まさか推しと戦うことになるなんて……ミッドナイトミッションSPACE‐F-

有馬佐々(ありまささ)

文字の大きさ
24 / 32
ガラクタの集まりみたいな心

同じ夢の中で

しおりを挟む
 六月十九日からレノがいなくなって、一人ぼっちになってしまったマドカは眠りにつくたび不思議な夢を見るようになっていった。

 謎の男に追われる夢だ。

 マドカには追いかけてくる何かが、もやもやとした影に見えていた。謎の影の正体がわからないマドカは、ただ捕まることを避けて必死に逃げ回っていて、捕まると終わってしまうとどこかで思っていた。

 その謎の影の正体がMODSのメンバーの一人、セフィであることも知らずに。

 ――何よ、この影!いやっ、来ないで!

 マドカは息切れ切れになって走った。行き止まりはどこまで行ってもなく、半永久にグレーの景色の中を走っていた。

 グラッ。

 地面が大きく揺れて、マドカは足をもたつかせた。

 突然、景色は変わり、レノが研究室の溶媒液に浸かっている姿が映った。

「……こちら、準備完了です。そちらは?」

 セフィが第一声を放つ。

「溶解度正常。他はどうですか?」

 ジルが言った。

「すみません!こちら少し遅れております」

 エスが焦りながら言う。

 レノが溶媒液に浸かっている姿が見えた。

 マドカはその情景を見ていることしか出来なかった。

 ――……兄さん……。

 マドカの兄であるレノはこの時、MODSの手によって機械に改造された。

「うあぁぁぁぁぁ」

 レノの叫び声が聞こえてきた。

 MODSはレノの能力を奪った後、『活力吸収エナジードレイン』の力を手に入れた。

 レノが改造され、叫び声を上げている姿を見るのはとても悲惨なものだった。助けることも出来ず、ただ見ていることしか出来ないマドカは、毎日、夢の中で涙を流していた。

 七月二十六日の朝。

 目を覚ましたマドカは遠くの天井を見つめて、荒い息を吐いていた。         

 ――何回同じ夢を見たらいいのよ……。兄さんはもう助からないの?  

 マドカはこの不思議な夢を毎日のように見た。

 精神は完全に疲れ切っていた。

 夢から覚め、起きるたび念を込めたが、いつになってもレノがいた数日前には戻ることはなかった。

 開けっ放しにしていたカーテンが静かに揺れていた。微かに風も感じられた。今年は冷夏が続いている。

『ワンマカの新ガチャ本日発売だわん!皆ゲットしてね!ゲットしないと、わんって吠えてやっつけちゃうぞ!』

 つけっぱなしにしていたテレビからCMの音が聞こえてきた。

 マドカはワンマカのCMをぼうっと眺めた。

 のそっと体を起こし上げる。 

 その後、マドカはカップ麺を朝食にした。昼食はコンビニで買ってきたパン。コンビニへ外に出るのも億劫だった。そして、夕食はまたカップ麺にしたようだ。レノがいなくなってから、マドカはまともな食事をとっていなかった。

 その日の夜、マドカは眠りにつく前

 ――明日はワンマカのガチャでもゲットしに行こうかしら。

 と思った。

 少しでも楽しいことを考えて、不思議な夢のことを考えないようにしたかったのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...