独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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メイドさんとドレス……わたしらしいと言うか その2

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 着替え、メイクして髪を整える。

 うう。考えてみたらわたし、寝起きで頭バサバサの上、すっぴんの顔のままでみんなと話してたんだ……。それじゃなくてもおばさんでお肌ボロボロなのに……。泣ける。

 で、でも考えようによっちゃ最初にすっぴん見せときゃ、気が楽だよね? なんかこの夢の設定だと戦闘シーン入りそうだし、そうなったら汗でお化粧崩れたり完璧取れたりって事もあるだろうし。一度すっぴん見られときゃ、そんなに慌てる事もないしね。

 とか自分に言い訳してて、虚しくなった。そもそもわたし、メイクそんなに上手じゃないから、たぶん他人から見たら「メイク? あー、そういえば一応してるんだね」程度だろうし、崩れようとはげようとあんまり代わり映えしない気もする。

 それでもメイクで少しはマシになってるって信じたい。

「あの、姫様。よろしければ皆様が下でお待ちです。朝食のご用意もしてありますので……」

 言われてお腹が空いている事に気づいた。夢の中でもお腹空くなんて、食い意地張ってるみたいで嫌だなぁ。

 そんな事思いつつ、笑顔で答える。

「うん、分かった。行こうか」

 棗ちゃんは頷いて食堂へと案内してくれた。わたしは彼女の後を歩きつつ、そういえば普段朝食は野菜ジュースとトースト一枚なんだよなぁ、とか考えたりしていた。

 食堂にはすでにみんな集まっていた。わたしが入るとみんなが一斉にこっちを見る。途端に再び自分の格好に自信がなくなって、不安になる。

 そんなわたしに気が付いた戒夜が声をかけてきた。

「そんな所でボーッと立ってないで、座ったらどうです?」

「あ、うん……」

 ひとつだけ空いてる席がわたしの席なんだろう。戸惑いつつ、その席に座る。

「……にしても、そのドレス……」

 ぎくり。自分でも体が固くなるのが分かる。戒夜がジロジロとわたしを見回す。ううう、胃が痛い。

「動きにくいのではないですか?」

 へ?

 てっきり似合わないとか変とか言われると思ってたわたしは、ちょっと拍子抜けした。

「普通に動く分には大丈夫だよ。走り回ったりするにはちょっと向かないかもだけど……」

 そこまで言って、もしかして走り回る必要があるの? って考えに至った。敵に狙われてるって設定だもん、そういう事もあるのかもしれない。

「動きやすい格好のが良かった? 着替えた方がいい?」

 でもこれを用意してくれたのは棗ちゃんだから、そういう服があるかは棗ちゃんに聞いてみないと分からない。

 オロオロしてると透見が助け船を出してくれた。

「今はまだ大丈夫ですよ。空鬼たちはまだ、ここを見つけていないのですから」

 ふわりと透見が笑い、それに同意するように剛毅が口を開いた。

「そうそう。それにやっぱり女の人はドレスアップしている方が良いしね」

 カラッと笑いながらの剛毅の台詞。さすが乙女ゲーの夢。

「うんうん。でも僕はロングのドレスよりミニスカートの方が好きだな」

 ニコニコしながら今度は園比がケロリと言う。けど、ミニはちょっと、いやかなり無理。足太いもん。

「ね、戒夜はどういうのが好き?」

 無邪気に園比が戒夜に話を振る。戒夜はそれに小さく溜息をつきつつ眼鏡をクイッと上げた。

「別に。本人に似合ってさえいればそれでいい」

 本当に興味がないのか、それとも実は照れてる設定なのか。そっけなく言うと戒夜は朝食に手を付け始めた。

「さあ、私たちもいただきましょう」

 それを合図に透見がにこりと笑ってみんなに朝食を勧める。みんなもそれに頷き、朝食を食べ始めた。

「ところで姫君。空鬼が貴女を見つけてしまう前にこの辺りの地理を知っておいてもらいたいのですが」

 優雅な手つきで朝食を口に運びながら透見が語る。なんか王子様というか貴族というか、そんな品の良さを感じてしまう。

「つまりあれだ。万が一姫さんが一人で逃げなきゃいけなくなった時、どっちに逃げたら安全なのか知っといて欲しいんだよ」

 剛毅はというと、ぽいぽい口の中に放り込むように朝食を食べている。いかにも食欲旺盛な男子って感じ。

「あ、心配しないで。そんな事にならないように僕たちがしっかり姫様のこと守るからね」

 剛毅ほどではないけれど、園比もパクパクと勢いよく美味しそうに朝食を掻き込んでいる。なんていうか、量もそこそこ食べるけど美味しいものが大好きなんだろうな。

 反対に食事に興味がなさそうなのが、戒夜だ。

「しかしまだ敵の強さも数も把握できていない。だから万が一の時には逃げて身を隠しておいて欲しい」

 機械のように食事を口に運び、咀嚼する。なんか栄養補助食品とかサプリメントとかあったらそれで済ませちゃいそうなタイプだ。

 わたしはというと、見たこともない豪華な朝食に目移りしながらあれこれ手をつけてしまったんだけど、普段トースト一枚で済ませちゃうもんだからお腹いっぱいになってきちゃった。けど、手を付けてしまったお皿はちゃんと全部食べないと失礼だよね……。

「それで食事の後、剛毅さんと私とでこの街周辺を案内しようと思うのですが」

 いいですか? と透見に問われわたしは頷いた。特に断る理由もないし。

「あ、でも園比と戒夜は?」

 ふと疑問に思って聞いてみる。すると戒夜がため息をひとつ。

「まだ敵もいないのにゾロゾロ付いてまわっても無意味だろう」

 そう、冷たい一言。まあ確かに。

 こんなおばさんが若い男の子ゾロゾロ引き連れて、街中歩くってのも何事だろうって感じだよね。

 そういう事でわたしは二人と一緒に出かける事になった。


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