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覚悟
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ロードの返答にヨーレンは黙って手で口元を抑えながらうつむいて視線を落とす。そんなヨーレンに変わってユウトが口を開いた。
「つまり、オレの役割はギルドと騎士団への交渉、または説得。そして少なくとも大魔獣への最後の一撃をオレ自身が加えること、で間違いはないな」
ユウトは冷静に落ち着いた口調でロードに確認をする。
「間違いない。我は大魔獣の誘導に専念しなければならない。すべて任せる」
「そうか、わかった」
二人ともあっさりとした確認と了承を行った。
その様子に考え込んでいたヨーレンは慌てて口をはさむ。
「いいのかい、ユウト。君が交渉をするということはゴブリンの代表として席に着くことになる。それではもうゴブリンの身体にされてしまった不幸な人ではいられなくなるということだよ」
「わかってるよ。ヨーレン」
冷静な口調はそのままにユウトは横に座るヨーレンの方に視線を向けた。
「オレはあの雨の広場でガラルドと正対したとき、覚悟を決めた」
焦りの表情を見せるヨーレンと裏腹に、語り続けるユウトはふっと笑顔を作って見せる。
「もう、オレにとって人なのか、ゴブリンなのかは関係なくなっているのかもしれない。ゴブリンを助ける、という選択をしたことによってこの先、不幸や理不尽な目にあうこともあると思う。すでに大魔獣との戦いに命を掛けないといけないしね。けど誰かの意志でなく、自分の意志で決めたことなら、もう誰かを恨んだりしなくていい。オレはオレに対して責任を持つことができるんだ。オレはそうありたい」
ユウトの穏やかな笑顔を前にヨーレンは何かを言おうとして黙った。
静寂に満たされた室内には外の庭から聞こえる子ども達のはしゃぎ声だけが響いている。ヨーレンは瞳を閉じて困ったように大きく鼻で一呼吸とった。
「意志はもう決まっているのか。なら私から言えることはないな」
「すまない、ヨーレン。腕のことといい、世話ばかりかけてしまっているな」
半ばあきれたような表情で語るヨーレンにユウトは思わず謝ってしまう。その言葉にヨーレンはフンっと息を漏らして口角を上げた。
「なら私は私の意思でユウトに協力するとしよう。師匠、構いませんよね」
ヨーレンは振り向いてジヴァに話しかける。
「ああ、構わんさ。せいぜい気を揉むといい」
ジヴァは目を細めながら薄い笑みで答えた。
悪意が覗くジヴァの表情をヨーレンは気にする様子もなくユウトに向き直る。その表情には力強さがあった。
「そういうわけだ、ユウト。私もできる限りの支援を行う」
「そ、そうか。助かるよヨーレン」
ヨーレンかそれまで現していた不安や憤りのような態度から一変したことにユウトは戸惑う。しかし、まずはこれからのことを決めることが先決であると気持ちを無理やり切り替えた。
「ロード、ひとまずオレはゴブリン殲滅ギルドと調査騎士団に話をしてみるよ。
時間は少ない。すぐに連絡手段を探さないと」
「ギルドには私から手紙を送ろう。ガラルド隊長のことも伝えなければならないし」
ユウトの発言にヨーレンが提案する。さらにロードも続いた。
「調査騎士団は大魔獣を追跡、観察していることがわかっている。大魔獣の進行方向から、もうすぐ大工房に危険が迫っていると別動隊が知らせにやってくるだろう」
「うん、わかった。話しが進展したらまた知らせにくるよ」
「その必要はない。ヴァルをつける」
「ヴァル?あの言付けに大工房の入口に来た魔物か」
ユウトは思いだしながらロードの意図が読み取れない。ヴァルをつけることで報告を省略できる理屈がわからなかった。
「ヴァルの見聞きしているものはヴァルの判断で我にも伝えることができる。我に連絡が取りたい時、ヴァルにそう伝えれば我に接続されるだろう。我の言葉はヴァルが代弁する形になるがな」
「すごい技術だな。一体あれは何なんだ?ヴァルからは魔力が感じられないし気配と言えば小さな音ぐらいだ。魔物とは思えない」
ユウトはそれまで抱いていたヴァルに対する疑問をロードに投げかける。
「ロードに答えさせるのは面倒だ。わしが答えてやろう。
あれは言うなれば古代の遺物だ。ロードが地中に眠っていたものを見つけ、わしがその起動法を教えた。魔物と違った古代ならではの技術概念で動いている。そしてひどく頑丈だよ。分解して調べようとはしないことだね。逆に怪我をするだろうさ」
ジヴァが間に割って入り、ヴァルについての情報を一通り語り切った。
「崩壊塔なんてものがあるくらいだ。あれくらいの機会が作れても不思議じゃないか。
ともかくわかったよ。ヴァルを同行させてもらうよ」
「ヴァルは外で待たせている。他に質問はあるか?」
「今はないかな。ではさっそく行動を起こすよ」
そう言ってユウトは立ち上がる。ヨーレンもユウトに続くように立ち上がった。
「ユウト。そしてヨーレン。くれぐれも頼んだ」
ロードは力なく寄りかかった椅子のひじ掛けから右手を持ち上げ差し出しす。ユウトはその意味をすぐに察すると歩み寄り、右手で握って小さく振って離した。
