甘い言葉を囁いて

聖 りんご

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ろく

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レン兄さまの婚約破棄が成立して一ヶ月。

サラは一週間前までは毎日屋敷に来たけど門前払い!
浮気の代償は多額の慰謝料と不名誉な噂話でこのままいくと裕福な平民でさえお断りの事故物件だってミンネが言っていたわ。

レン兄さまは少し落ち込んでいたけれどヘンリー様がほぼ毎日様子を見にきてくれていたので思ったより大丈夫みたい。

最近は三人でお茶をする事も多かったから私もヘンリー様とは少し仲良くなったの。
今日もこれからヘンリー様が来て三人で楽器の演奏をする予定……だったのだけれど。

「ミシュ、すまない。父様から用事を頼まれてしまった。」

「私なら平気です。ヘンリー様とも打ち解けてきましたもの。」

「そうだね…だけど婚約もしていない男女が二人きりになるのは良くない事なんだ。密室で無いことを確認して、必ず誰か側に控えさせるんだよ。」

「分かりました。」

レン兄さまは凄く心配しながら出かけて行ったけれど私だっておもてなしはできるわ。
今日はヘンリー様を完璧におもてなししてレン兄さまに一人前って認めてもらわなきゃ。

私はベルを鳴らし専属のメイドを呼び出すとヘンリー様を通すガゼボに向う。
レン兄さまがいないのでメイドが車椅子を引いてくれるけれど、彼女はゆっくり歩くから少しだけもどかしい…。
専属のメイドは一人しかいないから交代もいなし我慢するしかないのよね。

ガゼボに着くとレン兄さま専属のメイドが三人で準備をしていた。

「お嬢様、ロード様がお見えになられましたらお呼びしますのでお部屋でお待ち下さい。」

「気にしないで。寒くも無いし約束の時間までは三十分程よ。」

(チッ)

ん?今一人舌打ちしたわね。
何かするつもりだったのかしら…。

屋敷の使用人達は両親から冷遇されている私に基本的に冷たい。
会話は必要最低限で世話も色々と雑だったりする。
専属のこの子はそんな事無いけれど一人では限界があるから……。
で、家族付きのメイド達は隙あらば陰湿な事をしてくる。

お母様やレン兄さまの誕生日の日には私のものじゃないプレゼントの山を態々私の目の前を通りどんな見た目か話しながら何往復もするとかあげたらキリが無い。

コレは入念なチェックが必要そうね。
私がメイド達に確認しようとするとタイミング悪くヘンリー様到着の知らせが来た。
本当にタイミングが悪いわ…ヘンリー様はレン兄さまのお友達だしあまり変な事はしないと信じるしかないわ。

「ヘンリー様の元へ行きます。」
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