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8章、ライメルスの聖女様
第61話
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王宮で私に与えられた部屋は国賓が滞在する部屋だった。
すごい豪華な部屋、ベッドは天蓋付きだし部屋の調度品はすべて美術品クラスだ。
私のようなおっちょこちょいの小市民が泊まるような部屋ではない。ちょっと動くだけで何か貴重なものを壊してしまいそうで、ドキドキする。
私がバルコニーで倒れてしまったことで、民衆の私を取り囲むような動きは一旦止まった。私が病弱なことが周知されたようだ。
豪華すぎる部屋は落ち着かないけれど、高熱を出した私はそこから動けないでいた。
王宮の侍女がつけられ高貴な人のように世話をされる。
ウォルターはホーン男爵家の別邸に一旦戻った。
こうちゃんは私の側についているけど、具合の悪い私を見てオロオロしているだけだ。聖獣ってこんな生き物なのかな?残念感が漂う。
そうクーリエ先生に言ったら、召喚獣契約した聖獣は契約した相手から知識を得るものだと言われた。
つまり、こうちゃんが残念なのは私の知識が足りないからだ。
そう言われれば召喚獣契約する前の方が威厳があった気がする。
二日間熱を出して、三日目にやっと平熱に戻った。
朝食がやっと普通に取れた日にそれは起きた。
いつも私の世話をしてくれている侍女の一人がこう言ったのだ。
「聖女様、本当に良かったですね」と。
「何が良かったんですか?」
「聖女様はまだ知らなかったんですね。ロンメル伯爵家が民衆に襲われたんですよ」
ミリアンヌという名の侍女が嬉々として言った。
ロンメル伯爵家は私に毒を飲ませたニーナの母親の実家だ。毒を用意していたのがこの家で、多額の賠償金をホーン男爵家や国に支払ったと聞いていた。
「聖女様に毒を飲ませるなんて、とんでもない家ですよ。
でも天罰が下りました。ロンメル伯爵家の人間は全員外に引き摺り出されて民衆に殴り殺されたらしいです。子供たちも全員ですよ」
ミリアンヌが慶事であるように言った。
私は朝食にとったものを全部吐いてしまった。
簡単に人を殺してしまうライメルスの人々が怖かった。命の価値がすごく軽い。
そして、それを嬉しそうに話すミリアンヌが信じられなかった。
私の感覚とライメルスの人たちの感覚が違い過ぎる。
その日から私はまた何も食べられなくなった。熱が出た。たぶん精神的なものだ。
自分の周りにいるすべての人が怖い。怖い夢を見るようになり、眠ることさえ怖くなった。
「何かして欲しいことはないか?」
日に日に弱っていく私を見て、主治医のクーリエ先生が言った。
「ガイに会いたい」
ポロっと言葉が溢れた。
「ガイ・ハベルか。分かった、すぐに連絡を取る」
「あっ、でも、せっかく冬休みで実家に帰っているのに、呼び出したら悪いから‥」
「あいつならとっくに学園寮に帰っている。君の見舞いがしたいと言って来たが断った」
「どうして?ガイと友達なのは先生だって知っているのに」
「君の見舞いがしたいと言う貴族がどれだけいるか知っているか?
