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1 魔女と弟子と使い魔
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村人の誰かに魔女が潜んでいる。
多くの魔女が森や山で開かれるサバトに出席してしている。
悪魔と契約している。魔女狩り。背教者。
そんな言葉が私の両親を傷つけ、死へと陥れた。
人里離れた山奥にひっそりと暮らす若い娘ローレイ。ローレイは山で採れた薬草を使って薬を作ってはそれを町で売り、生計をたてていた。まだ若い娘ローレイには両親がいない。そもそもこんな人目をさけた山奥になど住んではいなかった。
まだローレイが今よりも幼い頃、町に住んでいた。その頃魔女という存在が人々を怖がらせていた。
魔女は悪魔と契約し、人々の弱いところに漬け込んでは皮膚を剥がされたり血を抜かれたり、それらを薬の材料にしたり、魔女にとっていいように利用されて、殺される。とても恐ろしい存在であった。魔女を恐れた貴族達は次々に魔女を魔女裁判にかけては殺していた。魔女と疑われたら人生の最後、村人達は次々と死刑になっていった。
周りの人々が死刑になって死んでいくのを恐れたローレイの両親は人里離れた山奥に家を建てた。それが今ローレイが住んでいる家である。
けれど家を建てて終わりではない。
あまりにも山奥すぎて生活がとても不便であった。両親はお金を稼ぐために被害が少ない村へ、ローレイは山奥の家へ、別々に暮らすことになる。けれどローレイはまだ幼いため、両親はローレイの様子を見に山奥へと頻繁に通っていた。けれどその行動が村人の間で「サバトに出席している」「悪魔と契約している魔女と魔法使い」などありもしない噂が広まり、やがてローレイの両親は魔女裁判にかけられ焚刑となって死んでしまう。
もちろん山奥に住んでいるローレイの元には両親が帰ってこない。そんな日々はずっと続き、食糧も水もなくなり、餓死寸前のローレイの前に1人の人間が現れた。
「この果実を食べれば貴方は生きられる」
その言葉は飢餓状態のローレイには神の囁きのように聞こえた。けれど実際それは悪魔の囁きである。
幼いローレイは人間の姿に化けた悪魔から果実をもらい命拾いをする。こうしてローレイは普通の娘ではなく魔女になった。果実を食べることによって悪魔と契約をしてしまったのだ。両親が殺されてしまった理由の一つ「魔女」に自らなってしまうことに引け目を感じていなかったのは餓死寸前のローレイに考える程体力がなかったと思われる。
現在ローレイは人里離れた山奥にすんでいる。その家に訪れたことのある者は誰もいない。
「リゼ。薬草を取ってきて」
悪魔と契約をして約5年。私は魔女としてこの家に住み続けている。
使い魔の黒猫、リゼは外の暑さにばてて椅子の上で寝ていた。
「外は暑いから出たくない、自分でとってきてよローレイ」
私だってこんな蒸し暑い外でわざわざ薬草を取りに行くのは面倒だ。使い魔は使い魔でもとくに役にたたないただの黒猫である。
ただ今日は曇っていて、本当に蒸し暑い。雨が降りそうな黒い雲が南の空に広がっている。
「これから雨が降りそうだね……また雨漏りで家の中が水浸しになる前に底が深いお皿やグラスを置いて防がないと…」
この家は両親が建てた小さな家だ。屋根の木が雨にさらされ腐って、雨漏りが日に日に酷くなってきている。
リゼは椅子の上で伸びをしてから大きな欠伸をした。
「僕は雨漏りの音が好きだからもっともっと雨降って欲しいけどなぁ」
「嫌よ、家の中がむしむしするじゃない」
リゼはムッとした表情を見せると尻尾をばたつかせ、椅子から降りたった。そして窓辺に飛び移ると外を見て目を細めた。
「今日は遠くの方で人の気配がする。もしかしたら、この家に来るかもしれないよ」
リゼはそう言うとローレイの方を見た。
「魔女だっていうことがバレないようにしないと」
「ひ、人が来るの………?本当に?」
