124 / 213
激励
しおりを挟む
ユウトはセブルが突然カーレンに向かって話しかけたことに驚く。カーレンの反応から完璧に言葉が通じているわけではないことはわかるが全く通じていないわけでもない様子だった。
「セブルっていうんだ。カーレンの今の気持ちがわかるって言ってる。セブル自身も蚊帳の外に出されてしまう経験があるからって」
ユウトはかいつまんでセブルの言っていた内容をカーレンに伝える。その内容にユウト自身も思い当たる節があり、セブルに対して申し訳ない気持ちになった。
「ななぅ。うなぉな、なーうなぅなう(カーレンのがんばりは誰かが必ず見ているよ。今は悔しいかもしれないけれど、いつか必ずやってくる一瞬がある。その一瞬の時のために今をがんばろうよ)」
セブルの語った内容をユウトはできるだけ正確に通訳する。
「なうなぁなう(つらいことがあったならボクの毛並みを触らせてあげるから元気出して)」
そう言ってセブルはヴァルの頭の上でその毛を細く膨らませて樽のように毛が膨らんで丸くなった。
カーレンはすんと鼻から息を吸ってしゃがみ込み片手でセブルを撫でると固かった表情がふわりと明るくなる。
「ありがとう、セブル」
優しく語り掛けるカーレンにセブルも鳴いて答えた。
セブルとカーレンの様子にユウトも胸を撫でおろす。するとそれまでユウトのフードの中に隠れていたラトムがぱっと飛び立ちカーレンの腕にふわりと舞い降りた。
「カーレン、ガンバッテル、オイラ、モ、オウエン、スル」
「誰カニ頼ッテモ、イイ」
ラトムとヴァルも続けてカーレンに声を掛ける。カーレンは一編に魔物達に励まされ、その顔は驚きと恥ずかしさ、感謝が入り混じった複雑な表情になっていた。
「カーレン。オレの知る限りのことを教えるよ。カーレンにも手伝ってもらうことになると思うしな」
「えっ、はい!お願いします」
ユウトに声を掛けられカーレンはユウトに慌てて目を移しセブルから手を放して立ち上がる。手が離れたのを確認してセブルは元の姿になってユウトに飛び移ってフードに戻り、ラトムもユウトの肩にとまった。
それからカーレンはユウトの横に並んで歩き始め、ユウトは役場での会合の内容や決闘の話、自身の立場を説明する。時折カーレンからの質問にも答えつつ工房に向かって緩やかに歩き続けた。
カーレンとじっくり話してみて、ユウトにはカーレンが自身の子供っぽさをひた隠しにして背伸びしてきたのだろうと感じる。一通り説明も終わってユウトは思い切ってヨーレンのことを尋ねてみた。
「なぁカーレン。オレはヨーレンと一緒に行動することが多かったんだけど未だにヨーレンのことをよく知らない。最初は反対していたゴブリンの計略にオレが参加することについても、ちゃんと決心を語ると了承して自身を顧みず手伝ってくれてる。それがどうも妙に感じられるんだよな。
カーレンから見てヨーレンはどんな兄だったんだ?昔からそんな感じだったのか?」
ユウトもカーレンも正面を見ながら歩みを進めていてお互いに顔は見えない。カーレンはユウトの質問に少し間をおいて話始めた。
「私から見てヨーレン兄さんは信念の人です。私よりずっと魔導の才能を持っていながら魔術に転向しました。その理由をちゃんと説明してくれたことはなかったけれど、魔導の家系から外れる大変さはわかるので、すごく強い思いがあったんだろうと感じます。その表れに、かなりの危険性をはらんでいる白灰の魔女の元へ弟子入りしてしまうほどですから。
もしかしたら、ユウトさんが人という立場を捨ててゴブリンとして生きていくことへの決断と行動に自身と重なるものがあっただろうし、その意志の強さを確かめたかったんじゃないでしょうか」
カーレンはとても冷静で分析するように自身の考えを述べる。その内容にユウトは違和感は感じなかった。そしてやはりジヴァに弟子入りしようとするのは異常な行動であることを再確認する。カーレンはさらに言葉を続けた。
「兄さんがそういった変化に反応するのは自身が家系から抜けたことで家名の跡継ぎが私になってしまったことへの後ろめたさがあるからなのかもしれません。
私は納得してるし、こうして騎士団にも入れたのも家名を継げたからこそなので不満はないんです。けど兄さんはそうは思っていないみたいで腫れ物を扱うような態度はさみしいですね。
まぁ私も兄さんのその態度の反動からか顔を合わせると私の方もつい口うるさくなってしまうんですけど」
言葉の最後は恥ずかしそうに笑いながらカーレンは語る。ちょうどその時役場の方から正午を合図する鐘の音が数回鳴り響いた。
ユウト達が歩く道には賑わいはなく閑静とした街並みが続いている。建ち並ぶ建物からは昼時の食事のおいしそうな匂いがユウトには感じられた。
「答えてくれてありがとうカーレン。話しにくいこともあったと思うけどヨーレンのことが知られてよかった。
オレはこの姿になってからヨーレンには助けてもらってばかりでね。こうして一度飛ばされた腕もヨーレンの技術でつなぎ押してもらえたんだ」
そう言いながらユウトは包帯で巻かれた吊り下げている左腕を少し前に出す。
「そうだったんですかっ!ヨー兄さんもしっかり目標に近づいているみたいでよかった」
