甘い言葉を囁いて

聖 りんご

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じゅう

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ヘンリー様があの時の男の子…。
確かに顔も触ってないし声だけの記憶だけど気が付かないなんて…………いや、気が付きませんわ。声も違いますし!

「僕はあの時ミシュミラン嬢に一目惚れしてね。必死に君から情報を得て…家に帰ってすぐに両親に話して君のことを調べてもらったんだ。」

「情報を…。」

それだけ聞くとちょっと…一目惚れって言葉より衝撃が…確かに何処に住んでるのかとか色々聞かれたかもしれません…。

「ただその時に調べられた事は少なくて君がブルノット男爵家の子って事と学園に兄がいるって事くらいで次の日から学園中を探してレンに声をかけたんだ。

レンは僕の顔を知っていたからすぐに市場での事を気づいてくれて君という下心からだったけど親友になったんだ。

レンから聞いたブルノット男爵家の内情は酷くてね。
僕が侯爵家の人間と分かれば利用しようとするからと名前をふせて君をブルノット男爵家から離す計画を立てたんだ。
勝手なことをしてすまない。」

「そうだったのですね。いえ、ヘンリー様とレン兄さまが私の為にして下さったのは分かっていますので。
ただ、行儀見習いとしていつまでもこちらでお世話になる訳にはいきません。」

「それは心配ないよ。君は今、僕の婚約者だから。」

「え?」

にこやかにサラりと言われたけれど初耳情報です!
いつそんな話に…ああ、なるほど。

「ヘンリー様と婚約という事で私を連れ出して下さったのですね。そんな事までしてもらってしまって……。」

「違うよ。一目惚れだって言ったじゃないか。

僕、ヘンリー・ロードウィンはミシュミラン・ブルノット嬢を愛しています。僕と結婚しよう。」

膝まづいて真っ直ぐな言葉を送ってくれたヘンリー様はとっても素敵で恋することを諦めていた私でもドキドキしてしまいました。

だけど…よく言われるセリフって“結婚して下さい”ですよね。選択肢…。

「もちろん逃がしてあげるつもりは無いよ。
大丈夫、レンにもきちんと許可はもらっているから安心して。
今はまだ恋愛対象としてみて貰えないかもしれないけど今日からは隠す気は無いから。」

「え…えっと…お手柔らかに…お願いします…。」

「手始めに僕もミシュって呼びたいのだけれど良いかな。」

「え?!えっと…はい。」

「僕の事はハリーでいいよ。」

「えっと…そんな急には…。」

「さあ!呼んでみて!」

「は…ハリー…様。」

私が呼んだ瞬間に薔薇の香りと暖かさに包まれて急に上がった体温のせいか私の意識は刈り取られました。
意識の遠くで名前を呼ばれたけど…無理!
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