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断頭台の吸血鬼編
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戦闘開始から1分30秒。
戦いを終えて戻ってきた別役に、藤宮は大角から視線を外すことなく、労いの言葉を掛けた。
「お疲れ。最後危なかったけど?」
「ハァハァ……うっさいねんッ!」
労いにしては一言多い藤宮の発言に、疲労困憊の別役は苛立ちを隠せなくなっていた。
棘のある言葉だったが、藤宮はその様子を懐かしむ。
「その口調、来たばっかりの時みたいね」
「この仕事が終わるまでは治らんと思っとけ」
「はいはい。で、一応確認だけど彼強かった? 終盤ずっと優勢だったけど?」
別役はその場に腰を下ろし息を整える。
そして藤宮の問いに項垂れた体勢のまま答えた。
「バカ言うなや。コッチは本気で殴り続けたんやぞ……」
別役の視界に、乳酸がたまって震える両腕、左の拳に装備した『爆星』に入る亀裂が入った。
視線を奥に向ければ、大角は既に回復して狼原との戦闘を始めていた。
底が見えない大角の圧倒的なタフネスとスタミナに別役は顔を顰める。
「この後、同じパフォーマンス出来る自信なんてあらへんわ」
「……じゃあ最悪、私が出なきゃか」
「おう、準備だけはしとき」
そう言って別役は輸血パックを取り出し、中の血を口に含んだ。
想定外ばかりではあるし、元々想定通りにいくとは思っていなかったが、別役の戦いと再生し始めた身体中の傷を見て、陽の中で揺らぎが生まれる。
今更後悔しても遅いと頭の中で理解していても、これが最善だったのか、もっと出来る準備があったのではないかと不安になっていく。
そんな陽の心を藤宮は見透かしていた。
「言っとくけど陽君は気にしなくていいからね? 私たちは給料貰って仕事として引き受けてる」
「何一丁前に気にしてんねん。お前の作戦に協力するって判断したんは俺等や」
「……分かってます」
2人の激励で陽は平常を取り戻した。
今は自分の役割を全うするだけだ。
「うんうん、若者を気にかけるのはいい心掛けだね。たださ、情けなく見えちゃうし、あんまり言いたくないんだけど──もうちょっと僕にも応援とか無いかなぁ!?」
「「いけ。押せ押せ。頑張って」」
「もうヤダこの同期達ッ!!!」
何故、狼原が追い詰められているのか。
3人が話している裏で、大角は別役の攻撃を受け続けて解除されてしまった《|鬼殻鎧(きかくがい)》を再度発動し、右手左脚がもげた状態で一瞬にして狼原と距離を取った。
身体の欠損に即座に適応する様は、まさに獣のそれだった。
大角にとっても逃げるなんて不本意だが、狼原の攻撃を二度受け、万全の肉体で《鬼殻鎧》を発動しなければ勝利は無いと身を持って理解していた。
そして狼原も、万全の大角とは戦いたくない。
再生を阻止する為に距離を詰めようとしたが、大角は射影圏外に逃れながら身体を再生していく。
即ち、鬼が逃げるタイプの鬼ごっこが勃発していたのだった。
(陽君とレイアちゃんを護衛する事の優先度が最も高く、一定の距離を取れば詰めれないって理解してるな?)
これ以上接近すれば藤宮の援護を受けにくくなり、また大角と陽の対角線に立って最前線で足止めする前衛の仕事を果たせなくなる。
「けど嫌がらせはさせてもらうよ」
そう言って狼原が取り出したのはGAVA専用閃光手榴弾。
スイッチを入れれば音声を認識するのと同時に起爆、スイッチを入れずに音声を認証させれば5秒後に起爆する。
「ッ!」
「《Activation》」(あの表情、コレが何か理解してる。そりゃ使う脳も一緒だし、基本的な情報は筒抜けか)
理解した上で、狼原は逃げる大角の進行方向に向かって投げつけた。
大角の目の前に到達した瞬間、手榴弾は眩い光と爆音を発する。
キィーーーーーンッ!!!
