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崩壊塔
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いよいよ塔に近づき塔によってさえぎられた日の光の陰に入る。間近にユウトは見上げるとその巨大さに圧倒され押しつぶされそうな感覚がした。
ようやく見えてきた塔の裾野と地面との接点は川のような溝で縁取られている。道の先には石橋が架かり多くの荷馬車が行き来する。ユウト達もその橋を渡り、ようやく塔の内部へと入っていった。
塔の入口は大きな高い壁と広いアーチを描きその形のままへと真っすぐ伸びている。ある程度進むと壁は切れていくつもの太い柱が規則的に並ぶ空間が現れた。そのスペースにもまとめられた何かの荷物が整理されて積み上げられている。照明の魔術灯の明かりが奥まで隅々照らし走る荷馬車のひづめの音が反響していた。
ユウトすれ違う巨大な円形の柱に手のひらで触る。その感触は大理石のように冷たく滑らかだったがユウトは違和感を覚え、それに気づく。切れ間がない。大石橋や街道の切られた石材を積み上げたのではなく、まるで一塊の岩盤をくりぬいたような一枚の面だった。ユウトにはまるでどうやって作られたのか想像もできない。
天井にはかろうじて明かりが届くも薄暗い。どこか野営地を築いていた森をユウトは思い出していた。
アーケードのような通路の先には魔術灯とは違った明かりであふれている。近づくにつれ見えてきたのは広い空間だった。外観ではわからなかった塔の中央は吹き抜けになっており、中央のくぼみから内側の壁へのつながりは滑らかな曲面で球形の空間が広がっていた。
くぼみには水がたまりその中央には石材を組み合わせてかさ上げされた台がユウトの立っている地面と平行になるまで築かれ橋が架かっている。それはあとから作ったものなのだろうとユウトは想像した。
一部の狂いも生じさせない正確な巨大造形は突き放すような冷たさをもって一種の気持ち悪さ、恐怖感をユウトに与える。
しかしユウトから見た正面の壁には均整の取れた塔のバランスを根底から打ち崩すような痛々しい傷跡が刻まれていた。塔の屋上から地上まで抉り取られるように何も無い。せきが切られたように崩れた先には新緑の草原と塔の残骸と思しき大小さまざまな石が散乱しているのが見えた。
そこからユウトは天井を見上げる。切れた広大な円形のシルエットの先に空が覗き、その縁には滑車のような建造物とそこから糸のようなものがピンと張って地上に伸びている。その糸に沿って物が下ろされていたり人が乗った板が上下していた。
「工房長は屋上です。私たちも昇降機に乗って向かいます」
ヨーレンはユウトにそう話しかけ搭乗口のような場所を指さす。
「あれで上まで行くのか・・・」
球面にせり出した屋上から垂れ下がった昇降機は糸のように見えたロープでつるされ頼るものがない。ユウトは一抹の不安を抱えながら皆といくつもある昇降機のうちの一つの搭乗口に向かった。
向かう途中ちょうど昇降機が降りてくる。近くで見る昇降機は最初に持った印象を圧倒するほど大きい。ユウト達と他数人が乗り込み昇降機は上がり始めた。風はないため揺れはあまりなく最初に持っていた不安は杞憂だったかとユウトは安心する。それでもどんどん遠くなっていく地上と高さを増す視点、ロープだけでつるされたゆっくり揺れる台はどこか心細く平気そうな他の乗員や一人楽しそうに手すりから景色を眺めるレナのようにはなれなかった。
そしてようやく昇降機は止まる。乗り降りするための降り口が設置されておりそこから塔の屋上にユウトは降り立った。
緊張も解けようやく周りを観察する余裕が生まれたユウトはその景色に圧倒される。目に映るものは円形の塔の地平線と一面の空だけだった。そこから視点を下ろすと輪切りにした塔の断面が写る。思っていた以上に人の数が多いことにユウトは驚いた。一瞬ユウトは大人数でこの塔を作っているのかと思ったがそうではないことに気づく。そのほとんどの人が塔の壁や柱を切り出し、さながら丁寧に解体しているようだった。
歩きだしたヨーレンについてきながらユウトは尋ねる。
「なぁヨーレン。この人たちは塔を解体しているのか?」
「そうだよ。正確には採石が正しいかもしれない」
「採石?石を取っているのか」
ユウトがよく観察すると確かに切り出された壁や柱は丁寧に扱われ運ばれている。
「この崩壊塔の建築材は魔石の含有量がとにかく高いんだ。魔石は魔術具の生産に欠かせない最重要な鉱物でね、採掘するより塔から取り出す方がずっと効率がいいんだよ。つい二、三十年前に塔の建材から魔石を精錬する方法がわかったんだ」
「ん?ならこの崩壊塔ってどうやって作ったかわからないのか?」
「その通りだよ。今はもうないはるか古代の技術で作られいつ、だれが、何のために作ったのかもわからないしあの大穴がどうやって開けられたのかもわからない。ただわかっているのは古代の技術は今の我々には遠く及ばないほど高度だったってことぐらいだね。まぁ知ってる人はいるんだけど」