引きこもりのローレイは町で薬を売る以外人との面識が全くもってない箱入り娘である。人と喋るとなると緊張して焦って口が滑り魔女だということがバレてしまわないだろうかとか、もし薬を買いにきたのが貴族の人で逆鱗に触れてしまわないだろうかとか、そういう不安が積み重なり挙動不審になってしまう。
「足音が聞こえてきた。気をつけてね」
リゼはそういうと窓辺に丸まって寝てしまった。すると外から雨が降る音が聞こえてくる。
「大変!もう雨が降ってきてる」
ローレイは急いでお皿やグラスをあちこちに置くと雨漏りを防ぐ。ぽつんぽつんと色々な音が聞こえてきて家の中が一瞬にして騒がしくなった。
「この家もそろそろ建て直さないとダメかしら…」
雨漏りの数が尋常じゃない。そんなことを思いながら窓の外を見てみると視界に動くものがうつる。ローレイは急いで羽織るものを手に取り羽織ると訪ねてくる人の気配に身構えた。
数分するとドアを叩く音が聞こえる。
「誰かいませんか!雨が降ってきてしまい数分だけでいいので雨風をしのぎたいのですが……!」
そう叫ぶ男の声が聞こえてきた。
ローレイはリゼの方に目線を向けるとリゼは寝たままこちらを見てくれない。
ドアの方へと歩くとドアノブに手をかけ、少しの間戸惑う。
しょうがない……。
いつまでも踏みとどまっていてはダメだと思い、意を決してドアノブに手をかけ、そして開ける。
「いかがなさいましたか」
ドアを開けるとそこには大きな荷物を抱えた男が立っていた。雨で濡れてしまった髪はぺったりと顔に張り付いていて服も濡れていた。男はローレイを見るなり口を開いてこう言った。
「あぁ…!よかった、人がいた!私は旅の者だ。雨が止むまで雨宿りをさせていただけないだろうか…」
旅人はとても困った顔をしてローレイに頼み込んできた。流石にこの雨の中追い返すこともできないローレイは仕方なく旅人を家の中に入れた。
「少し雨漏りが酷い家ですが、雨が止むまでならどうぞ、そこの椅子に座ってくつろいでいてください」
旅人は安心した顔をするとローレイに握手を求めてきたが、ローレイはその手を拒み家の奥へといく。旅人は乾燥した薬草があちらこちらにぶら下がっているのを物珍しげに見ながら窓辺で丸まっているリゼの方を見た。
「黒猫を飼っていらっしゃるんですね」
「黒猫………、そう、黒猫です」
普通の人から見ればただの黒猫が丸まって寝ているようにみえるのは当たり前か。ローレイからしてみれば人型にだって化ける黒猫という定着が強すぎて最初黒猫を飼っているのかと聞かれて少し戸惑った。猫ではなく使い魔であるがそれはもちろん言わない。
「それにしても何故こんな山奥に住んでいるんだ?それに……君は1人だろう?」
「…………………」
絶対聞かれると思っていた質問をそのまま言われたので、ローレイは少しだけ笑ってしまった。旅人はローレイが何故いきなり笑ったのか疑問な表情を浮かべ眉間に皺を寄せてこちらを見ていた。
ローレイは棚から茶葉が入った瓶を取るとティーポットに茶葉を入れる。沸騰したお湯を注いで茶葉の匂いを楽しんだのちティーカップに注いで旅人の前に置いた。
そしてローレイも椅子に座ると何故山奥に住んでいるのか、でっち上げの理由で答える。
「自然に囲まれたところで暮らしたいっていうのと、1人が好きなものでして…」
旅人はどこか納得した表情を見せると窓の外を眺めた。ローレイも窓の外をみると雨が大きな水溜りを作り、降り続けている。
静かな時間が少しの間流れた。
「お願いがあるのだが……」
沈黙を破ったのは旅人だ。急にそう切り出すと旅人は奥の調剤室を指差してこう言ってきた。
「先程雨が降ってきた時焦って足を挫いてしまったんだ。痛目止めなどないだろうか……金は払う」
図々しいな。
ローレイはまだ薬を売っているなど一言も言っていない。きっと家の内装を見て薬があると思ったからそう言ったのだろう。ローレイは仕方なく立ち上がると旅人に背を向けて奥の調剤室へと足を運ぶ。
「痛め止めは………」
いくつもある小さな棚を開けたり閉じたりして痛め止めを探す。
「あった」
ローレイは痛目止めを手に旅人の元へ戻ろうとして、振り向いたとき。
