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プロローグ
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僕の中を蠢く蟲。
手を、足を、首を動き回る感覚。
僕の心に空いた穴は塞がらない。
いつしか僕の中に入ってきた。
日に日に大きくなるソレは、いつか僕自身をも蝕むのだろう。
もしそうだとしても、僕は諦めない。
僕にとってそれは希望の光なのだから。
これは始まりの物語。
「むかしむかしあるところに王子様がいました。
彼は嫌われ者で、いつも一人ぼっちでした。
べつにいじめっ子ってわけではありません。
べつにわがままっていうわけでもありません。
それでも世界は彼を嫌いました。
しかしある日、彼は一人のお姫様と出会います。
二人は魅かれ合い、ついに永遠の愛の契約を結びました。ですが、世界は彼らを許しませんでした。
そして彼らは引き離されてしまいます。
しかし王子さまは諦めませんでした。
契約だけが彼の頼りでした。
そして彼はお姫様を探す旅に出ます。
それは長い長い旅です。それでも王子さまは諦めませんでした。
探し続け、探し続け、そして、探し続けるのです。
おしまい」
暗い夜のある病室に声が響く。
「何そのおはなしー」
「へんなのー」
母親が語り終わるとともに、先ほどまで真剣に話に耳を傾けていた二人の少年と少女の声が響く。
いや、少年少女というほどまだ大きくないのかもしれない。
二人は母親を間に、三人で母親の病室のベッドに潜り込み、スタンドの小さな明かり一つ、母親の語る世界に入り込んでいた。
「しー、あんまり大きな声をださないの」
母親はそう言いながらもどこか嬉しそうにしている。
そして子どもたちもそれに気づいているのか声を抑えながらも、いたずらっぽく笑うのであった。
「このお話はね、お母さんが昔よく聞いていたお話なの」
「もうそのはなしはいいよー」
「つぎのはなしは?」
「もう次なの?」
西暦二〇二〇年、都内、総合病院の一室。
三人の他愛ない会話は、消灯時間を疾うに過ぎたこの時間でも絶えることはなかった。
手を、足を、首を動き回る感覚。
僕の心に空いた穴は塞がらない。
いつしか僕の中に入ってきた。
日に日に大きくなるソレは、いつか僕自身をも蝕むのだろう。
もしそうだとしても、僕は諦めない。
僕にとってそれは希望の光なのだから。
これは始まりの物語。
「むかしむかしあるところに王子様がいました。
彼は嫌われ者で、いつも一人ぼっちでした。
べつにいじめっ子ってわけではありません。
べつにわがままっていうわけでもありません。
それでも世界は彼を嫌いました。
しかしある日、彼は一人のお姫様と出会います。
二人は魅かれ合い、ついに永遠の愛の契約を結びました。ですが、世界は彼らを許しませんでした。
そして彼らは引き離されてしまいます。
しかし王子さまは諦めませんでした。
契約だけが彼の頼りでした。
そして彼はお姫様を探す旅に出ます。
それは長い長い旅です。それでも王子さまは諦めませんでした。
探し続け、探し続け、そして、探し続けるのです。
おしまい」
暗い夜のある病室に声が響く。
「何そのおはなしー」
「へんなのー」
母親が語り終わるとともに、先ほどまで真剣に話に耳を傾けていた二人の少年と少女の声が響く。
いや、少年少女というほどまだ大きくないのかもしれない。
二人は母親を間に、三人で母親の病室のベッドに潜り込み、スタンドの小さな明かり一つ、母親の語る世界に入り込んでいた。
「しー、あんまり大きな声をださないの」
母親はそう言いながらもどこか嬉しそうにしている。
そして子どもたちもそれに気づいているのか声を抑えながらも、いたずらっぽく笑うのであった。
「このお話はね、お母さんが昔よく聞いていたお話なの」
「もうそのはなしはいいよー」
「つぎのはなしは?」
「もう次なの?」
西暦二〇二〇年、都内、総合病院の一室。
三人の他愛ない会話は、消灯時間を疾うに過ぎたこの時間でも絶えることはなかった。
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