世でやっていた“おとめげーむ”であるとーー」

「はっ?」

 フェリクスが思わず声を漏らしてしまった。ダニエルそんなフェリクスを見て言った。

「奇妙奇天烈でしょう?でもそう言うのです。その“おとめげーむ”とはなんだと言うと前世で流行った仮想恋愛だと」

「仮想恋愛?脳内で想像でもするのか?」

 アランが尋ねるとダニエルが言った。

「そんなところかもしれませんが、そのヒロインは孤児院にいたマリアという子だと。そうあたりをつけたから殺して母親の形見を盗み書類を誤魔化したと。自分がヒロインになるためにーーー」

 それを聞いたフェリクスもアランも本当かどうかとわからない事に人殺しまでするのかとゾッとしてものが言えなかった。

「そのヒロインは男爵家の庶子で数年前までは平民だったが、学園に編入して高位貴族の令息達と恋愛するのだと。男爵令嬢が高位貴族の令息に近づくことすら難しいのにもういろんな“ふらぐ”立てて近づいたと。だけれどこの世界には“あくやくれいじょう”がいなくて仲が進まない。なんとか男女の仲になれないかと」

「“あくやくれいじょう”とはなんだ。悪い役?令嬢?」

 アランが聞くとダニエルが言った。

「悪役令嬢つまりお嬢様と騎士団長子息と宰相子息の婚約者方です」

「何も悪いことなどしてないだろうよ」

 呆れてフェリクスが言った。

「マリアが言うには悪役令嬢はヒロインが婚約者に近づくのが気に入らず虐めをするのだと。だから悪役なのだと」

「ちょっと待て。それは男の方が浮気をしたと言うことだな」

「左様です」

 ダニエルは当然のように言う。

「だったら浮気する方が悪いのに悪役だなんて失礼だろうよ」

「常識のある人間ならそう思うでしょうね。でもそこに出てくる高位貴族の令息はヒロインに夢中になって自分の婚約者を断罪するのだとーーー」

「断罪?なんの権利があって?高位貴族令息の婚約者だったら高位貴族の令嬢だろう。裁く権利などあるわけない。例え百歩譲って犯罪があっても国王に訴えるのが筋だろう。自分で断罪てーーー」

「そう、高位貴族同士だったらあり得ないし、男爵の娘など高位貴族だったら難癖つけて処刑もできるのにその“おとめげーむ”を作った人間は貴族社会の常識を知らなかったのでしょうね」

 そう言ってアランが肩をすくめる。


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