「チッ!」
大角は両目を瞑り、耳の中に固めた血で詰めて塞ぐ事でダメージを最小限に抑えた。
「思い通りにはさせんぞッ!!!」ブォンブォン!
さらに背中を壁に付けて攻撃範囲を限定した上で、瞼越しに光を感じなくなるまで金棒を振り回し続けた。
だが大角が勢いよく目を開いた時、そこに狼原の姿は無く──
「消え──」
ダダンッ!!
「がッ!?」(上からじゃと!?)
狼原は靴を脱ぎ捨て、血液操作で足裏と壁を接着して壁に立って大角の頭上から両肩を撃ち抜いた。
大角は飛び上がって蹴りを繰り出したが、狼原は既にその場を離れて地面に着地していた。
遅れて着地した大角は即座に攻勢に出ようとしたが──ダンッ!
「ッ……クソッ!!」ドサッ!
走り出そうと体重を乗せた大角の左脚を、狼原は瞬時に撃ち抜いて転ばせた。
ダダンッ!
さらに転がる大角の両膝を2発の弾丸で撃ち抜いて切り離すことで、完全に無力化した。
撃鉄を起こし、銃口を大角に向けて狼原は微笑む。
「これで詰みかな。治したらまた撃つからね」
狼原が用いる『岩砕』は装弾数6発の.44口径リボルバーの改修版。
威力は凄まじいが連射性は低く、吸血鬼相手に用いる物好きは彼ぐらいだ。
そんな物好きが7年もの間総隊長を務め、今も最前線で戦えている理由として、彼が生来持つ才能、高い反応速度と精密動作性が挙げられる。
吸血鬼化した際に高まる動体視力を組み合わせる事で、常に相手の初動を潰し無力化する『先手必中』の戦術を編み出した。
大角の傷口は意志とは関係なく自然治癒により再生し続けるが、その速度は狼原の聞いた報告よりも格段に落ちていた。
「ハァハァ……」
(温存って感じじゃない。本当に燃料切れみたいだ。ま、そもそもジャックとの戦闘後、輝くんにはまともな休息もなく、食事も取らせてない。そんな状態であの大立ち回り……末恐ろしいね)
そんな二人の様子を遠くで見ていた別役は不機嫌そうな顔をする。
自分が苦戦したのに、狼原なんかに簡単に負けるなよ、という言葉が表情から読み取れた。
藤宮は言わなくていいと分かっていながら、思わず口を開いた。
「なんか別役居なくても大丈夫そうじゃない? 交代する方がリスクでしょ」
「言うなや……」
「でも先に狼原さん出てたら、こんな簡単に制圧出来なかったんじゃないですか?」
「分かっとんな陽。ええか? 藤宮はこの姿勢を見習──」
「カハッ!」
「「「ッ!」」」
談笑していた三人の視線がぐったりとしていたレイアに向けると、死人の様に白かった顔に赤みが戻っていた。
乾き狭くなった気道を空気が通った事で、反射的にレイアの口から掠れた咳が出た。
それはレイアの再生が順調に進み、呼吸中枢が働き始めた事を示していた。
彼女の経過は良好──「レイ、ア?」
主の咳を聞き、消耗していた大角は目線を上げる。
彼は別にレイアに対して執着している訳ではなかった。
彼の本質は自分の前に立ちはだかる障害物に対する苛立ちだけだ。
だが今は、身体中が彼女を求める。
体力がみるみる回復する度に、執着心が芽生えていく。
(レイアちゃんに反応した。やはり──)
「《|鬼殻鎧(きかくがい)》!!」
「ッ!?」
左腕右脚の再生と《鬼殻鎧》の発動を同時に行い、狼原の先手を受けるより速く射程圏外へと脱した。
(強化、再生、操作の同時発動ッ! 疲労したフリ……いや、今回復したのか!?)
