独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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園比といちゃいちゃ(?)デート その1

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 屋敷に帰るとパタパタと園比が走って迎えに出て来てくれた。

「お帰りっ。姫様、剛毅に変なコトされなかった?」

 開口一番、園比がそんな事を言う。

「変なコトって、やだなぁ。なーんもあるわけないじゃん。なあ、姫さん」

 いつも通りカラカラと笑う剛毅。

「そういった心配はどちらかというと明日の園比さんにした方が良いのかもしれませんね」

 後から出てきた透見が苦笑混じりに言った。

「で、姫君。首尾の方はいかがでしたか?」

 居間へと移動しながらにこりと透見が笑った。

「見てのとーり、だよ」

 わたしの代わりに答えた剛毅が手を広げ、何もないよとゼスチャーする。

「うん、ごめんなさい。これといって収穫なかったです」

 わたしもとりあえずそう答える。

 本当は剛毅を選択肢から外したって意味では収穫あったんだけど、さすがに皆にそれは言えないよね。

「そうですか……」

 居間に着くと透見がすいとわたしの椅子を引いて座らせてくれた。そしてさすがと言いたくなるくらいタイミングばっちりに、メイド服を着た棗ちゃんがわたしの前に紅茶とクッキーを差し出した。

「あ、ありがとう」

 素直に呟くと棗ちゃんは笑顔で「いいえ」と答えた。

「落ち込まないで下さいね。姫様はまだこちらに着いたばかりなんですもの。慣れればすぐに〈唯一の人〉も見つかりますよ」

 慰めるように言ってくれる棗ちゃん。いい子だなぁ。

「棗ちゃん、やっさしー」

 同じように感じたらしい園比がにっこり笑って棗ちゃんの手を握る。

「僕、棗ちゃんのそういうトコ好きだよ」

 にぎにぎと園比は両手で棗ちゃんの手を包み込んでいる。

「あら、ありがとう」

 だけど棗ちゃんはにっこり笑って園比の手を冷たく振り払った。

「ところで戒夜は?」

 いつでもみんな一緒にいるもんだと思い込んでたんで、他のみんながいるのに一人だけ姿が見えないのは気になった。

「戒夜さんには街の見回りに行ってもらっています。昨日の今日ですから急に空の小鬼が数を増やして攻めてくるとも思えませんが、それでも姫君が〈唯一の人〉を見つけられるまで油断は出来ません」

 少し厳しい顔つきで透見が言う。

 そっか、わたしが召還されてなくてもわたしを捜してこの街を荒らすって言ってたっけ。だったらわたしがいるって分かったら、ますますわたしを捜して町中荒らしかねないんだ。

 昨日見た小鬼を思い出し、胸がぎゅっと痛くなった。

 夢とはいえ、わたしのせいで街が荒らされるってのは、やだ。隠しキャラ云々はもう考えないで、皆の中から早く選んじゃった方が良いのかな。



 次の日、にこにこ顔の園比と街を歩く。

「へへ。姫様とおでかけ~」

 足取り軽く前を歩いていた園比がくるりとこちらを向いた。

「ね、姫様。手、つなご? 今日は邪魔する奴もいないしさ」

 ぱっと差し出された手に、戸惑ってしまう。

「こんなおばさんと一緒に歩いて、嬉しいの?」

 卑屈だとは思うけど、つい訊いてしまう。

 手をつなぐ件をスルーしたにも関わらず、園比はにこにこ笑ってる。しかも満面の笑みで言うのだ。

「嬉しいよ。だって姫様だもん」

 一気に発熱したのが自分でも分かった。

 いかんいかん。誤解しそうな台詞だけどこれ、〈救いの姫〉だからって意味で決して『わたし』だから嬉しいわけじゃないんだよ、うん。

 顔をパンパンと叩いて目を覚まして、園比に言う。

「ていうか園比、女の人となら誰とでも嬉しいんじゃない?」

 プレイ途中だったゲームの園比はそこまで女の子好きなキャラじゃなかったんだけど、これまでの言動を見てたら夢の中の園比は、なんかかなり女の子好きな気がする。

「えー、姫様ってば僕のことそんな風に思ってるのー?」

 ぷうっと頬を膨らます園比。そーゆーとこ、かわいいんだけど。

「うーん。だってね、まあわたしと棗ちゃんに対しての態度しか見てはないけど、園比って基本的に女の人が好きっぽい」

 わたしに対してもやたら手を繋いだり触ったりしてくるけど、それは棗ちゃんに対しても同じだった。その慣れた感じから他の女の人に対しても同じように接してるのが目に見える。

 わたしの言葉にいたずらがバレたいたずらっ子のように、楽しそうにペロリと舌を出して笑う園比。

「バレたか。さすが姫様。うん、僕女の子はみーんな好きだよ」

 まあ男の子だしね。悪いとも言いきれない。でも。

「みーんな好きなのは良いんだけどね、あんま誰にでもベタベタ触るのはどうかな?」

 おばさんの考えで、イマドキの子には合わない考えかもしれないけど、彼女でもない女の子にベタベタ触るってのはやっぱどうかと思ってしまう。

 だけど園比的にはやっぱその考えが分かんないらしい。

「なんで?」

 きょとんと首を傾げている。どう説明したもんかな。

「んー。好きな人が別の女の子にベタベタ触ってるの見るのって、嫌だよ?」

「あー。そういうイミ」

 納得した、と言わんばかりに頷く園比。

「それは大丈夫。本命の子が出来たら他の人には触らないから」

 きっぱり言うけど、元々の性格だとしたら急には治らないから今から少しずつやめる訓練しといた方が良いと思うけどなぁ。


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