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「それにしても、ボートンはなぜアルベルト殿下を仮死状態にしたのでしょうか」
アランが眩しい西日を避けて、座る場所をフェリクスの側に移った。
「お前、あいつらにまた男色とか言われるから、近づくな」
「女っ気ないのは、お互い様です」
「うるさい。そう言えば、この前、私の執務室にジーベル侯爵が来た」
「父が?何をしに?」
アランは何を言われるだろうと、フェリクスの横顔を見つめた。
「お前が私の相手が決まるまで、婚約者を持たないとごねるので、私に見合いをするように説得してくれとさ」
まずいことになったと言うように、顔を背けて窓の外を見るアラン。
「お前、私を引き合いにして逃げていたんだな」
フェリクスの低くなった声に、そそくさとまた対面の椅子に戻るアラン。
「殿下、そんなことより先程の話どう思われますか」
フェリクスはアランをじろりと、睨んで言った。
「第一側妃はアルベルトを王太子にするために、色々と王宮内で貴族に画策していた。母親が勝手にしたことで関係ないは通用しない。アルベルトは無罪放免と言うわけには行かない。その上学園で騒ぎを起こした。父上がどう処分するかわからないが、生きているより、死んだことにして新しく歩んだ方がいいと思ったのだろう」
「ですから!ボートンはなぜアルベルト殿下にそんなに気持ちを寄せたかです。ボートンが母国から受けた使命は、王妃の処分でしょう。アイリーンが王妃を毒殺したら、後のことまで関係ないのでは?」
アランが強く言うと、フェリクスはこいつ誤魔化す気かと言うように見た。
「ボートンはデングラー公爵家の犬の元締めでもある。デングラー公爵としては反王家派ではあるけれど、王家に歯向かった証拠の第一側妃とアルベルトを生かしておきたくないのだろう。アルベルトが薬物中毒から抜け出して、余計な証言もしてほしく無かったーーーと言ったところか。まあ、仮死にすれば、甘い私が生かして逃すとも思ったのだろう」
そう言って、背もたれに背を預け、眩しい西日を避けるために、手をかざした。
それを見たアランは何も言うことができずに、豪華な馬車の中は沈黙が支配した。その時、ごとんと馬車が止まり、エリックが声をかけてきた。
「殿下、着きました。車寄せまで、ジョエルと陛下の侍従が来ています」
馬車の扉を開け、アランとフェリクスは外に飛び降りた。
「フェリクス殿下、国王陛下がお呼びです」
国王の侍従が近寄ってきて、そう言った。
「わかった。すぐ向かう」
侍従に返事をして、ジョエルに向かって言った。
「ジョエル、アランに全て指示してある。後は頼んだ。父上との話が済んだら、王妃の離宮に向かう。それとーーーー」
フェリクスはマークスを手招きして耳打ちした。
「了解いたしました」
そう言ってマークスは乗ってきた馬の手綱を馬廻に渡し、部下数名を連れて立ち去った。それを見送って、『陛下は私室の居間においでです』と言う侍従に付いて王宮の中を進んでいった。
「フェリクス殿下のおなりです」
侍従が扉前の衛兵にそう告げると、中から他の侍従が扉を開けた。中には天鵞絨張りのソファに深く腰掛け、足を組んだ国王がいた。
「人払をせよ」
国王の一声で侍従と近衛騎士が退室していく。その後ろ姿をフェリクスは見送った。
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