旅人がすぐ側に立っていた。
手には刃物を持っている。
ローレイは驚いて後ずさろうとしたが棚があり、小さい調剤室なため左右の逃げ場もなかった。
「魔女の娘が山奥に住んでいるという噂があるんだ」
旅人はそう言うとローレイに向かって刃物を向けた。そして続けてこう言う。
「俺は真相を確かめるために山奥へと入ってきたんだ、旅人なんかではない。魔女を殺すためにきたんだ」
ローレイはその事実に目を見開き驚く。目の前の恐怖に言葉も出てこないし何より足がすくんで動けない。
旅人が有無を言わさず刃物を振り下ろしたその時。
「ーーーーやめろ」
旅人とローレイの間に黒い靄が漂い、靄が晴れていくとそれは姿を表した。
黒く長い髪に青い瞳。今にも噛みちぎってしまいそうな鋭い八重歯と先の尖った長い爪。
「リゼっ‼︎‼︎」
使い魔の黒猫、人型のリゼが目の前に現れた。
男はリゼに驚き尻餅をついた。リゼは先の尖った長い爪で男の頬をゆっくりとひっかいていく。床に血が滴り落ち、男は恐怖と痛みを織り交ぜた恐ろしい顔をしている。
「これ以上ローレイを傷つけるな」
「ひっ‼︎」
男は立ち上がると叫び声を上げながら急いでドアの方へと走り、鍵を開けると雨の中外へと逃げ出してしまった。
あまりの一瞬の出来事に呆然としているとリゼがこちらを向いて安否を確認してくる。
「大丈夫?」
「う、うん、ありがとうリゼ。それよりも、逃しちゃって大丈夫なの………?」
山奥に魔女がいるということが村のみんなに広まってしまったらどうしようかとローレイは不安になった。
リゼは青く鋭くひかる瞳を細めるとこういった。
「これからは僕がちゃんと家の周りを見張ってるから安心してよ。それと……」
リゼはそう言うとドアの方を見た。
「また小さなお客様が来てるよ」
「えっ?」
ローレイはリゼの目線の先を追うと家の入り口に背の低い子供がずぶ濡れになって立っているのを見つける。ローレイよりも3、4個年下のようにみえる少年はローレイとリゼのことを交互に見つめると口を開いてこう言った。
「お前が山奥に住む娘か!」
唐突の2回目の訪問と問いかけに戸惑っていると少年はむっとした顔をしてローレイへと詰め寄る。
「俺はリスラだ、オレの雇い主が魔女裁判にかけられた。俺も殺される前に逃げ出してきたんだ」
リスラは使い魔のリゼを一瞥した後、ローレイに向かって言う。
「幼い頃、困った時は山奥に住んでいる娘のところへと逃げろと誰かに言われたのを思い出したんだ。もしかしてお前か?」
生意気そうなリスラはそう説明した。
ローレイは誰にそんなことを言われたのか気になった。もし、ローレイの今は亡き両親から聞いたのだとしたらローレイはこのリスラという少年を救ってやりたいと、少し違えど同じ境遇のリスラを匿ってあげることぐらいはできるはずだ。
「ええ、そうよ。私の両親も魔女裁判にかけられて死んでしまったの。リスラと一緒よ」
「ふーん、お前も………というかさっきおっさんが叫びながら走り去って行ったけど何があったんだ?それに、横にいる人って……」
どうやら先程の偽旅人の男とすれ違ったらしい。
横にいる人と言われてローレイはリゼの方を見る。リゼは今人型に化けているため鋭い爪も青く輝く瞳もリスラにとっては驚きなのだろう。物珍しげに見ている、というよりかは何かを察したような表情をしていた。
「お、お前……もしかして魔女なのか?」
この少年もさっきの偽旅人とおなじで魔女を殺そうとしたり、恐ろしくて逃げ惑う1人なのだろうか。ローレイは少し疑いの眼差しをリスラに向けているとリスラから衝撃的な一言が発せられる。
「もし魔女なら俺を魔女の弟子として雇ってくれよ」
「はい?」
ローレイよりも身長が低いくせに得意げな表情を見せて「どうだ」と言っている。
リゼが横で笑っているのを横目で見ながらローレイはため息をついた。
「そもそも魔女っていうのは……」
魔女というのは悪魔と契約して成り立つ者。幼い頃果実をくれたあの悪魔はあの後いっさいローレイの前に現れていない。1匹の黒猫を側に置いてどこかへと行ってしまった。その黒猫がリゼである。