左脚が治れば、大角は完全に機動力を取り戻す事になる。
手持ちの閃光手榴弾は無い。
狼原は即座に動き、間合いに入った瞬間に引き金を引いた。
ダンッ!
大角は狼原が機動力を奪う為に右脚を狙う事に賭け、血を纏った左腕を盾にして防ごうとした。
そして右膝に放たれた狼原の弾丸を、狙い通り左腕で受けた。
(無駄だよ)
『岩砕』はその名の通り、岩すら砕く威力を誇る。
血液操作で実現出来る硬度には限度があり、『岩砕』の前には幾ら防御を重ねようと関係無く、現に腕の鎧を貫いた。
ビチャ!
大角は銃創から噴き出した大量の血を正面から被りながら、ニヤリと笑った。
「ッ!?」
バゴンッ!
大角は撃ち抜かれた筈の右脚で、狼原を蹴り飛ばした。
「がッ!」(防いだッ!?)
別役に勝利する為に編み出した《鬼殻鎧》は守る為の鎧ではなく筋量の増加。
体外で血の繊維を作り出し、筋力や瞬発力を底上げしていた。
だが初動を潰す狼原相手に、これは有効的な技とは言えなかった。
辿り着いた答えはダイラタンシー流体。
血液操作による強度の増加では防ぎきれないと事を身をもって体験した大角は、緻密な操作でダイラタンシー流体を再現。
繊維の間に充満させて防御性能を上げた。
質量の増加に伴い機動力は若干低下したが、左腕を貫通した弾丸は右脚に傷を負わせる程の威力を残しておらず、右脚に纏った血の中で静止した。
別役、狼原という異なる強さを持つ者との戦いで《鬼殻鎧》が完成した。
「レイアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
戦闘開始から2分47秒。
大角は叫びながら狼原には目もくれず、一直線に駆け抜ける。
その眼は別役も藤宮も、そして殺したいと思っていた陽すら無視して、愛しのレイアのみを映していた。
戦いを終えて戻ってきた別役に、藤宮は大角から視線を外すことなく、労いの言葉を掛けた。
「お疲れ。最後危なかったけど?」
「ハァハァ……うっさいねんッ!」
労いにしては一言多い藤宮の発言に、疲労困憊の別役は苛立ちを隠せなくなっていた。
棘のある言葉だったが、藤宮はその様子を懐かしむ。
「その口調、来たばっかりの時みたいね」
「この仕事が終わるまでは治らんと思っとけ」
「はいはい。で、一応確認だけど彼強かった? 終盤ずっと優勢だったけど?」
別役はその場に腰を下ろし息を整える。
そして藤宮の問いに項垂れた体勢のまま答えた。
「バカ言うなや。コッチは本気で殴り続けたんやぞ……」
別役の視界に、乳酸がたまって震える両腕、左の拳に装備した『爆星』に入る亀裂が入った。
視線を奥に向ければ、大角は既に回復して狼原との戦闘を始めていた。
底が見えない大角の圧倒的なタフネスとスタミナに別役は顔を顰める。
「この後、同じパフォーマンス出来る自信なんてあらへんわ」
「……じゃあ最悪、私が出なきゃか」
「おう、準備だけはしとき」
そう言って別役は輸血パックを取り出し、中の血を口に含んだ。
想定外ばかりではあるし、元々想定通りにいくとは思っていなかったが、別役の戦いと再生し始めた身体中の傷を見て、陽の中で揺らぎが生まれる。
