ゴブリンロード

水鳥天

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徒歩

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 レナが加わりユウト達はバルのもとに集まる。

「準備はできた。案内を頼む」
「了解シタ」

 バルは答えるとふっと浮き上がる。ユウトには浮き上がると同時に何かの動作音が小さく聞こえ出すのを聞き取れった。

 そしてバルその場でくるっと半回転したのち街道に沿って大工房から離れていくように少しだけ前傾姿勢になり進みだす。歩く速度ほどで滑っていくように進むバルにユウト達一行もついていった。

 マレイや警備兵たちはその様子を見送り続ける。初老の兵士はマレイに言葉を掛けた。

「工房長はお戻りになられないのですか?」
「ああ、構わない。それほど時間はかからないだろう。
 それになんとも嫌な予感がある。ゴブリンの数が減っているのは確かだが全滅寸前の種族が最後のあがきに何をしでかすのか予想がつかない。あのユウトがその証拠だ。
 まぁ良くも悪くも白灰が関わる限りは交渉の場で流血沙汰になるようなことはないだろう。しかし奴との関りはのちのち時間がたってから不利益をこうむるからな」

 マレイは腕を組みながらうんざりといった様子で深いため息をつく。

「確かに随分我々も振り回されましたな」

 初老の兵士は自嘲気味に笑いながらマレイに返した。

「大事にならなければいいんだが」

 降り続く雨の中に消えていくユウト達の影をマレイは見つめ続けた。


 ユウト達は通行を留められていた荷馬車の列の横を通り過ぎさらに進む。ユウトは一度行った経験からある程度魔女の森とジヴァの家の位置を想定できるがどういった道筋で向かうのか想像もできなかった。するとバルはカーブを描いて街道から外れ魔女の森の方向へ進路を変更し始める。よく地面を見ると石畳ではないものの踏みしめられた道らしきものがあることが分かった。

 しばらく進むと木々のしげる森が見え始め、これが魔女の森であるということはユウトにはすぐ想像がつく。ユウトは歩く速度をヨーレンに合わせてこれまでの経緯を説明した。

「やはり師匠が関わっているか。それで森に向かっているんだね。今、通っている道が本来の魔女の森への道だよ。そんなに会いたい人じゃないと思うけど覚えておくといい」

 ヨーレンはすぐに状況を理解する。その後ユウトはガラルドやレナに目を配った。

 レナはどこか緊張しているように見える。魔槍を持つ手に力が入っていることがわかるが初めて会うジヴァに対しての緊張かもしれないとユウトは思った。ガラルドは一見いつもと変りない様子で力強く歩みを進めているように見える。しかしその背中からは殺気が漏れ出していることにユウトはすぐに気づく、その殺気は暗くて重い印象を受けた。

 取引を持ち掛けてきたロードという者についてバルはゴブリンを統べるものと説明している。それはつまりロード自身がゴブリンである可能性が高いとユウトは考えている。何か取引の交渉を行う前にガラルドが暴走しないかということに対してユウトは一抹の不安を覚えた。

 森の入口までやってくるとそこに荷馬車のようなものが止められている。ほろのかかった荷台は見慣れたものだったが車輪と馬の代わりに金属の構造物で覆われた様子は異質な雰囲気を漂わせていた。

 その見慣れないモノを横目に森へと入っていく。雨の森はとにかく薄暗く以前のあたたかで綺麗なイメージとは反対の印象をユウトに感じさせた。

 そこからしばらく進み続けようやく森は開け小高い丘に建つ屋敷が見える。見た目が違っているのはユウトの知っている反対方向から来たためだろうと予想した。より玄関らしい扉があることからこちらが正面であることがわかる。丘の斜面の入口に先に向かって湾曲した柱が一本立っておりその先端に掛けられた魔術灯の明かりが地面を照らしていた。

 バルは玄関に続く石材で敷き詰められた道を上り始めユウト達もそれに続いて坂を上り玄関扉の前へ到着する。

 すると玄関扉が到着の合図もなしに開かれる。その先にいたのは以前訪れた際に庭仕事をしていた動く人形たちが整列して待ち構えていた。

 人形たちは一斉に動き出す。準備されていた三脚が運び出されその場にいるユウト達一人ひとりを誘導し三脚の横に立たせると雨に濡れ切ったマントくいくいと引っ張った。ユウトはその行動の意味を察して慌ててマントのフードを取り留め具を外す。人形達は複数体でマントを取って持ち運び壁に掛けた。

 さらに誘導されながら人形達から徹底的に汚れをふき取られる。それはバルも例外でなく三体ほどの人形に取り囲まれ全身を布で雨水をふき取られていた。

 その際に身に着けていた武器なども一緒に取り上げられる。レナは初めて見る人形たちに驚いて魔槍を手渡すのに躊躇していたがヨーレンに説得されてしぶしぶ身に着けていた武器もろもろを人形たちに渡した。

 小奇麗になったユウト達は人形達に先導されて屋敷の中を進む。そしてとある扉の前で足を止めると扉はひとりでに開いた。

 その部屋は前回通されたものと同じだということがその内装からわかる。少し違っているのは用意されている椅子の数が多く、向かい合った一つの椅子にすでに座っている者がいるということだった。
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