魔女の弟子など、そんなものなど存在しない。
「…………魔女の弟子になりたいのなら悪魔とでも契約してから言うことね!」
「契約?絶対嫌だね!」
餓鬼だから、何を言っても無駄らしい。契約が嫌ならなぜこの餓鬼は弟子入りしてほしいなんてほざいているのか……。
「魔女の弟子じゃなくて薬剤師としての弟子でいいじゃない、魔女になっていいことなんて一つもないんだから!」
「それを魔女になったお前が言うのか?」
鋭い意見にローレイは「確かに」となったが、それでもリスラが男で言う魔法使いになって欲しくはなかった。
「とりあえず薬剤師の弟子としてこの家に住まわせてあげてもいいわよ。そのかわりちゃんと働いてもらうからね」
リスラはしばらくの間沈黙していると、唐突にローレイのことを見てこう言った。
「殺されなければなんだってするよ…」
その言葉はどこか恐怖も織り交ぜられているような気がした。きっとリスラは目の前で残酷な死刑執行の様子を目の当たりにしたのだろう。人々が魔女に向かって微笑みかけてるいる笑顔は実は魔女が死ぬことに対しての喜びだったりするということを。
「大丈夫、リスラは人間だから」
慰めの一つや二つになってほしいという願いを込めて、ローレイはこの幼い少年に言う。とりあえず、ずぶ濡れのままではいけないので布と温かいお湯を持ってくる準備をする。
その間リスラには椅子に座ってもらっていた。リゼはというと猫の姿に戻って机の上で寝ている。
「お前、使い魔なんだろ、しゃべれるんだよな?なんであいつとなんかと一緒にいるんだ?」
リゼはリスラの質問に驚きそして少しだけ微笑むと本当のことを言った。
「僕はローレイとずっと一緒に生きてきている。ローレイの使い魔になる時、最初はこの幼な子を育てて立派に肉がついたら食べてやろうと思ってた。けれどだんだんと無邪気にはしゃぐ姿が可愛く見えてきちゃってね」
そう言うとリゼはリスラの肩に飛び乗り尻尾をゆらゆらと揺らす。
幼い子供の皮膚を剥ぎ取って、薬を作る材料につかったり、そのまま足を食べたり、悪魔としての思考をリゼはちゃんと持ち合わせていた。けれど徐々にローレイに愛着が湧いてきてしまう。親が子供の成長を見守るかのように。
ローレイにとってリゼという使い魔は両親の代わりのような存在だった。
「使い魔の僕にはあの子がとても可愛く見えてしまうんだよ、我が子みたいにね」
「ふーーん」
リゼとリスラが話しているのをローレイはききながら、リスラに紅茶をつくってあげていた。体があたたまるハーブティーをつくりリスラの前にティーカップを置いた。
その出来た紅茶をリスラはすすると香りで落ち着いたのか今までに何があったのかポツポツと話し始めた。
リスラは両親に捨てられ、奴隷として雇われ働いていたが雇い主が魔女裁判にかけられてしまったらしい。逃げてくるのが正解だ。きっとそのまま逃げないでいたら殺されていた。
なんとかしてやれないかとローレイは思い、魔女として弟子を育てるというよりは薬剤師としての弟子としてリスラを育てようと思った。この幼い少年が魔女狩りにあい死刑執行と言われ死刑にされるのは絶対に嫌だ。
ローレイはハーブティーを一口飲むとリスラを見た。
「薬剤師見習いリスラ、これでどう?」
ローレイはリスラに手を差し伸べると握手をする。リスラは少し戸惑っていたがローレイの目を見ると少しだけ苦笑した。
「これからはこの家の薬剤師の弟子としてよろしく頼むわ」
「いいのか?」
「ええ」
そしてローレイはリスラを薬剤師見習いとしてこの家に留まることを許可した。
いつ間の間にか雨はあがっていた。雨が降り、洗い立ての自然は夏風に揺られて草木についている雨粒を輝かせて動いている。
そして黒猫が一声「にゃあ」と鳴いた。
人里離れた小さな家に2人の子供が住んでいました。けれど皆口々にしてこういうのです。
「あの家に近づいたら殺される」
魔女がすんでいると村では噂が流れているが決して村人達は近づこうとはしなかった。