今更後悔しても遅いと頭の中で理解していても、これが最善だったのか、もっと出来る準備があったのではないかと不安になっていく。
そんな陽の心を藤宮は見透かしていた。
「言っとくけど陽君は気にしなくていいからね? 私たちは給料貰って仕事として引き受けてる」
「何一丁前に気にしてんねん。お前の作戦に協力するって判断したんは俺等や」
「……分かってます」
2人の激励で陽は平常を取り戻した。
今は自分の役割を全うするだけだ。
「うんうん、若者を気にかけるのはいい心掛けだね。たださ、情けなく見えちゃうし、あんまり言いたくないんだけど──もうちょっと僕にも応援とか無いかなぁ!?」
「「いけ。押せ押せ。頑張って」」
「もうヤダこの同期達ッ!!!」
何故、狼原が追い詰められているのか。
3人が話している裏で、大角は別役の攻撃を受け続けて解除されてしまった《|鬼殻鎧(きかくがい)》を再度発動し、右手左脚がもげた状態で一瞬にして狼原と距離を取った。
身体の欠損に即座に適応する様は、まさに獣のそれだった。
大角にとっても逃げるなんて不本意だが、狼原の攻撃を二度受け、万全の肉体で《鬼殻鎧》を発動しなければ勝利は無いと身を持って理解していた。
そして狼原も、万全の大角とは戦いたくない。
再生を阻止する為に距離を詰めようとしたが、大角は射影圏外に逃れながら身体を再生していく。
即ち、鬼が逃げるタイプの鬼ごっこが勃発していたのだった。
(陽君とレイアちゃんを護衛する事の優先度が最も高く、一定の距離を取れば詰めれないって理解してるな?)
これ以上接近すれば藤宮の援護を受けにくくなり、また大角と陽の対角線に立って最前線で足止めする前衛の仕事を果たせなくなる。
「けど嫌がらせはさせてもらうよ」
そう言って狼原が取り出したのはGAVA専用閃光手榴弾。
スイッチを入れれば音声を認識するのと同時に起爆、スイッチを入れずに音声を認証させれば5秒後に起爆する。
「ッ!」
「《Activation》」(あの表情、コレが何か理解してる。そりゃ使う脳も一緒だし、基本的な情報は筒抜けか)
理解した上で、狼原は逃げる大角の進行方向に向かって投げつけた。
大角の目の前に到達した瞬間、手榴弾は眩い光と爆音を発する。
キィーーーーーンッ!!!
「チッ!」
大角は両目を瞑り、耳の中に固めた血で詰めて塞ぐ事でダメージを最小限に抑えた。
「思い通りにはさせんぞッ!!!」ブォンブォン!
さらに背中を壁に付けて攻撃範囲を限定した上で、瞼越しに光を感じなくなるまで金棒を振り回し続けた。
だが大角が勢いよく目を開いた時、そこに狼原の姿は無く──
「消え──」
ダダンッ!!
「がッ!?」(上からじゃと!?)
狼原は靴を脱ぎ捨て、血液操作で足裏と壁を接着して壁に立って大角の頭上から両肩を撃ち抜いた。
大角は飛び上がって蹴りを繰り出したが、狼原は既にその場を離れて地面に着地していた。
遅れて着地した大角は即座に攻勢に出ようとしたが──ダンッ!
「ッ……クソッ!!」ドサッ!
走り出そうと体重を乗せた大角の左脚を、狼原は瞬時に撃ち抜いて転ばせた。
ダダンッ!
