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「父上はどういう、おつもりだったのだろう?」
フェリクスがため息と共に言葉を吐き出した。
「どういうとは?」
オスカーが問い返す。
「政略結婚とはお互いの歩み寄りだと言ってただろう?王妃が父上を拒否した理由は、第一側妃の虚言だとすぐ分かっただろうに、なぜ王妃の元に釈明に行かなかったのだ?」
オスカーはそれを聞いて、眉間を人差し指で揉んだ。
「父上に聞かないとわからないかーーーー」
フェリクスがそう言葉を続けると、オスカーは重ねる様に言った。
「王妃の逆上があまりにひどかったので、ヒルシュフェルトに人をやって、嫁いで来る前の母国での王妃の人柄を調べたのです。婚姻直前に花嫁も代わっていますし、きな臭さを宰相の父も感じましてね。そこで、本来なら、輿入れしてくるべきだった異母姉に王妃が何をしたかが知れたのです。あまりの所業に、陛下は嫌悪感を抱いてしまったのですよ。そんな時に、隣国に側妃として行ったはずの王妹殿下が、王太子妃になられる事になった。隣国との同盟も結ばれて、隣国との関係も劇的に改善できた。それで、ヒルシュフェルト国との関係は、重要視することも無くなりました」
オスカーが一つ一つ噛み締める様に、フェリクスに教えた。
「そうか、それで、父上は王妃を離宮に押し込めたままにしたのかーーー」
「そういうことだと思います」
「それでは、王妃の恋心は一生報われることは、なかったということだな」
「恋は相手がありますから、報われるとは限りません。引き時も大切です。それを見誤ったのが王妃かと思いますよ」
フェリクスがチラリとオスカーを見て言った。
「まだ、婚約者もいないオスカーに、恋について説法を説かれるとはな」
「婚約者がいなくとも、恋ぐらいしますよ」
なんでもない様にオスカーに言われて、フェリクスは本当か?と内心で思ったが、説教されたくないので、黙って聞いていた。オスカーはフェリクスが、黙り込んだので、話を再開した。
「それから、王妃は殿下を引き離された、我が子として見ていました。流石に、殿下も大きくなられると、離宮の庭に迷い込むこともなく、接点は練兵場を遠眼鏡でのぞくのみ。そんな中、第一側妃が王子を出産なされます。相当悔しかったらしく、ここには、罵倒の言葉が散々書き記してあります」
そう言って、積み重ねられた書物の表紙を指で叩いた。
「いつも迷い込んでいたら、流石に覚えているよ」
フェリクスが眉をひそめて言った。
「そして、第一側妃はアルベルト殿下を王太子にさせたくて、暗躍を始めます」
そこまで聞いて、フェリクスはオスカーに問うた。
「思ったのだが、アルベルトを叔父上の子だと、発表するわけにはいかなかったのか?」
それを聞いたオスカーは、何を言っているんだという様に、自分の顔の前で指を振って見せた。
「国王陛下の第一側妃が、王弟殿下の子を産んだなどと言う、大スキャンダルをどうして、発表できましょうか。それでは、陛下は寝取られたバカな男に成り下がります」
「しかし、不義ではないか!処断して然るべきーーー」
「不治の病で先が見えていた王弟殿下をですから?」
「ーーーえーーー」
「不義は一人でできません。子供も一人で、できません。第一側妃を処断するには、王弟殿下も罰する事になり、それで、陛下は二の足を踏まれたのです」
「ああ、父上は弟妹に思い入れが強いからーーーーー」
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