甘い言葉を囁いて

聖 りんご

文字の大きさ
上 下
21 / 27

にじゅういち

しおりを挟む
紫色とはどんな色の事なのでしょう。
私にはまだ分かりません。

「ああ、ミシュラン嬢には紫が分からないか。僕の眼とお揃いだよ。」

「フラット様の瞳と?」

私は部屋の中にいる全員の顔を見ました。
お祖母様とお母様は髪も瞳も同じで、レン兄様は瞳の色だけ二人と一緒。

ハリー様とフラット様はそれぞれ違う色…じゃあ私は…?
自分の髪の毛を掴んで確かめるとお母様達と同じ色で…瞳がフラット様と一緒で…その瞳を隠したくて…。

「まさか…ミシュは…。俺と半分しか血が繋がっていないのですか…?」

「そうです。あの子の父親はレンとは違う。」

「叔父上だよね?ミシュラン嬢の父親。」

「…仰る通りです。」

私のお父様は…お父様じゃない…?
上手く思考がまとまらない。どういうこと?

「ここまで知られているのです。私の口からお話しましょう。

ミシュラン、貴女の父親はエルメ公爵家のレイヴン様です。その証拠はその紫色の瞳。

紫色の瞳はね、エルメ公爵家の者しか持たないの。

ここから先は家族皆で話しましょう。」

「おや、僕は蚊帳の外になってしまうのかな。」

「……レイヴン様が許可されるのならどうぞ。」

お母様はそのまま部屋を出ていきました。
お母様…初めてお顔を確認できた。
レン兄様に似てるのに線が細くて綺麗な人。
私とは…一度も視線が合わなかった。

「ミシュラン。私の事は恨んでも構いません。けれど、ミランダは……あの子の事は恨まないで。」

お祖母様はそう言って部屋を出ていきました。
恨む…悲しくはありましたけれど私は誰も憎くは感じてないし恨んでもいない。
ただ…愛しては欲しかったです。

そんな事を思っていたらハリー様が後ろからぎゅっと抱きしめてくれました。

「さて、僕は一度家に戻らなくてはいけないから先に失礼するよ。また後で。」

そういうとフラット様は部屋を出ていきました。
やっぱり話に参加する気満々のようですね。

「俺達もブルノット家に戻ろう。」

「ああ、けれどその前に…ミシュ、眼が開いた君をよく僕に見せてくれないか。完璧な僕の天使の姿を。」

「…兄の前でよくそんな事を……。ミシュ、こんな婚約者嫌だったらまだ間に合うよ。」

「レン兄様、ハリー様は凄く恥ずかしいけれど嫌にはなりません。」

「その言い方だと…いやミシュが良いなら…。今度護身術を教えるよ。変な事されそうになったらきちんと身を守るんだよ。」

「変な事…。」
 
「さ、さあ僕達もそろそろ移動しよう。」

ハリー様何か焦ってどうしたのでしょう。

しおりを挟む

処理中です...