そのすべてを断っているんだ。家族のウォルターとは違う、特別扱いは出来ない」
「じゃあ、もう前みたいにガイと一緒にはいられないの?」
「一緒にいたいのなら護衛として打診しよう」
「聖女が護衛をお願いして、それを断る事って出来るものなの?」
「難しいかも知れないが名誉なことだ」
「なら先にガイがどうしたいか聞いてみる。ガイの意思を無視して決めたくないの」
「ジュリア、君は聖女だ。多少のワガママは許される」
「多少じゃないよ。ガイの将来に関わることかも知れない」
私はガイに側にいて欲しい。でもガイにはガイのやりたい事がある。私はガイの邪魔だけはしたくない。
「君は聖女になっても変わらないんだな」
クーリエ先生がため息をついた。
「正直、ガイ・ハベルが羨ましいよ」
すごい豪華な部屋、ベッドは天蓋付きだし部屋の調度品はすべて美術品クラスだ。
私のようなおっちょこちょいの小市民が泊まるような部屋ではない。ちょっと動くだけで何か貴重なものを壊してしまいそうで、ドキドキする。
私がバルコニーで倒れてしまったことで、民衆の私を取り囲むような動きは一旦止まった。私が病弱なことが周知されたようだ。
豪華すぎる部屋は落ち着かないけれど、高熱を出した私はそこから動けないでいた。
王宮の侍女がつけられ高貴な人のように世話をされる。
ウォルターはホーン男爵家の別邸に一旦戻った。
こうちゃんは私の側についているけど、具合の悪い私を見てオロオロしているだけだ。聖獣ってこんな生き物なのかな?残念感が漂う。
そうクーリエ先生に言ったら、召喚獣契約した聖獣は契約した相手から知識を得るものだと言われた。
つまり、こうちゃんが残念なのは私の知識が足りないからだ。
そう言われれば召喚獣契約する前の方が威厳があった気がする。
二日間熱を出して、三日目にやっと平熱に戻った。
朝食がやっと普通に取れた日にそれは起きた。
いつも私の世話をしてくれている侍女の一人がこう言ったのだ。
「聖女様、本当に良かったですね」と。
「何が良かったんですか?」
「聖女様はまだ知らなかったんですね。ロンメル伯爵家が民衆に襲われたんですよ」
ミリアンヌという名の侍女が嬉々として言った。
ロンメル伯爵家は私に毒を飲ませたニーナの母親の実家だ。毒を用意していたのがこの家で、多額の賠償金をホーン男爵家や国に支払ったと聞いていた。
「聖女様に毒を飲ませるなんて、とんでもない家ですよ。
でも天罰が下りました。ロンメル伯爵家の人間は全員外に引き摺り出されて民衆に殴り殺されたらしいです。子供たちも全員ですよ」
ミリアンヌが慶事であるように言った。
私は朝食にとったものを全部吐いてしまった。
簡単に人を殺してしまうライメルスの人々が怖かった。命の価値がすごく軽い。
そして、それを嬉しそうに話すミリアンヌが信じられなかった。
私の感覚とライメルスの人たちの感覚が違い過ぎる。
その日から私はまた何も食べられなくなった。熱が出た。たぶん精神的なものだ。
自分の周りにいるすべての人が怖い。怖い夢を見るようになり、眠ることさえ怖くなった。
「何かして欲しいことはないか?」
日に日に弱っていく私を見て、主治医のクーリエ先生が言った。
「ガイに会いたい」
ポロっと言葉が溢れた。
「ガイ・ハベルか。分かった、すぐに連絡を取る」
「あっ、でも、せっかく冬休みで実家に帰っているのに、呼び出したら悪いから‥」
「あいつならとっくに学園寮に帰っている。君の見舞いがしたいと言って来たが断った」
「どうして?ガイと友達なのは先生だって知っているのに」
「君の見舞いがしたいと言う貴族がどれだけいるか知っているか?
そのすべてを断っているんだ。家族のウォルターとは違う、特別扱いは出来ない」
「じゃあ、もう前みたいにガイと一緒にはいられないの?」
「一緒にいたいのなら護衛として打診しよう」
「聖女が護衛をお願いして、それを断る事って出来るものなの?」
「難しいかも知れないが名誉なことだ」
「なら先にガイがどうしたいか聞いてみる。ガイの意思を無視して決めたくないの」
「ジュリア、君は聖女だ。多少のワガママは許される」
「多少じゃないよ。ガイの将来に関わることかも知れない」
私はガイに側にいて欲しい。でもガイにはガイのやりたい事がある。私はガイの邪魔だけはしたくない。
「君は聖女になっても変わらないんだな」
クーリエ先生がため息をついた。
「正直、ガイ・ハベルが羨ましいよ」
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