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不運
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カーレンの視線はヨーレンへ真っすぐ向けられている。その視線を追って全員の注目がヨーレンへと向かった。
ヨーレンは驚いた表情を浮かべていたが目を一度伏せてからカーレンの視線をしっかりと受け止める。
「うん。僕は今、確かにやりたいことをやっている。
新しい魔術具の開発。より人の役に立つ、人の助けになること研究するのは・・・いや、違うな」
語りを一旦止め、逡巡するヨーレン。
「世にまだない、新しいものを生み出す、というのは楽しい。その先には見たことのない景色があるかもしれないという望み。その欲求と誰かの役に立つ、というのが重なる可能性が高かったのが治癒魔術具の開発だった」
言い直すヨーレンの表情に笑みはない。いつも温和に語るヨーレンの印象と全く違う者だった。
「その望みは魔導士では、家に残っては叶えられないものだったの?あれほどの能力と努力に評価も得ていたのに」
カーレンがさらに尋ねる。
「もちろん絶対に叶えられなかった、とは言い切れない。でも僕の能力ではとても遠くに見えてしまった。挫けてしまうほど。
誰かにとっては憧れの能力でも本人とってそれが適正かどうかは別の話だと思った。僕にとっての魔導士の能力は呪いのように感じてしまったんだ」
そう語るヨーレンはとても自然にユウトには見えた。
「なら、ならどうして私を家を避けようとするの?まるで他人みたいに。そういう理由なら堂々としていいじゃない。
魔導士の家系が面倒ないざこざを抱えているのは私だった知ってる。それでも父さんも母さんも、姉さん達だってヨー兄さんのことを気にしてるのにどうして無視するような態度をとるの?」
座っている態勢を少しだけ前のめりにさせながらカーレンの口調は強まる。それを受けて初めてヨーレンの表情はくもった。
「特別な能力を持つ者には権利がありそして義務が生じる。僕の持った能力にはそれ相当の義務があった。僕がその義務を放棄したしわ寄せを当然誰かが背負わなければいけない。その義務を押し付けてしまった。そのことをどうしても後ろめたい、のかもしれない」
「私の気持ちも知らないで・・・」
カーレンはヨーレンの言葉を聞いて一言つぶやくと勢いよく立ち上がる。時より揺れる走行中の荷台の上にも関わらずカーレンはしっかりと立ってヨーレンを見下ろした。
「私が嫌々やらされて騎士団に入ったと思っているの?」
そう言いながらカーレンはヨーレンに向けて一歩踏み出す。対角に位置するヨーレンとカーレンの間にいるユウトは何かまずい、という感覚が沸き立ち、抱えていたセブルとクロネコテンをそのままにカーレンとヨーレンとの間に割り込んだ。
「私は強要されて努力ができるような良い子なんかじゃない。調査騎士団に志願して危険を冒しても都の外にでたかったのは私の意志でやったこと。ヨー兄さんの言う義務とやらなんて私には関係のないことなの」
ヨーレンしか見ていないカーレンは二人をさえぎるユウトにお構いなく前進しようとする。ユウトは身体を押し付けられながら堪えた。
「それをまるで自分のせいのように私が嫌な思いをしているなんて思いこまれるのは、頭にくる!」
勢いの衰えないカーレンに手が使えないユウトが押し倒されそうになる。そんなユウトを助けるようにノノがカーレンを抑えのに加わった。そのおかげでカーレンの勢いは弱まり落ち着きが戻ってくる。ユウトは呼吸を止めてさらに我慢を続けることになった。
「私は外の世界が見たかったの。そのために研鑽もつんだ。ヨー兄さんにはかなわないとわかっていても。
そんな時にヨー兄さんが家を出て、初めて私に機会が巡ってきた。だからこれっぽちも恨んでなんか、ない」
そこまで言ってカーレンの圧力はなくなりユウトは尻餅をつくように座り込んで止めていた息を吐く。ふと見上げるとカーレンがうつむいて苦々しい表情をしているのがわかった。
「私がこうしてここにいられるのはヨー兄さんが家を出たおかげでもある。そのヨー兄さんに申し訳なさそうな目で私を見るたびに私は嫌な気持ちになる。自分の願いを叶えるためにヨー兄さんの不幸を少しでも望んでしまったかもしれない自分を、見せつけられるみたいで・・・」
絞り出すように言葉を紡ぐカーレンの両手は強く握り締められ小刻みに震えている。それを見てユウトは語り始めた。
「なぁカーレン。それでいいんじゃないかな。オレはそんなことじゃカーレンのことを嫌いにはなれない。だってみんな少しずつ隠し持っているものだよ。少なくともオレは必死に隠してる、ばれてるかもしれないとはらはらしながらね」
ふっと自嘲しながらユウトはカーレンを見上げている。カーレンはそんなユウトを口を小さく開け、表情の力みが抜けながら見下ろしていた。
「それにオレは知ってるんだ。嫌味の塊みたいなバケモンがこの世界にいるってことを。それに比べたらカーレンなんて全然かわいらしいよ」
