悪役令嬢が死んだ後

ぐう

文字の大きさ
60 / 65

53





「そうですね。先代の国王陛下は側妃、愛妾がわんさかいて、寵愛を求めて争いが絶えませんでしたからね。そのため王妃所生の国王陛下とご弟妹は身を寄せ合って、毒殺や暗殺の危険から逃げていらっしゃった」

「後宮での争いだから、後宮を治める先代王妃が仲裁に入ればよかったのでは?」

 オスカーはそんなことを言うフェリクスを鼻で笑った。

「おい、オスカー、酷くないか、一応主君なんだが……」

「相変わらず、女心に疎いですね。まあ、単なる寵愛ではなく、寵愛を受けたものが権力を持つと言うことが問題です。先代の国王陛下は先代の王妃陛下にしかお子を授けなかった。それだけは評価できますね。それ以外では、反王家派をのさばらせた罪が重い」

 オスカーがきっぱり言うと、その通りなので、祖父母とはいえ庇えないなとフェリクスは思った。そんなことを考えていたら、オスカーが話題を変えた。


「それから、『呪』の件ですが、ここで死んでいた侍女は、離宮付きになってから、行方不明になった者でした」

「アイリーンの姉達ではないのだな」

「はい、違います。侍女達の死因は失血死でした」

「『呪』には血が必要なんだな?」

「その様です。やり方を記した書はないので、推察ですが。『呪』は望みが叶った時に、呪った術者にかえる。術者も死にたくないから、死がかかわる事には余程のことがない限りおこなわない。なのに王妃は自分の欲望で、人の死を願った。自分は死なないからですね」

「それもなかなかすごい」

「他人事の様な事を言ってますが、この中に書かれているには、アルベルト殿下が王太子に即位するという第一側妃が立てた噂を信じて、第一側妃とアルベルト殿下を殺す事にしたとありますよ。術者もちょうど二人いるからと。全て愛しい第一王子のためにと」

 オスカーが積み上げた書物の一番上の本のページをぱらぱらとめくった。

「ここですね」

 顔色の変わったフェリクスはその本をじっと見た。

「読めない。でも私を実子と信じ続けていたのか」

「はい、その様です。王妃所生の王子を王太子に立てず、寵愛している第一側妃所生の王子を王太子にするとはと、かなり激昂されています」

「間違いだらけの情報だな」

 フェリクスが呻く。

「それでも、王妃にとってそれが真実です」

「それで、『呪』の的が第一側妃とアルベルトになったわけか」

「そうです」

 フェリクスは訳の分からない罪悪感で一杯になって、言葉が出なかった。それを見たオスカーが言った。

「殿下、殿下のせいではありません。この状況を放置して、一斉に片付けようとした国王陛下のせいです」

「ーーーおいーーそんな不敬なことを言ってもいいのか?ーーー」

「誰も聞いていません。国王陛下から聞いていると思いますが、この騒動の始末をつけたら立太子です。そしたらすぐ譲位されるおつもりです。あなたの治世に備えて膿を出し切ろうとされたわけです」

 立て続けに、捲し立てられて、フェリクスは心算はあったが、実際それが近くに来る事に身がすくむ思いだった。
感想 471

あなたにおすすめの小説

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?