独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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そういえば最近、最初からルート選択できる乙女ゲー増えたよね その1

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 さてどうしよう。

 次の日朝食を食べながら、みんなにどう切り出そうかと迷う。棗ちゃんもチラチラとこっちを見て、いつわたしが口を開くのかと待っている。迷ってる内に朝食を食べ終えた戒夜がわたしに訊いてきた。

「それで、本日はどうなさるおつもりですか? 姫」

 このタイミングを逃すと今日はもう言い出せなくなる気がして、わたしはコホンと咳払いをして真剣な顔で口を開いた。

「その前に、実はみんなに大事な話があるの。聞いてくれる?」

 するとみんなが真面目な顔をしてこっちを見た。

 自分で注目を集めるような言い方してなんだけど、みんなにじっと見られると言い出しにくい。けど、そんな事言ってぐじぐじ迷ってても仕方がないのでグッと手を握りしめ、覚悟を決める。

「実はね、まだ確定ではないんだけど〈唯一の人〉かもしれないと思う人がいるの」

 みんな驚いた顔になる。そりゃそうよね、これまで少しもそういう話、四人にはしなかったから。

「いつの間に? ていうか、誰?」

 早口で園比が問う。ちょっと責められてる感じがしてわたしは口ごもりそうになってしまった。なのでひと呼吸置いてから口を開く。

「その前に。さっきも言ったけど、まだ確定じゃないの。だからね、まだその人に名前は名乗りません。万が一、間違いだったらいけないから」

「うん。で、誰なの?」

 単刀直入に園比が訊いてくる。なんか怖いなぁ。

 そう思ったのに気づいてくれたのか、棗ちゃんがフォローを入れてくれた。

「園比。ちゃんと姫様の言葉を待ちなさいよ」

「えー、だって……」

 反論しかけた園比に今度は戒夜がピシリと言う。

「だってじゃない。守り手の一員ならばちゃんと姫の言葉を待て」

 だけど今度は剛毅が園比をかばうように言う。

「いや、でもやっぱ気になりますよ。今までこれっぽっちもそれらしい人に会ったって話しなかったのに、いつの間にって思うよな」

 いつもの爽やかな笑顔ではなく、ちょっと苦笑気味に剛毅はわたしを見た。うんまあそれは、正直な気持ちなんだろうなと思う。でもまあ、昨日の落ち込んでた様子が今日は見られない。全く以て普段通りとまではいかないかもしれないけど、気持ちを切り替えてくれたみたいでホッとした。

 で、当の透見はというと、黙ってじっとわたしの言葉を待っていた。

「言わなかったのは、言えなかったからだよ。確信持てなかったし、今も持ててないし。けど、言ってみんなに協力してもらった方がその人が本当に〈唯一の人〉かどうか確認しやすいかもと思って、だから言う事にしたんだよ」

 そこまで言って、一息つく。みんなわたしの言葉に頷き、次の言葉を待っている。

 さあ、言わなきゃ。

 そう思うとドキドキしてきて、顔が赤くなってきた。考えてみればこれって公開告白に近いよね? みんなの前で透見が好きかもって告白するみたいなもんじゃん?

「姫様」

 そんなわたしに気づいた棗ちゃんが「がんばって」と言わんばかりに声を掛けてくれた。それに勇気をもらったわたしは頷き、大きく息を吸う。そしてゆっくりと、言った。

「透見、貴方なの。わたしは貴方が〈唯一の人〉なんじゃないかって思ってる」



 しばらくの間、誰も口をきなかった。その静けさに血の気がひく。言うんじゃなかった、と思ってももう遅い。気まずい空気に逃げ出したくなる。

「私、ですか?」

 かすれた声で透見が言ったのは、かなりたってからだった。

 それが合図になったように、他の人達も次々と口を開く。

「何故そう思われるのですか?」

「透見だけ、ずるい」

「透見かぁ、意外だけどありえるかも」

 反発する園比と疑問を抱く戒夜。どちらも顔をしかめている。だけど剛毅だけが納得したように笑顔を見せた。

「なんで透見だとありえるんだよ」

 ぷうっと頬を膨らませる園比を可笑しそうに見ながら剛毅がその肩をポンポンと叩く。

「まあまあ、怒んなよ。考えてもみろよ、オレの知ってる中で一番姫さんの事考えてるのって透見じゃん?」

 にこにこと剛毅はそう説明する。だけどその意見に園比は納得出来ないみたいで。

「そんな事ないよ。僕だって姫様の事好きだもん」

 はっきりとそう主張する。

 こんな風にストレートに好きとか言われると、ちょっとドキリとしてしまう。とはいえ、園比のこの好きは恋愛の好きじゃないんだろうけど。

 そんな事考えてる内に二人は「好きなのと相手の事を考えるのは違うじゃん」とか「好きだからこそ相手の事考えるんでしょ」とか言い合ってた。

 そんな二人に戒夜がピシリと言う。

「二人共。とにかく姫の話を聞け」

 その言葉で再びみんなの視線がわたしへと注がれた。

 う、緊張する。でもそんな事言ってる場合じゃない。咳払いをひとつして、それからわたしは慎重に口を開いた。

「最初はね、透見だけじゃなく四人とも候補だったの」

 そこで一旦言葉を切り、みんなの顔を見る。剛毅はただただ驚き、園比は自分にも可能性があるんだと思ったのか喜び、戒夜は何かを考えるように眉をしかめ、そして透見は、トレードマークの笑顔を忘れてしまったかのように真剣な顔をしてわたしを見ていた。

「透見かもしれないって思い始めたのは、つい最近。最初はなんとなくそうかなって思う程度で、だから棗ちゃんに協力してもらって透見といられる時間を多く取れるようにしてもらってたの」

 わたしの言葉に戒夜は納得がいったように頷いた。

「それで棗は最近やたらと図書館で調べ物をする事にこだわっていたんだな」

「伝承関係で透見の右に出る者はいないもの。姫様が伝承を調べるなら当然透見が付き添うことになるじゃない」

 少し誇らしげに棗ちゃんが笑う。

「でもどうして透見なのさ」

 しばらく黙って聞いていた園比が納得出来る理由を聞くまで引き下がらないと言わんばかりの目で訊いてきた。

「最初はなんとなく、だったの。理由を訊かれても困るくらい。昨日の夜、棗ちゃんと話してて〈唯一の人〉かどうかの確認作業をしやすくする為にもみんなに話してみたらどうかって事になって今に至るわけなんだけど、今色々話してて思い出した事があるの」

 わたしの話をじっと聞いてくれている園比から、透見へと目を移す。それからみんなの顔も見て。

「透見に教えてもらったんだけど、図書館にある〈唯一の人〉の伝承を綴った本に魔術が掛かった頁があるのは、みんな知ってる?」

 わたしの問いに戒夜が頷いた。

「共に〈救いの姫〉の守り手となると誓った後、皆で図書館へ行き、透見に見せてもらいました」

「あの、わけ分かんないページだよね?」

「ああ、日本語が書いてあるってのは分かるのに、内容が分かんなくなるあの本か」

 口々に思い出したように喋る。

「実はね、透見には口止めしてたんだけど、ちょっとだけあの頁の文字が見えたの」


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