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フェリクスは扉の後ろにいるだろう侍従に『下がる』と一言声をかけて、扉を開けさせて近くに控えていたエリックと自分の専用護衛の者達に声をかけた。
「国王陛下の許可がおりた。これから王妃陛下の離宮に立ち入る」
エリックその命令を聞いて、膝をついていたエリックは顔を上げて、フェリクスに尋ねた。
「アランとジョエルには、どのように伝えましょう」
「あの二人には学園から連れて帰ったものどもの対応を任せている。オスカー・ホフマン子爵を連れて行く。呼んで来てくれ。宰相の執務室にいるだろう」
とフェリクスがエリックに伝えていると、前から歩いて来て、膝をつくものがいた。
「お呼びと伺いまして」
「オスカー、まだ呼んでない」
「呼ばれる事はわかっていましたので、殿下方が王宮にお戻りの一報を聞いて、フェリクス殿下の元に参じました」
そう廊下でやりとりをしていると、国王の侍従長が慌てた様子でフェリクスに一礼をしてから、国王の居室に入っていった。
「あれは?」
フェリクスが尋ねると、オスカーは立ち上がり
「王妃陛下が亡くなったのですよ」
と言った。
「父上はそばについてなかったのか。そこまで冷えた仲だったのか……」
とつぶやくと、オスカーはおやおやと言うようにフェリクスを見た。フェリクスは歩き始め、オスカーはその少し後ろを歩きながら説明した。
「殿下、何を今更。王妃陛下はご婚姻後、初夜の床で国王陛下を拒否なされ、その後ずっと公務を拒否して、離宮にお篭りなされて以来、一度も国王陛下と対面されていませんでした。そんな風に拒否されて、国王陛下だって情は湧きますまい」
「仮死という事はないか」
フェリクスが話題を変えて、オスカーに尋ねると
「アイリーン・ボートンが手渡した薬は間違いなく毒薬でした」
と淡々とオスカーが答えた。
「なぜ、知っている」
フェリクスが振り返ってオスカーを見た。
「アイリーンが姿を晦ます前に王妃がした『呪』の証拠を差し出しに来て、ヒルシュフェルト国王の意思で王妃に毒薬を渡したと言ったのです。王妃は仮死になって母国に戻るつもりだったが、ヒルシュフェルト国は帰って来てほしくないそうですよ」
「父親に拒否されたのか。切ないな」
フェリクスがこぼすと、オスカーが肩をすくめた。
「母国での行いが悪すぎたのですよ。元々国王陛下の婚約者だった側妃腹の姉王女に何をしたか知ってますか?」
「ーーー脅して引き下がらせたと聞いているがーーーー」
「脅す?そんなものではありません。アイリーンから聞いたのですが、誘い出し破落戸に襲わせたのですよ。姉王女の護衛が危機一発で破落戸を斬り殺して、大丈夫だったのですが、それがトラウマになってしまって、婚約者の座を渡したのです」
フェリクスは息を呑む。
「すごいな。女のすることとは思えない。姉王女は今はどうしてるのだ」
「救ってくれた護衛は、近衛騎士で爵位持ちだったので、降嫁したそうです」
オスカーが答えた。
「それはよかった。が、その姉王女が嫁いで来てたら、平穏な夫婦になれたのか……いや第一側妃がいたか」
フェリクスがため息を漏らした。
「そう言えば、第一側妃の死因はなんだ?」
フェリクスが尋ねると
「自殺です」
オスカーの答えを聞いて、フェリクスは思わず足を止めた。
「なぜ」
「わかりません。具合が悪いと寝室に籠っていられて、心配した侍女が声をかけたら、血塗れでした。御守り刀で喉をついたようです」
「ーーーーそれは本当に『呪』のせいなのかーーー」
「わかりませんが、第一側妃は自殺するような人間でもなく、直前まで第二王子を王太子にするべく、貴族の取り込みをしていたので自殺はあり得ないでしょう」
「そうかーーー」
「殿下、離宮に近づいたので、離宮の護衛をしている近衛第二に話を通して来ます」
エリックがそう声を掛けて、離宮の門に向かって走って行った。
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