悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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 ボートンの後ろ姿を三人無言で見送った。

「証拠か。確かにしっかりした物証はないな。御伽噺の様な『呪』など表に出しても鼻で笑われるだけだ」

 フェリクスがぽつりと言うとアランは違う様で

「殿下、あの者達に好き勝手にされて、腹が立ちませんか?他国のものに入り込まれて、好き勝手にされて。私はアルベルト殿下だけでも助かって欲しかったです」

 と口調を強めて言った。そしてボートンがアランに渡した紙をフェリクスに渡した。

「ーーー死亡診断書かーーーー」

「そうです。死因は幻覚剤の多量摂取になっています」

「安楽死させた事は霧の中か」

 フェリクスが辛そうに言った。そんなフェリクスをそばで見ていたジョエルがアランに詰め寄った。

「アラン、お前は言い過ぎだ。殿下がどれだけ今まで我慢されていたか知ってるだろう。やっと解決に向けて動いても良いと国王陛下の許可がおりたんだ。まさか同時に全てのことが動くなどと神でないとわからない」

 ジョエルがアランを睨むのを見て、フェリクスはジョエルの肩に手を置き言った。

「いい、アランの言う事はもっともだ。デングラー公爵の犬の存在は調べてあったが、ボートンが二重諜報である事まで調べ切れてなかった私が甘かったのだ」

 それを聞いたアランは、ハッと顔色を変え、フェリクスの前に片膝をついた。

「申し訳ありません。私などより、殿下の方が悔しくて思っておいでなのにーーー」

 そう言って頭を垂れるアランにフェリクスは近づき、二の腕を取り立ち上がらせた。

「悔しいのはみんな一緒だ。ジョエル、アルベルトが亡くなった事とボートンの事を宰相に報告してきてくれ。これは伝令では伝えることができない。ボートンの言う通りなら、王妃ももう死んでいる頃だ。第一側妃も亡くなり、王宮は大騒ぎだと思うが、学園での裁きをきちんと終わらせて私達も王宮に戻る」

 ジョエルに向かって、フェリクスがそう言った。

「承りました。アラン、後は頼んだぞ」

 アランの肩を叩いてジョエルは立ち去っていった。フェリクスはずっと黙って見ていたエリックに

「最後の男爵令嬢の尋問を行う」

 と言った。エリックは黙って頭を下げて、保健室の扉を開けて、外にいる近衛を呼んだ。


 エリックに呼ばれた近衛が入室してきて報告をした。

「反省室のマリア・ヘニッヒはまだ騒いでおります」


「すごい体力だな。あれからかなり時間が経ったのに」

 アランが呆れた様に言う。フェリクス、アラン、エリックとで反省室まで行くと外まで『私はヒロインなのよ!解放しなさいよ!私は王妃になるの!あんた達なんて不敬罪で処刑よ!』と叫んでいる声が聞こえた。

 エリックが扉を開けて、フェリクス、アランの順に入って行くと、マリアが腕を縛られたまま立ち上がって、フェリクスに向かって突進してきた。

「フェリクス!ああ!隠しキャラ!スチルで見るより素敵!ねえ!はやーーーー」

 と言いかけた瞬間、近衛騎士二人に拘束された。

「お前!殿下を呼び捨てにするなどと!」

 マリアはエリックに怒鳴られたが全く気にしないで、取り押さえられている近衛騎士の腕に縛られた身体で、体当たりをして叫んだ。

「フェリクス!私を見て愛しい気持ちが湧いてくるでしょう!」

 と叫んだ。アランはうわぁと言う顔をして言った。

「隠しキャラとは本当のことだったのか……」

 フェリクスはものすごく嫌そうな顔をして一喝した。

「無礼者!」

 その厳しい言い方に流石のマリアもビクッとして後退った。

「ーーーーなんで?なんで?一度会えば一目惚れしてくれるんじゃないの?」

「ダニエルに聞いた。夢のような話をしていたようだな。実際は薬物を使って薬漬けにして誑し込んだだけじゃないか。恋愛でもなんでもない。実際アルベルトもエトムントもヨーゼフも重度の薬物中毒だ」

 マリアは何を言われたかわからないようで、目を大きく見開いた。

「う、嘘、嘘よ!私の魅力でしょう!」

「だが、ダニエルが幻覚剤使用を認めた」

「嘘よーーーーーー」

 虚しい叫びが室内に響いた。
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