身体を傾けのぞき込むカーレンの表情はユウトがそれまで見てきたどの表情より一番うれしそうに見えた。
「セブルっていうんだ。カーレンの今の気持ちがわかるって言ってる。セブル自身も蚊帳の外に出されてしまう経験があるからって」
ユウトはかいつまんでセブルの言っていた内容をカーレンに伝える。その内容にユウト自身も思い当たる節があり、セブルに対して申し訳ない気持ちになった。
「ななぅ。うなぉな、なーうなぅなう(カーレンのがんばりは誰かが必ず見ているよ。今は悔しいかもしれないけれど、いつか必ずやってくる一瞬がある。その一瞬の時のために今をがんばろうよ)」
セブルの語った内容をユウトはできるだけ正確に通訳する。
「なうなぁなう(つらいことがあったならボクの毛並みを触らせてあげるから元気出して)」
そう言ってセブルはヴァルの頭の上でその毛を細く膨らませて樽のように毛が膨らんで丸くなった。
カーレンはすんと鼻から息を吸ってしゃがみ込み片手でセブルを撫でると固かった表情がふわりと明るくなる。
「ありがとう、セブル」
優しく語り掛けるカーレンにセブルも鳴いて答えた。
セブルとカーレンの様子にユウトも胸を撫でおろす。するとそれまでユウトのフードの中に隠れていたラトムがぱっと飛び立ちカーレンの腕にふわりと舞い降りた。
「カーレン、ガンバッテル、オイラ、モ、オウエン、スル」
「誰カニ頼ッテモ、イイ」
ラトムとヴァルも続けてカーレンに声を掛ける。カーレンは一編に魔物達に励まされ、その顔は驚きと恥ずかしさ、感謝が入り混じった複雑な表情になっていた。
「カーレン。オレの知る限りのことを教えるよ。カーレンにも手伝ってもらうことになると思うしな」
「えっ、はい!お願いします」
ユウトに声を掛けられカーレンはユウトに慌てて目を移しセブルから手を放して立ち上がる。手が離れたのを確認してセブルは元の姿になってユウトに飛び移ってフードに戻り、ラトムもユウトの肩にとまった。
それからカーレンはユウトの横に並んで歩き始め、ユウトは役場での会合の内容や決闘の話、自身の立場を説明する。時折カーレンからの質問にも答えつつ工房に向かって緩やかに歩き続けた。
カーレンとじっくり話してみて、ユウトにはカーレンが自身の子供っぽさをひた隠しにして背伸びしてきたのだろうと感じる。一通り説明も終わってユウトは思い切ってヨーレンのことを尋ねてみた。
「なぁカーレン。オレはヨーレンと一緒に行動することが多かったんだけど未だにヨーレンのことをよく知らない。最初は反対していたゴブリンの計略にオレが参加することについても、ちゃんと決心を語ると了承して自身を顧みず手伝ってくれてる。それがどうも妙に感じられるんだよな。
カーレンから見てヨーレンはどんな兄だったんだ?昔からそんな感じだったのか?」
ユウトもカーレンも正面を見ながら歩みを進めていてお互いに顔は見えない。カーレンはユウトの質問に少し間をおいて話始めた。
「私から見てヨーレン兄さんは信念の人です。私よりずっと魔導の才能を持っていながら魔術に転向しました。その理由をちゃんと説明してくれたことはなかったけれど、魔導の家系から外れる大変さはわかるので、すごく強い思いがあったんだろうと感じます。その表れに、かなりの危険性をはらんでいる白灰の魔女の元へ弟子入りしてしまうほどですから。
もしかしたら、ユウトさんが人という立場を捨ててゴブリンとして生きていくことへの決断と行動に自身と重なるものがあっただろうし、その意志の強さを確かめたかったんじゃないでしょうか」
カーレンはとても冷静で分析するように自身の考えを述べる。その内容にユウトは違和感は感じなかった。そしてやはりジヴァに弟子入りしようとするのは異常な行動であることを再確認する。カーレンはさらに言葉を続けた。
「兄さんがそういった変化に反応するのは自身が家系から抜けたことで家名の跡継ぎが私になってしまったことへの後ろめたさがあるからなのかもしれません。
私は納得してるし、こうして騎士団にも入れたのも家名を継げたからこそなので不満はないんです。けど兄さんはそうは思っていないみたいで腫れ物を扱うような態度はさみしいですね。
まぁ私も兄さんのその態度の反動からか顔を合わせると私の方もつい口うるさくなってしまうんですけど」
言葉の最後は恥ずかしそうに笑いながらカーレンは語る。ちょうどその時役場の方から正午を合図する鐘の音が数回鳴り響いた。
ユウト達が歩く道には賑わいはなく閑静とした街並みが続いている。建ち並ぶ建物からは昼時の食事のおいしそうな匂いがユウトには感じられた。
「答えてくれてありがとうカーレン。話しにくいこともあったと思うけどヨーレンのことが知られてよかった。
オレはこの姿になってからヨーレンには助けてもらってばかりでね。こうして一度飛ばされた腕もヨーレンの技術でつなぎ押してもらえたんだ」
そう言いながらユウトは包帯で巻かれた吊り下げている左腕を少し前に出す。
「そうだったんですかっ!ヨー兄さんもしっかり目標に近づいているみたいでよかった」
身体を傾けのぞき込むカーレンの表情はユウトがそれまで見てきたどの表情より一番うれしそうに見えた。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる