まさか推しと戦うことになるなんて……ミッドナイトミッションSPACE‐F-

有馬佐々(ありまささ)

文字の大きさ
15 / 32
ミッドナイトミッション

狂った世界

しおりを挟む
「――はっ!」

 ミコトは目を覚ました。

 手に何かの感触があった。見ると、ミコトの手にはワンマカの金色レアアイテムのキーホルダーが固く握りしめられていた。

「……マドカ、それに皆……」

 寝ぼけた口調でミコトはぼやいた。

 すると、勢いのある甲高いリンカの声が響き渡った。

「お兄ちゃん!起きるの遅い!」

 何処か、以前も聞いたことがあるような言葉だった。

 ミコトは酷く疲れた顔をしていた。

「……リンカ、か。今日は何日だ?」 

 扉越しに、ミコトはリンカに尋ねた。

「何寝ぼけたこと言ってるんですか?一晩過ごしただけじゃないですか、今日は八月二十九日ですよ!」

「八月二十九日⁉」

 ミコトは長い間眠っていたためか、夏休み中の記憶が無く、今いる世界線がわからなくなっていた。ミコトの体感時間は長い夢のせいで狂ってしまった。

「今日は始業式でしたよね!」

 リンカは当たり前のように声にする。

「俺は昨日、いや、そのずっと前は何をしていたんだ?」

 立ち上がろうとするとミコトは軽い立ち眩みに襲われた。

「覚えていないんですか?昨日の夜はノノちゃん風味タコライスを食べたじゃないですか!美味しいって褒めてくれて、あのタコライスを忘れたんですか?」

 ――ノノちゃん風味タコライス……そんなの食べた記憶が全くないぞ。……俺は夏休み、どうやって過ごしていたんだ?

 ミコトの頭は混乱状態に近かった。

「お兄ちゃん!急いでください!マドカちゃんが下で待っていますよ!」

「え」

 それを聞いてミコトは声を漏らした。 

 ――マドカ?何故リンカがその名前を……?

 ミコトは更に困惑した。

 ――待て、待て。いったん落ち着こう。

 困惑していても何もわからないと、ミコトは無理やり平然を装うことにした。

「――八月二十九日……そうか。今行くよ」 

 ミコトは扉を開けて、リンカの頭をポンポンと軽く撫でた。

「マドカちゃん、もう随分待たせちゃってるから、はやくいってあげてくださいなのです!」

 再び不思議に思い、それが、本物のマドカなのか確かめようと、ミコトは駆け足で階段を下りて玄関へと向かった。

 玄関の扉を開けると、そこには正真正銘、マドカの姿があった。

「今起きたの?ミコト、おはよう。ほら、ぼやっとしてないではやく準備してきなさい」

 マドカはこの、何かが可笑しい世界に一切疑問を抱いていない様子で、落ち着き払って言った。

 この世界は、ずっと、前からそうであったかのような世界だった。

 本当は違うのに。違ったのに。

「え、マドカ、どうしてここに……?」

「どうしてって?いつものことじゃない。彼氏の朝を迎えるのは彼女にとっては当たり前のことじゃない」

 そう言ったマドカは持っていた鞄を揺らした。鞄には赤色のワンマカのキーホルダーが付けられてあった。

 ミコトは赤色のキーホルダーを見て思った。

 ――どうやら、タソもこの世界に存在しているようだ。そして、きっとフェンダーもミドリも……。

「一体あの後、何があったんだ?」

 ミコトはマドカに向かって尋ねた。

「あの後?なにそれ。私が迎えに来ることなんて、いつものことじゃない。さあ、準備してらっしゃい」

 マドカは何か隠しているのか、忘れているかのようにSPACE‐F‐での思い出を話さなかった。

「SPACE‐F‐だよ!レノが居て……」

「本当、寝ぼけてるんじゃないの?始業式に遅刻するわ」

 ――ああ、これ、何言ってもだめなやつだ……。遅刻するし、取り敢えず仕度を急ごう……。

「マドカ、三分だけ待ってくれ」

 ミコトは、階段を上って自室に戻り、制服に着替えて鞄を背負った。

「待たせた」

 ミコトは急いで靴を履く。

「では、行きましょう」

 ミコトとマドカは二人並んで、高校へと向かった。

「手、良いかしら?」

 左を歩いていたマドカが右手を差し伸べた。

 ――手を繋ぐのか?

「あ、ああ」

 マドカの手に触れるのは久しぶりで、なんだか無性に緊張した。

 二人は手を繋いで歩いた。

 それはなんだかとても新鮮だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...