近づくといつの間にか足元には黒猫がいるから。
黒猫の名前はリゼ。
ローレイの使い魔である。
多くの魔女が森や山で開かれるサバトに出席してしている。
悪魔と契約している。魔女狩り。背教者。
そんな言葉が私の両親を傷つけ、死へと陥れた。
人里離れた山奥にひっそりと暮らす若い娘ローレイ。ローレイは山で採れた薬草を使って薬を作ってはそれを町で売り、生計をたてていた。まだ若い娘ローレイには両親がいない。そもそもこんな人目をさけた山奥になど住んではいなかった。
まだローレイが今よりも幼い頃、町に住んでいた。その頃魔女という存在が人々を怖がらせていた。
魔女は悪魔と契約し、人々の弱いところに漬け込んでは皮膚を剥がされたり血を抜かれたり、それらを薬の材料にしたり、魔女にとっていいように利用されて、殺される。とても恐ろしい存在であった。魔女を恐れた貴族達は次々に魔女を魔女裁判にかけては殺していた。魔女と疑われたら人生の最後、村人達は次々と死刑になっていった。
周りの人々が死刑になって死んでいくのを恐れたローレイの両親は人里離れた山奥に家を建てた。それが今ローレイが住んでいる家である。
けれど家を建てて終わりではない。
あまりにも山奥すぎて生活がとても不便であった。両親はお金を稼ぐために被害が少ない村へ、ローレイは山奥の家へ、別々に暮らすことになる。けれどローレイはまだ幼いため、両親はローレイの様子を見に山奥へと頻繁に通っていた。けれどその行動が村人の間で「サバトに出席している」「悪魔と契約している魔女と魔法使い」などありもしない噂が広まり、やがてローレイの両親は魔女裁判にかけられ焚刑となって死んでしまう。
もちろん山奥に住んでいるローレイの元には両親が帰ってこない。そんな日々はずっと続き、食糧も水もなくなり、餓死寸前のローレイの前に1人の人間が現れた。
「この果実を食べれば貴方は生きられる」
その言葉は飢餓状態のローレイには神の囁きのように聞こえた。けれど実際それは悪魔の囁きである。
幼いローレイは人間の姿に化けた悪魔から果実をもらい命拾いをする。こうしてローレイは普通の娘ではなく魔女になった。果実を食べることによって悪魔と契約をしてしまったのだ。両親が殺されてしまった理由の一つ「魔女」に自らなってしまうことに引け目を感じていなかったのは餓死寸前のローレイに考える程体力がなかったと思われる。
現在ローレイは人里離れた山奥にすんでいる。その家に訪れたことのある者は誰もいない。
「リゼ。薬草を取ってきて」
悪魔と契約をして約5年。私は魔女としてこの家に住み続けている。
使い魔の黒猫、リゼは外の暑さにばてて椅子の上で寝ていた。
「外は暑いから出たくない、自分でとってきてよローレイ」
私だってこんな蒸し暑い外でわざわざ薬草を取りに行くのは面倒だ。使い魔は使い魔でもとくに役にたたないただの黒猫である。
ただ今日は曇っていて、本当に蒸し暑い。雨が降りそうな黒い雲が南の空に広がっている。
「これから雨が降りそうだね……また雨漏りで家の中が水浸しになる前に底が深いお皿やグラスを置いて防がないと…」
この家は両親が建てた小さな家だ。屋根の木が雨にさらされ腐って、雨漏りが日に日に酷くなってきている。
リゼは椅子の上で伸びをしてから大きな欠伸をした。
「僕は雨漏りの音が好きだからもっともっと雨降って欲しいけどなぁ」
「嫌よ、家の中がむしむしするじゃない」
リゼはムッとした表情を見せると尻尾をばたつかせ、椅子から降りたった。そして窓辺に飛び移ると外を見て目を細めた。
「今日は遠くの方で人の気配がする。もしかしたら、この家に来るかもしれないよ」
リゼはそう言うとローレイの方を見た。
「魔女だっていうことがバレないようにしないと」
「ひ、人が来るの………?本当に?」
引きこもりのローレイは町で薬を売る以外人との面識が全くもってない箱入り娘である。人と喋るとなると緊張して焦って口が滑り魔女だということがバレてしまわないだろうかとか、もし薬を買いにきたのが貴族の人で逆鱗に触れてしまわないだろうかとか、そういう不安が積み重なり挙動不審になってしまう。
