女子2人で鉄道旅をしています

湯郷五月

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第20章 HIGH RAIL星空探訪 at 小海線

HIGH RAIL星空探訪⑤

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 列車は遅れを保ったまま野辺山駅に到着した。JRで最も標高の高いこの駅は、つい先日私が訪れたばかりの場所である。

 ここで列車はしばしの停車時間を迎える。というのも、夜間に走る『HIGH RAIL星空』号の最大の見所が野辺山駅での停車時間なのだ。

 野辺山高原は非常に空気が澄んでいる。加えて、標高も高く、言い換えればJRで最も天空に近い駅なのだ。この野辺山で行う天体観測こそが、当列車最大のハイライトなのである。

 駅に降り立った私たちを最初に出迎えたのは冷たい空気だった。

 もうすっかり秋も深まった時期。標高の高さも相まって、涼しいを取り越して寒い。

 割と結構寒いのだ。やはり羽織るものを持ってきて正解だった。

 改札口は既に営業時間を終えて閉じられている。要するに無人状態。私たちは係員のいない駅舎を通り抜けて、駅前広場に出た。

 周囲に光は全く無い。完全に宵闇の世界である。以前訪れた時との落差に驚くばかりだ。

 さて、肝心なのは街灯りでは無い。むしろ、人口の光が少ないのは好都合である。空を見上げる。そこに広がっていたのは……。

 どんよりとかかる灰色の雲であった。

「ああ、ダメだったかぁ……」

 小淵沢の時点で上空には雲が立ちこめていた。そもそも今日の関東甲信越の天気自体、芳しい予想ではなかったのだ。

 だから、覚悟は決めていた。しかし、それでも一縷の望みにはかけていたのである。それがまさに今この瞬間、打ち砕かれた。

「大井川の時みたいに上手くはいかなかったね」

「だな」

 あの時見上げた星空を、もう一度追い求めていた。結局それは叶わぬ夢と化してしまったが。

「大井川って、お2人でキャンプに行った時よね?」

「そう。あの時はすごかったんだよ。満天の星空って感じでさ。一面にぶわーって星が輝いてて。あの景色、ひばりにも見せてあげたかったんだけどな」

 私の一番の落胆はそれなのだ。あの時はひばりがいなかった。まだ出会ってすらいなかった。彼女にも、同じものを見せてあげたかったのだ。

「そんな……。良いのよ、みずほさん。みなさんと素敵な列車旅ができただけでも充分満足だわ」

 彼女は優しいからそう言うけれど。でも、がっかりしてないと言ったら嘘になると思うんだ。

 それが無性に悔しい。天候はどうしようもないけれど、やっぱり悔しいのだ。

「じゃあ、リベンジだな」

 さくらに肩を叩かれた。

「リベンジ?」

「そう。別にここじゃなくてもさ、また行こうぜ。星空が綺麗に見える場所」

「そうよ! 星空が見られるまで、何度だって行きましょう! 私たちで!」

 何度だって、か……。

「……そうだね」

 それって、このメンバーでこれからも色んな所に出かけるってことだ。そんな未来を想像するだけで、不思議とワクワクが止まらない。落胆する気持ちはみるみるうちに小さくなっていった。

「じゃあ、約束だね」

 また1つ、私たちの約束が増えた。こうして未来に希望が繋がる限り、私たちが歩みを止めることは決して無いのだ。

 私たちは駅舎へと戻った。天井をフラッシュ撮影すると星座が浮かぶと聞いていたので、各々のカメラで一斉に撮ってみた。

 ただ眺めるだけでは何の変哲も無い天井が、フラッシュを焚くことで本当に星座が浮かび上がるのだ。星座のお勉強をした後だから、より感慨が増した。思わず声を出してしまうほどに。

 そして、私たちはホームへと戻ってくる。『HIGH RAIL』はエンジンを唸らせながら鎮座していた。

「そうだ! 記念撮影しようぜ!」

 記念撮影、か。

「良いわね! やりましょう!」

 2人ともノリノリだなぁ。

 私? 私だってもちろん賛成だよ。だって、折角のイベント列車なんだもの。2人の影響で、撮られることに抵抗がなくなってきてるのかもしれないなぁ。

 添乗員さんにスマホを渡して、列車の前に並ぶ。2人に挟まれていると、恥ずかしさも無くなるのだから不思議だ。

「それじゃあ、撮ります! HIGH RAIL!」

 はいチーズ、ではなく、ハイレール、か。粋なかけ声だなと思った。

 私たちは各々のスマホを順番に手渡して、それぞれ違うポーズをとりながら撮影を続けてもらった。撮影に夢中で、私のポケットの中でスマホが鳴っていることにそのときは気付かなかった。

 この着信が私の、そして私たちの運命を大きく変えることになるなんて、このときは微塵も思っていなかったのである。

『日本全国津々浦々。のってたのしい列車をご堪能あれ。 MIZUHO』
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