そしてマントを翻すと、その部屋の外につながる出口へと進む。ヨーレンはユウトの行動を不思議そうに見ていたがすぐにユウトの後を追った。
「つまり、オレの役割はギルドと騎士団への交渉、または説得。そして少なくとも大魔獣への最後の一撃をオレ自身が加えること、で間違いはないな」
ユウトは冷静に落ち着いた口調でロードに確認をする。
「間違いない。我は大魔獣の誘導に専念しなければならない。すべて任せる」
「そうか、わかった」
二人ともあっさりとした確認と了承を行った。
その様子に考え込んでいたヨーレンは慌てて口をはさむ。
「いいのかい、ユウト。君が交渉をするということはゴブリンの代表として席に着くことになる。それではもうゴブリンの身体にされてしまった不幸な人ではいられなくなるということだよ」
「わかってるよ。ヨーレン」
冷静な口調はそのままにユウトは横に座るヨーレンの方に視線を向けた。
「オレはあの雨の広場でガラルドと正対したとき、覚悟を決めた」
焦りの表情を見せるヨーレンと裏腹に、語り続けるユウトはふっと笑顔を作って見せる。
「もう、オレにとって人なのか、ゴブリンなのかは関係なくなっているのかもしれない。ゴブリンを助ける、という選択をしたことによってこの先、不幸や理不尽な目にあうこともあると思う。すでに大魔獣との戦いに命を掛けないといけないしね。けど誰かの意志でなく、自分の意志で決めたことなら、もう誰かを恨んだりしなくていい。オレはオレに対して責任を持つことができるんだ。オレはそうありたい」
ユウトの穏やかな笑顔を前にヨーレンは何かを言おうとして黙った。
静寂に満たされた室内には外の庭から聞こえる子ども達のはしゃぎ声だけが響いている。ヨーレンは瞳を閉じて困ったように大きく鼻で一呼吸とった。
「意志はもう決まっているのか。なら私から言えることはないな」
「すまない、ヨーレン。腕のことといい、世話ばかりかけてしまっているな」
半ばあきれたような表情で語るヨーレンにユウトは思わず謝ってしまう。その言葉にヨーレンはフンっと息を漏らして口角を上げた。
「なら私は私の意思でユウトに協力するとしよう。師匠、構いませんよね」
ヨーレンは振り向いてジヴァに話しかける。
「ああ、構わんさ。せいぜい気を揉むといい」
ジヴァは目を細めながら薄い笑みで答えた。
悪意が覗くジヴァの表情をヨーレンは気にする様子もなくユウトに向き直る。その表情には力強さがあった。
「そういうわけだ、ユウト。私もできる限りの支援を行う」
「そ、そうか。助かるよヨーレン」
ヨーレンかそれまで現していた不安や憤りのような態度から一変したことにユウトは戸惑う。しかし、まずはこれからのことを決めることが先決であると気持ちを無理やり切り替えた。
「ロード、ひとまずオレはゴブリン殲滅ギルドと調査騎士団に話をしてみるよ。
時間は少ない。すぐに連絡手段を探さないと」
「ギルドには私から手紙を送ろう。ガラルド隊長のことも伝えなければならないし」
ユウトの発言にヨーレンが提案する。さらにロードも続いた。
「調査騎士団は大魔獣を追跡、観察していることがわかっている。大魔獣の進行方向から、もうすぐ大工房に危険が迫っていると別動隊が知らせにやってくるだろう」
「うん、わかった。話しが進展したらまた知らせにくるよ」
「その必要はない。ヴァルをつける」
「ヴァル?あの言付けに大工房の入口に来た魔物か」
ユウトは思いだしながらロードの意図が読み取れない。ヴァルをつけることで報告を省略できる理屈がわからなかった。
「ヴァルの見聞きしているものはヴァルの判断で我にも伝えることができる。我に連絡が取りたい時、ヴァルにそう伝えれば我に接続されるだろう。我の言葉はヴァルが代弁する形になるがな」
「すごい技術だな。一体あれは何なんだ?ヴァルからは魔力が感じられないし気配と言えば小さな音ぐらいだ。魔物とは思えない」
ユウトはそれまで抱いていたヴァルに対する疑問をロードに投げかける。
「ロードに答えさせるのは面倒だ。わしが答えてやろう。
あれは言うなれば古代の遺物だ。ロードが地中に眠っていたものを見つけ、わしがその起動法を教えた。魔物と違った古代ならではの技術概念で動いている。そしてひどく頑丈だよ。分解して調べようとはしないことだね。逆に怪我をするだろうさ」
ジヴァが間に割って入り、ヴァルについての情報を一通り語り切った。
「崩壊塔なんてものがあるくらいだ。あれくらいの機会が作れても不思議じゃないか。
ともかくわかったよ。ヴァルを同行させてもらうよ」
「ヴァルは外で待たせている。他に質問はあるか?」
「今はないかな。ではさっそく行動を起こすよ」
そう言ってユウトは立ち上がる。ヨーレンもユウトに続くように立ち上がった。
「ユウト。そしてヨーレン。くれぐれも頼んだ」
ロードは力なく寄りかかった椅子のひじ掛けから右手を持ち上げ差し出しす。ユウトはその意味をすぐに察すると歩み寄り、右手で握って小さく振って離した。
そしてマントを翻すと、その部屋の外につながる出口へと進む。ヨーレンはユウトの行動を不思議そうに見ていたがすぐにユウトの後を追った。
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