「足音が聞こえてきた。気をつけてね」
リゼはそういうと窓辺に丸まって寝てしまった。すると外から雨が降る音が聞こえてくる。
「大変!もう雨が降ってきてる」
ローレイは急いでお皿やグラスをあちこちに置くと雨漏りを防ぐ。ぽつんぽつんと色々な音が聞こえてきて家の中が一瞬にして騒がしくなった。
「この家もそろそろ建て直さないとダメかしら…」
雨漏りの数が尋常じゃない。そんなことを思いながら窓の外を見てみると視界に動くものがうつる。ローレイは急いで羽織るものを手に取り羽織ると訪ねてくる人の気配に身構えた。
数分するとドアを叩く音が聞こえる。
「誰かいませんか!雨が降ってきてしまい数分だけでいいので雨風をしのぎたいのですが……!」
そう叫ぶ男の声が聞こえてきた。
ローレイはリゼの方に目線を向けるとリゼは寝たままこちらを見てくれない。
ドアの方へと歩くとドアノブに手をかけ、少しの間戸惑う。
しょうがない……。
いつまでも踏みとどまっていてはダメだと思い、意を決してドアノブに手をかけ、そして開ける。
「いかがなさいましたか」
ドアを開けるとそこには大きな荷物を抱えた男が立っていた。雨で濡れてしまった髪はぺったりと顔に張り付いていて服も濡れていた。男はローレイを見るなり口を開いてこう言った。
「あぁ…!よかった、人がいた!私は旅の者だ。雨が止むまで雨宿りをさせていただけないだろうか…」
旅人はとても困った顔をしてローレイに頼み込んできた。流石にこの雨の中追い返すこともできないローレイは仕方なく旅人を家の中に入れた。
「少し雨漏りが酷い家ですが、雨が止むまでならどうぞ、そこの椅子に座ってくつろいでいてください」
旅人は安心した顔をするとローレイに握手を求めてきたが、ローレイはその手を拒み家の奥へといく。旅人は乾燥した薬草があちらこちらにぶら下がっているのを物珍しげに見ながら窓辺で丸まっているリゼの方を見た。
「黒猫を飼っていらっしゃるんですね」
「黒猫………、そう、黒猫です」
普通の人から見ればただの黒猫が丸まって寝ているようにみえるのは当たり前か。ローレイからしてみれば人型にだって化ける黒猫という定着が強すぎて最初黒猫を飼っているのかと聞かれて少し戸惑った。猫ではなく使い魔であるがそれはもちろん言わない。
「それにしても何故こんな山奥に住んでいるんだ?それに……君は1人だろう?」
「…………………」
絶対聞かれると思っていた質問をそのまま言われたので、ローレイは少しだけ笑ってしまった。旅人はローレイが何故いきなり笑ったのか疑問な表情を浮かべ眉間に皺を寄せてこちらを見ていた。
ローレイは棚から茶葉が入った瓶を取るとティーポットに茶葉を入れる。沸騰したお湯を注いで茶葉の匂いを楽しんだのちティーカップに注いで旅人の前に置いた。
そしてローレイも椅子に座ると何故山奥に住んでいるのか、でっち上げの理由で答える。
「自然に囲まれたところで暮らしたいっていうのと、1人が好きなものでして…」
旅人はどこか納得した表情を見せると窓の外を眺めた。ローレイも窓の外をみると雨が大きな水溜りを作り、降り続けている。
静かな時間が少しの間流れた。
「お願いがあるのだが……」
沈黙を破ったのは旅人だ。急にそう切り出すと旅人は奥の調剤室を指差してこう言ってきた。
「先程雨が降ってきた時焦って足を挫いてしまったんだ。痛目止めなどないだろうか……金は払う」
図々しいな。
ローレイはまだ薬を売っているなど一言も言っていない。きっと家の内装を見て薬があると思ったからそう言ったのだろう。ローレイは仕方なく立ち上がると旅人に背を向けて奥の調剤室へと足を運ぶ。
「痛め止めは………」
いくつもある小さな棚を開けたり閉じたりして痛め止めを探す。
「あった」
ローレイは痛目止めを手に旅人の元へ戻ろうとして、振り向いたとき。
旅人がすぐ側に立っていた。
手には刃物を持っている。
ローレイは驚いて後ずさろうとしたが棚があり、小さい調剤室なため左右の逃げ場もなかった。
