悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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「失礼します」

 扉の外から近衛騎士の声が掛かった。エリックが扉まで行き、細めに開けて答えた。

「どうした」

「これをフェリクス殿下にとボートン医官総長が託けていかれました」

 白い封筒を渡して来た。

「ボートン医官総長はどうした」

「これを渡されて王宮に戻るために、馬車に乗られました」

 近衛騎士が答えた。エリックはその白い封筒をフェリクスに渡し、扉を閉めた。フェリクスは今更なんだと言うように、無造作に封筒を開けた。中には小さなメモが一枚入っていた。それに目を通した途端、フェリクスの顔色が変わり、自分の上着の隠しポケットにしまった。

「アラン、これで尋問は終わりだ。目撃者の証言も揃った。ヘニッヒ男爵令嬢マリアを違法薬物使用と王族殺人の罪で王宮の地下牢に収監しろ。エトムントとヨーゼフは治療のために速やかに王宮の医療班に預けてくれ。罪の裁きは治療が済んでからだ。ダニエルは学園長から身柄預けてもらっているから、このまま身柄を拘束して、王宮に連れて行く」

「え!まだわからない事があるのですが」

 アランが抗弁するとフェリクスはいいからと言うように手を振った。

「それは後からでも調べることはできよう。生徒達も『呪』が解けたからには、影響はないだろうから、もう拘束はできない。証言をしてくれたもの以外にも帰宅させてくれ」

「殿下、ダニエルにデングラー公爵令嬢の行方を伝えますか?」

 フェリクスはそう聞いて来るアランを見て言った。

「ダニエルは公爵家の犬だ。本人はクリスティーヌの味方だと言っているが、どのように漏らされるかもわからない。生まれ変わろうとするクリスティーヌにいらない足枷を付けたくない」

「そうすると、フェス侯爵令嬢にも?」

「彼女の心情を聞いた後だと、心苦しいが今は無理だ」

「わかりました。そう言うことでしたら、我ら側近と殿下の秘密ということですね。我らは漏らしたりしませんからご安心下さい」

 アランが請け合うとフェリクスが重ねて言った。

「後は叔母上が知っている」

「隣国の王妃陛下ですか。あの方は頼りになる方ですね」

「王女が一人で敵国に乗り込んで、敵視するものも多い中、己の才覚で尊敬を勝ち得え、地位を得た人だからな」

「隣国の国王陛下の王妃陛下への溺愛は有名ですから。側妃だの妾だのの話を持って来る貴族は酷い目にあわされているそうですね」

 アランがそう言うと、フェリクスはため息をついた。

「隣国の王家はそれほど王権が強いと言うことだ。父上が即位した時に第一側妃を断ることができたらーーアルベルトもこんな事にならなかったのにーーー」

 そう言って、先程己の隠しポケットに入れたメモを二人に見せた。メモを見た二人は驚きに目を見張った。

「アルベルトを王宮に運ぶ。医師に見せて死亡を確認させたら埋葬する前に運び出す。秘密を守れるものを選び出してくれ。エリック」

 フェリクスがエリックに向かって言った。『わかりました』とエリックが答えた。

「アルベルトと一緒に私達も王宮に戻って、父上に報告する」

 エリックが一足先に外に出て、フェリクスの指令を副団長のマークスに伝えるように扉前に立つ護衛に伝えた。
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