悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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「それで妹はどう言う手助けをして欲しいと言ったんだ?」

 アランが聞くとダニエルはニヤリと笑った。

「悪役令嬢が自分をいじめないから攻略対象との仲が進まないので薬を用意して欲しいと」

「攻略対象?」

 フェリクスが尋ねた。

「第二王子と公爵令息と騎士団長子息と宰相子息のことですよ。なんでも“げーむ”の中でいろんな“ふらぐ”を立てるものの中で最大のイベントは悪役令嬢がヒロインをいじめてそれを攻略対象が庇うと言うのが一番大きいものだそうです」

「攻略対象などとまるで人としてみていないな……」

 フェリクスがそうこぼすとダニエルは言った。

「ですから遊びなんです。“おとめげーむ”とは。それを現実にしようとしたわけです。実際側で見ていても攻略対象達はあんなに素敵な婚約者がいるのにマリアになど引っ掛かるのか疑問でマリアに聞いてみました」

「確かに大の男が揃いも揃って」

 とアランが言うとフェリクスも頷いた。

「マリアはゲームの強制力だと言っていました。フラグを回収すれば面白いように自分に近づいてくるけれど悪役令嬢なしではハッピーエンドに辿り着けない。悪役令嬢の罪をでっち上げようとしたけど、ばれたら面倒だから薬が欲しいと」

「薬とは何の薬だ」

「媚薬と幻覚作用を起こす薬草です」

「どうやって手に入れた?」

「犬ですから公爵家の犬の元締めが用意しましたよ」

「それは誰だ」

 ダニエルは薄笑いを浮かべて言った。

「さっきここに来てましたね」

 フェリクスは眉を寄せて考えているようだった。アランが思い当たったようで手に持つペンをダンッと机に置いた。

「ーーーーーハンス・ボートン医官総長!!ーーー」

「そうです。検死のためにあんなに高名な医師が来るのはおかしいでしょう?アイリーンの補助などいくらでも医官がいるのに」

 フェリクスがそれを聞いてガタンと椅子を蹴り倒して立ち上がった。

「ボートン医官総長に避妊薬の分析を頼んでしまった!」

 しまったと言う顔で慌てるフェリクスを見てダニエルが言った。

「殿下、大丈夫ですよ。あの避妊薬は俺も持っています」

 そう言ってダニエルは上着の隠しポケットから薬包紙に包まれたものいくつも出した。

「俺がマリアに渡していたものだから本物です。まあ、信じてもらうしかないですが。ボートンを見た時に証拠を回収に来たなと思いました。さっきすれ違った時全て処分するように命令書も受け取りました」

 そう言って反対側の隠しポケットから紙を出した。ダニエルが机の上に広げて二人に見せたが、暗号になっていて見ただけでは何が書いてあるかわからない。

「それにしても、アンカー、君は犬についてそんなに秘密を暴露していいのか?」

 ダニエルは肩をすくめた。

「俺が犬になったのはお嬢様を救い出したいため。お嬢様がいなくなった今公爵の悪事を全てバラして破滅させてやりたい。それだけです。それで自分が処刑されても構わない。いや、それどころかさっさと処刑して欲しい」

 そう言うダニエルを見てフェリクスは座り直した。

「ーーーーそれでその薬をどうやってマリアは攻略対象に飲ませたんだ?」

 アランが聞くとダニエルは皮肉げに笑って

「男の欲望をくすぐる戦法でやったらしいですよ。うるうると瞳を潤ませて抱きついて、胸を身体に押し当てキスを強請って目をつぶる。『簡単にキスできた。強制力ってすごい』とマリアは自慢してました」

「口移しなんかしたらマリアも薬を摂取してしまうのではないか?」

 アランがそう疑問を呈するとダニエルはなんでもないように言った。

「マリアなど駒ですから死んでも構わない。公爵としては第二王子の瑕疵が見つかればそれでいいのですから」

「妹なのにいいのか」

 ダニエルは何を今更と言うように目を見張り

「妹?あの人殺しを妹なんて思っていません」

 と言い切った。
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