「魔女の娘が山奥に住んでいるという噂があるんだ」
旅人はそう言うとローレイに向かって刃物を向けた。そして続けてこう言う。
「俺は真相を確かめるために山奥へと入ってきたんだ、旅人なんかではない。魔女を殺すためにきたんだ」
ローレイはその事実に目を見開き驚く。目の前の恐怖に言葉も出てこないし何より足がすくんで動けない。
旅人が有無を言わさず刃物を振り下ろしたその時。
「ーーーーやめろ」
旅人とローレイの間に黒い靄が漂い、靄が晴れていくとそれは姿を表した。
黒く長い髪に青い瞳。今にも噛みちぎってしまいそうな鋭い八重歯と先の尖った長い爪。
「リゼっ‼︎‼︎」
使い魔の黒猫、人型のリゼが目の前に現れた。
男はリゼに驚き尻餅をついた。リゼは先の尖った長い爪で男の頬をゆっくりとひっかいていく。床に血が滴り落ち、男は恐怖と痛みを織り交ぜた恐ろしい顔をしている。
「これ以上ローレイを傷つけるな」
「ひっ‼︎」
男は立ち上がると叫び声を上げながら急いでドアの方へと走り、鍵を開けると雨の中外へと逃げ出してしまった。
あまりの一瞬の出来事に呆然としているとリゼがこちらを向いて安否を確認してくる。
「大丈夫?」
「う、うん、ありがとうリゼ。それよりも、逃しちゃって大丈夫なの………?」
山奥に魔女がいるということが村のみんなに広まってしまったらどうしようかとローレイは不安になった。
リゼは青く鋭くひかる瞳を細めるとこういった。
「これからは僕がちゃんと家の周りを見張ってるから安心してよ。それと……」
リゼはそう言うとドアの方を見た。
「また小さなお客様が来てるよ」
「えっ?」
ローレイはリゼの目線の先を追うと家の入り口に背の低い子供がずぶ濡れになって立っているのを見つける。ローレイよりも3、4個年下のようにみえる少年はローレイとリゼのことを交互に見つめると口を開いてこう言った。
「お前が山奥に住む娘か!」
唐突の2回目の訪問と問いかけに戸惑っていると少年はむっとした顔をしてローレイへと詰め寄る。
「俺はリスラだ、オレの雇い主が魔女裁判にかけられた。俺も殺される前に逃げ出してきたんだ」
リスラは使い魔のリゼを一瞥した後、ローレイに向かって言う。
「幼い頃、困った時は山奥に住んでいる娘のところへと逃げろと誰かに言われたのを思い出したんだ。もしかしてお前か?」
生意気そうなリスラはそう説明した。
ローレイは誰にそんなことを言われたのか気になった。もし、ローレイの今は亡き両親から聞いたのだとしたらローレイはこのリスラという少年を救ってやりたいと、少し違えど同じ境遇のリスラを匿ってあげることぐらいはできるはずだ。
「ええ、そうよ。私の両親も魔女裁判にかけられて死んでしまったの。リスラと一緒よ」
「ふーん、お前も………というかさっきおっさんが叫びながら走り去って行ったけど何があったんだ?それに、横にいる人って……」
どうやら先程の偽旅人の男とすれ違ったらしい。
横にいる人と言われてローレイはリゼの方を見る。リゼは今人型に化けているため鋭い爪も青く輝く瞳もリスラにとっては驚きなのだろう。物珍しげに見ている、というよりかは何かを察したような表情をしていた。
「お、お前……もしかして魔女なのか?」
この少年もさっきの偽旅人とおなじで魔女を殺そうとしたり、恐ろしくて逃げ惑う1人なのだろうか。ローレイは少し疑いの眼差しをリスラに向けているとリスラから衝撃的な一言が発せられる。
「もし魔女なら俺を魔女の弟子として雇ってくれよ」
「はい?」
ローレイよりも身長が低いくせに得意げな表情を見せて「どうだ」と言っている。
リゼが横で笑っているのを横目で見ながらローレイはため息をついた。
「そもそも魔女っていうのは……」
魔女というのは悪魔と契約して成り立つ者。幼い頃果実をくれたあの悪魔はあの後いっさいローレイの前に現れていない。1匹の黒猫を側に置いてどこかへと行ってしまった。その黒猫がリゼである。
魔女の弟子など、そんなものなど存在しない。
「…………魔女の弟子になりたいのなら悪魔とでも契約してから言うことね!」