ヨーレンは言葉の最後を独り言のように自嘲しながら小声でつぶやいたのをユウトは聞き逃さなかったがそれ以上は話を掘り下げなかった。
ようやく見えてきた塔の裾野と地面との接点は川のような溝で縁取られている。道の先には石橋が架かり多くの荷馬車が行き来する。ユウト達もその橋を渡り、ようやく塔の内部へと入っていった。
塔の入口は大きな高い壁と広いアーチを描きその形のままへと真っすぐ伸びている。ある程度進むと壁は切れていくつもの太い柱が規則的に並ぶ空間が現れた。そのスペースにもまとめられた何かの荷物が整理されて積み上げられている。照明の魔術灯の明かりが奥まで隅々照らし走る荷馬車のひづめの音が反響していた。
ユウトすれ違う巨大な円形の柱に手のひらで触る。その感触は大理石のように冷たく滑らかだったがユウトは違和感を覚え、それに気づく。切れ間がない。大石橋や街道の切られた石材を積み上げたのではなく、まるで一塊の岩盤をくりぬいたような一枚の面だった。ユウトにはまるでどうやって作られたのか想像もできない。
天井にはかろうじて明かりが届くも薄暗い。どこか野営地を築いていた森をユウトは思い出していた。
アーケードのような通路の先には魔術灯とは違った明かりであふれている。近づくにつれ見えてきたのは広い空間だった。外観ではわからなかった塔の中央は吹き抜けになっており、中央のくぼみから内側の壁へのつながりは滑らかな曲面で球形の空間が広がっていた。
くぼみには水がたまりその中央には石材を組み合わせてかさ上げされた台がユウトの立っている地面と平行になるまで築かれ橋が架かっている。それはあとから作ったものなのだろうとユウトは想像した。
一部の狂いも生じさせない正確な巨大造形は突き放すような冷たさをもって一種の気持ち悪さ、恐怖感をユウトに与える。
しかしユウトから見た正面の壁には均整の取れた塔のバランスを根底から打ち崩すような痛々しい傷跡が刻まれていた。塔の屋上から地上まで抉り取られるように何も無い。せきが切られたように崩れた先には新緑の草原と塔の残骸と思しき大小さまざまな石が散乱しているのが見えた。
そこからユウトは天井を見上げる。切れた広大な円形のシルエットの先に空が覗き、その縁には滑車のような建造物とそこから糸のようなものがピンと張って地上に伸びている。その糸に沿って物が下ろされていたり人が乗った板が上下していた。
「工房長は屋上です。私たちも昇降機に乗って向かいます」
ヨーレンはユウトにそう話しかけ搭乗口のような場所を指さす。
「あれで上まで行くのか・・・」
球面にせり出した屋上から垂れ下がった昇降機は糸のように見えたロープでつるされ頼るものがない。ユウトは一抹の不安を抱えながら皆といくつもある昇降機のうちの一つの搭乗口に向かった。
向かう途中ちょうど昇降機が降りてくる。近くで見る昇降機は最初に持った印象を圧倒するほど大きい。ユウト達と他数人が乗り込み昇降機は上がり始めた。風はないため揺れはあまりなく最初に持っていた不安は杞憂だったかとユウトは安心する。それでもどんどん遠くなっていく地上と高さを増す視点、ロープだけでつるされたゆっくり揺れる台はどこか心細く平気そうな他の乗員や一人楽しそうに手すりから景色を眺めるレナのようにはなれなかった。
そしてようやく昇降機は止まる。乗り降りするための降り口が設置されておりそこから塔の屋上にユウトは降り立った。
緊張も解けようやく周りを観察する余裕が生まれたユウトはその景色に圧倒される。目に映るものは円形の塔の地平線と一面の空だけだった。そこから視点を下ろすと輪切りにした塔の断面が写る。思っていた以上に人の数が多いことにユウトは驚いた。一瞬ユウトは大人数でこの塔を作っているのかと思ったがそうではないことに気づく。そのほとんどの人が塔の壁や柱を切り出し、さながら丁寧に解体しているようだった。
歩きだしたヨーレンについてきながらユウトは尋ねる。
「なぁヨーレン。この人たちは塔を解体しているのか?」
「そうだよ。正確には採石が正しいかもしれない」
「採石?石を取っているのか」
ユウトがよく観察すると確かに切り出された壁や柱は丁寧に扱われ運ばれている。
「この崩壊塔の建築材は魔石の含有量がとにかく高いんだ。魔石は魔術具の生産に欠かせない最重要な鉱物でね、採掘するより塔から取り出す方がずっと効率がいいんだよ。つい二、三十年前に塔の建材から魔石を精錬する方法がわかったんだ」
「ん?ならこの崩壊塔ってどうやって作ったかわからないのか?」
「その通りだよ。今はもうないはるか古代の技術で作られいつ、だれが、何のために作ったのかもわからないしあの大穴がどうやって開けられたのかもわからない。ただわかっているのは古代の技術は今の我々には遠く及ばないほど高度だったってことぐらいだね。まぁ知ってる人はいるんだけど」
ヨーレンは言葉の最後を独り言のように自嘲しながら小声でつぶやいたのをユウトは聞き逃さなかったがそれ以上は話を掘り下げなかった。
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