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「……殿下……」
遠慮がちに、アランに声をかけられて、フェリクスはハッとした。慌てて人差し指の腹で、涙を拭ってアラン達の方に向き直った。
「さあ、最後の男爵令嬢の尋問をするーーー」
フェリクスが言いかけると、外から『失礼します』と声が掛かった。
「なんだ」
エリックが答えて扉を開けると、学園内の警備をしている近衛騎士が立っていた。
「ご命令により帰宅しようとした生徒達に、教室にて禁足を命じていました。こんな事件が起きても、被害者の心配もせず、他人事で自分は関係ないとばかりに『早く帰りたい』不満をこぼすものばかりでした。なのに先程から急に女子生徒達が『本当にクリスティーヌ様は亡くなられたのか』と口々に言い、泣き出すものが多数出ています。『いつも穏やかで優しくしていただいたのに自分はなぜあんなに酷い態度だったのか』と嘆く男子生徒も出てきています」
アランとジョエルが顔を見合わせた。
フェリクスがぽつりと言った。
「『呪』をかけたものが死亡して洗脳のような『呪』が解けたな」
そう言ってからエリックに向かって
「今なら男爵令嬢が何をしていたか目撃者の証言が取れるだろう。近衛で手分けをして氏名を確認して証言を集めてくれ」
と命令した。命令を受けたエリックが、指示を伝えるために、教室から出て行った。
「失礼します」
また一人近衛騎士が慌てて入ってきた。
「どうしました」
アランが声をかけると
「拘束していましたエトムント・デングラーですが、ずっとマリアがマリアがとうわ言のように言って拘束を解こうとしてもがいていました。それが先程急に『クリスティーヌ様が亡くなったと言うのは本当か』と尋ねて来ました。『そうだ』と答えたところ気が狂った様に泣き出しました。いかがいたしましょうか」
と聞いて来た。それを聞いたフェリクスは近衛騎士にまた命令した。
「泣き止んだら今回の事件の供述調書が取れるだろう。興奮が収まったら連れて来てくれ」
「殿下、皆、夢から醒めた様ですね」
アランがフェリクスに声を掛けた。
「アラン、ジョエル、アルベルトのところに行くぞ。こんなに皆が変わったのだ。アルベルトの容態も変わったかもしれない」
そう言ってもうフェリクスは歩き始めたので慌ててアランとジョエルが続いた。
「アルベルト殿下は今どこに」
アランがフェリクスに『待ってください』と声をかけて、入り口を護衛している近衛騎士に聞いた。
「ベッドが保健室にしかないので、デングラー公爵令嬢から離れたところに衝立で区切ってお休みです」
「医者はきたのか」
答えを聞いて続けて聞いた。
「いえ、まだです。今は学園常駐の看護師が診ています」
「殿下、行き先も分からずに向かわないで下さいよ」
とジョエルがフェリクスに文句を言った。
そう言われてフェリクスは苦笑いしながら先程も向かった保健室に向かった。後ろは指示が終わったエリックが慌てて追いかけて来た。
「殿下、勝手に移動しないで下さい。きちんと護衛を引き連れて移動してください」
とエリックがフェリクスに文句を言うと
「そこらじゅうに近衛がいるし、『呪』には護衛は役に立たないな」
とフェリクスが言い返した。
「どんな慮外者がいるかわかりません」
強い言い方でアランに叱られて、思わず歩くのが早くなってしまったフェリクスは保健室の扉の前で立ち止まり『アルベルトは?』と扉の前に立つ近衛騎士に聞いた。
「殿下、アルベルト殿下のベッドはこちらの扉からお入りください」
そう言って保健室前を守る近衛騎士が答えた。からりと扉を近衛騎士が開けると思いもかけない光景が目に飛び込んで来た。
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