「契約?絶対嫌だね!」
餓鬼だから、何を言っても無駄らしい。契約が嫌ならなぜこの餓鬼は弟子入りしてほしいなんてほざいているのか……。
「魔女の弟子じゃなくて薬剤師としての弟子でいいじゃない、魔女になっていいことなんて一つもないんだから!」
「それを魔女になったお前が言うのか?」
鋭い意見にローレイは「確かに」となったが、それでもリスラが男で言う魔法使いになって欲しくはなかった。
「とりあえず薬剤師の弟子としてこの家に住まわせてあげてもいいわよ。そのかわりちゃんと働いてもらうからね」
リスラはしばらくの間沈黙していると、唐突にローレイのことを見てこう言った。
「殺されなければなんだってするよ…」
その言葉はどこか恐怖も織り交ぜられているような気がした。きっとリスラは目の前で残酷な死刑執行の様子を目の当たりにしたのだろう。人々が魔女に向かって微笑みかけてるいる笑顔は実は魔女が死ぬことに対しての喜びだったりするということを。
「大丈夫、リスラは人間だから」
慰めの一つや二つになってほしいという願いを込めて、ローレイはこの幼い少年に言う。とりあえず、ずぶ濡れのままではいけないので布と温かいお湯を持ってくる準備をする。
その間リスラには椅子に座ってもらっていた。リゼはというと猫の姿に戻って机の上で寝ている。
「お前、使い魔なんだろ、しゃべれるんだよな?なんであいつとなんかと一緒にいるんだ?」
リゼはリスラの質問に驚きそして少しだけ微笑むと本当のことを言った。
「僕はローレイとずっと一緒に生きてきている。ローレイの使い魔になる時、最初はこの幼な子を育てて立派に肉がついたら食べてやろうと思ってた。けれどだんだんと無邪気にはしゃぐ姿が可愛く見えてきちゃってね」
そう言うとリゼはリスラの肩に飛び乗り尻尾をゆらゆらと揺らす。
幼い子供の皮膚を剥ぎ取って、薬を作る材料につかったり、そのまま足を食べたり、悪魔としての思考をリゼはちゃんと持ち合わせていた。けれど徐々にローレイに愛着が湧いてきてしまう。親が子供の成長を見守るかのように。
ローレイにとってリゼという使い魔は両親の代わりのような存在だった。
「使い魔の僕にはあの子がとても可愛く見えてしまうんだよ、我が子みたいにね」
「ふーーん」
リゼとリスラが話しているのをローレイはききながら、リスラに紅茶をつくってあげていた。体があたたまるハーブティーをつくりリスラの前にティーカップを置いた。
その出来た紅茶をリスラはすすると香りで落ち着いたのか今までに何があったのかポツポツと話し始めた。
リスラは両親に捨てられ、奴隷として雇われ働いていたが雇い主が魔女裁判にかけられてしまったらしい。逃げてくるのが正解だ。きっとそのまま逃げないでいたら殺されていた。
なんとかしてやれないかとローレイは思い、魔女として弟子を育てるというよりは薬剤師としての弟子としてリスラを育てようと思った。この幼い少年が魔女狩りにあい死刑執行と言われ死刑にされるのは絶対に嫌だ。
ローレイはハーブティーを一口飲むとリスラを見た。
「薬剤師見習いリスラ、これでどう?」
ローレイはリスラに手を差し伸べると握手をする。リスラは少し戸惑っていたがローレイの目を見ると少しだけ苦笑した。
「これからはこの家の薬剤師の弟子としてよろしく頼むわ」
「いいのか?」
「ええ」
そしてローレイはリスラを薬剤師見習いとしてこの家に留まることを許可した。
いつ間の間にか雨はあがっていた。雨が降り、洗い立ての自然は夏風に揺られて草木についている雨粒を輝かせて動いている。
そして黒猫が一声「にゃあ」と鳴いた。
人里離れた小さな家に2人の子供が住んでいました。けれど皆口々にしてこういうのです。
「あの家に近づいたら殺される」
魔女がすんでいると村では噂が流れているが決して村人達は近づこうとはしなかった。
近づくといつの間にか足元には黒猫がいるから。
黒猫の名前はリゼ。
ローレイの使い魔である。
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