さらに転がる大角の両膝を2発の弾丸で撃ち抜いて切り離すことで、完全に無力化した。
撃鉄を起こし、銃口を大角に向けて狼原は微笑む。
「これで詰みかな。治したらまた撃つからね」
狼原が用いる『岩砕』は装弾数6発の.44口径リボルバーの改修版。
威力は凄まじいが連射性は低く、吸血鬼相手に用いる物好きは彼ぐらいだ。
そんな物好きが7年もの間総隊長を務め、今も最前線で戦えている理由として、彼が生来持つ才能、高い反応速度と精密動作性が挙げられる。
吸血鬼化した際に高まる動体視力を組み合わせる事で、常に相手の初動を潰し無力化する『先手必中』の戦術を編み出した。
大角の傷口は意志とは関係なく自然治癒により再生し続けるが、その速度は狼原の聞いた報告よりも格段に落ちていた。
「ハァハァ……」
(温存って感じじゃない。本当に燃料切れみたいだ。ま、そもそもジャックとの戦闘後、輝くんにはまともな休息もなく、食事も取らせてない。そんな状態であの大立ち回り……末恐ろしいね)
そんな二人の様子を遠くで見ていた別役は不機嫌そうな顔をする。
自分が苦戦したのに、狼原なんかに簡単に負けるなよ、という言葉が表情から読み取れた。
藤宮は言わなくていいと分かっていながら、思わず口を開いた。
「なんか別役居なくても大丈夫そうじゃない? 交代する方がリスクでしょ」
「言うなや……」
「でも先に狼原さん出てたら、こんな簡単に制圧出来なかったんじゃないですか?」
「分かっとんな陽。ええか? 藤宮はこの姿勢を見習──」
「カハッ!」
「「「ッ!」」」
談笑していた三人の視線がぐったりとしていたレイアに向けると、死人の様に白かった顔に赤みが戻っていた。
乾き狭くなった気道を空気が通った事で、反射的にレイアの口から掠れた咳が出た。
それはレイアの再生が順調に進み、呼吸中枢が働き始めた事を示していた。
彼女の経過は良好──「レイ、ア?」
主の咳を聞き、消耗していた大角は目線を上げる。
彼は別にレイアに対して執着している訳ではなかった。
彼の本質は自分の前に立ちはだかる障害物に対する苛立ちだけだ。
だが今は、身体中が彼女を求める。
体力がみるみる回復する度に、執着心が芽生えていく。
(レイアちゃんに反応した。やはり──)
「《|鬼殻鎧(きかくがい)》!!」
「ッ!?」
左腕右脚の再生と《鬼殻鎧》の発動を同時に行い、狼原の先手を受けるより速く射程圏外へと脱した。
(強化、再生、操作の同時発動ッ! 疲労したフリ……いや、今回復したのか!?)
左脚が治れば、大角は完全に機動力を取り戻す事になる。
手持ちの閃光手榴弾は無い。
狼原は即座に動き、間合いに入った瞬間に引き金を引いた。
ダンッ!
大角は狼原が機動力を奪う為に右脚を狙う事に賭け、血を纏った左腕を盾にして防ごうとした。
そして右膝に放たれた狼原の弾丸を、狙い通り左腕で受けた。
(無駄だよ)
『岩砕』はその名の通り、岩すら砕く威力を誇る。
血液操作で実現出来る硬度には限度があり、『岩砕』の前には幾ら防御を重ねようと関係無く、現に腕の鎧を貫いた。
ビチャ!
大角は銃創から噴き出した大量の血を正面から被りながら、ニヤリと笑った。
「ッ!?」
バゴンッ!
大角は撃ち抜かれた筈の右脚で、狼原を蹴り飛ばした。
「がッ!」(防いだッ!?)
別役に勝利する為に編み出した《鬼殻鎧》は守る為の鎧ではなく筋量の増加。
体外で血の繊維を作り出し、筋力や瞬発力を底上げしていた。
だが初動を潰す狼原相手に、これは有効的な技とは言えなかった。
辿り着いた答えはダイラタンシー流体。
血液操作による強度の増加では防ぎきれないと事を身をもって体験した大角は、緻密な操作でダイラタンシー流体を再現。
繊維の間に充満させて防御性能を上げた。
質量の増加に伴い機動力は若干低下したが、左腕を貫通した弾丸は右脚に傷を負わせる程の威力を残しておらず、右脚に纏った血の中で静止した。
別役、狼原という異なる強さを持つ者との戦いで《鬼殻鎧》が完成した。
「レイアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
戦闘開始から2分47秒。
大角は叫びながら狼原には目もくれず、一直線に駆け抜ける。
その眼は別役も藤宮も、そして殺したいと思っていた陽すら無視して、愛しのレイアのみを映していた。
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