「ぷ!ふふっ」
ユウトの語りを聞いてか積みあがる毛の山に寄りかかって黙っていたマレイが吹き出す。突然の反応に皆の視線がマレイに集まった。
マレイは素知らぬ顔で寝たふりを決め込んだように黙る。ユウトはあきれてカーレンに向き直った。
「えっと、だからさ、カーレン。もし嫌な自分の置き所に困ることがあったなら。また今回みたいに誰かを助けてあげたらいいと思う。望まぬ誰かの不運の上に立っているのなら、だれかの幸運にだってなれるはずだ。
魔獣との戦いはカーレンの意志と能力がなければ勝てなかった。本当にオレは助けられたんだ」
ユウトの言葉にカーレンは戸惑いの表情を浮かべて「ありがとう、ございます・・・」とつぶやく。
そして何かにはっと気づいてあたりを見回すと耳を赤くしてぐるりと反転し、元居た荷台の隅に戻っていった。そして足を抱えて顔を隠を伏せる。丸まってしまったカーレンの肩を隣に座るレナは片手で抱いて引き寄せた。
ヨーレンは驚いた表情を浮かべていたが目を一度伏せてからカーレンの視線をしっかりと受け止める。
「うん。僕は今、確かにやりたいことをやっている。
新しい魔術具の開発。より人の役に立つ、人の助けになること研究するのは・・・いや、違うな」
語りを一旦止め、逡巡するヨーレン。
「世にまだない、新しいものを生み出す、というのは楽しい。その先には見たことのない景色があるかもしれないという望み。その欲求と誰かの役に立つ、というのが重なる可能性が高かったのが治癒魔術具の開発だった」
言い直すヨーレンの表情に笑みはない。いつも温和に語るヨーレンの印象と全く違う者だった。
「その望みは魔導士では、家に残っては叶えられないものだったの?あれほどの能力と努力に評価も得ていたのに」
カーレンがさらに尋ねる。
「もちろん絶対に叶えられなかった、とは言い切れない。でも僕の能力ではとても遠くに見えてしまった。挫けてしまうほど。
誰かにとっては憧れの能力でも本人とってそれが適正かどうかは別の話だと思った。僕にとっての魔導士の能力は呪いのように感じてしまったんだ」
そう語るヨーレンはとても自然にユウトには見えた。
「なら、ならどうして私を家を避けようとするの?まるで他人みたいに。そういう理由なら堂々としていいじゃない。
魔導士の家系が面倒ないざこざを抱えているのは私だった知ってる。それでも父さんも母さんも、姉さん達だってヨー兄さんのことを気にしてるのにどうして無視するような態度をとるの?」
座っている態勢を少しだけ前のめりにさせながらカーレンの口調は強まる。それを受けて初めてヨーレンの表情はくもった。
「特別な能力を持つ者には権利がありそして義務が生じる。僕の持った能力にはそれ相当の義務があった。僕がその義務を放棄したしわ寄せを当然誰かが背負わなければいけない。その義務を押し付けてしまった。そのことをどうしても後ろめたい、のかもしれない」
「私の気持ちも知らないで・・・」
カーレンはヨーレンの言葉を聞いて一言つぶやくと勢いよく立ち上がる。時より揺れる走行中の荷台の上にも関わらずカーレンはしっかりと立ってヨーレンを見下ろした。
「私が嫌々やらされて騎士団に入ったと思っているの?」
そう言いながらカーレンはヨーレンに向けて一歩踏み出す。対角に位置するヨーレンとカーレンの間にいるユウトは何かまずい、という感覚が沸き立ち、抱えていたセブルとクロネコテンをそのままにカーレンとヨーレンとの間に割り込んだ。
「私は強要されて努力ができるような良い子なんかじゃない。調査騎士団に志願して危険を冒しても都の外にでたかったのは私の意志でやったこと。ヨー兄さんの言う義務とやらなんて私には関係のないことなの」
ヨーレンしか見ていないカーレンは二人をさえぎるユウトにお構いなく前進しようとする。ユウトは身体を押し付けられながら堪えた。
「それをまるで自分のせいのように私が嫌な思いをしているなんて思いこまれるのは、頭にくる!」
勢いの衰えないカーレンに手が使えないユウトが押し倒されそうになる。そんなユウトを助けるようにノノがカーレンを抑えのに加わった。そのおかげでカーレンの勢いは弱まり落ち着きが戻ってくる。ユウトは呼吸を止めてさらに我慢を続けることになった。
「私は外の世界が見たかったの。そのために研鑽もつんだ。ヨー兄さんにはかなわないとわかっていても。
そんな時にヨー兄さんが家を出て、初めて私に機会が巡ってきた。だからこれっぽちも恨んでなんか、ない」
そこまで言ってカーレンの圧力はなくなりユウトは尻餅をつくように座り込んで止めていた息を吐く。ふと見上げるとカーレンがうつむいて苦々しい表情をしているのがわかった。
「私がこうしてここにいられるのはヨー兄さんが家を出たおかげでもある。そのヨー兄さんに申し訳なさそうな目で私を見るたびに私は嫌な気持ちになる。自分の願いを叶えるためにヨー兄さんの不幸を少しでも望んでしまったかもしれない自分を、見せつけられるみたいで・・・」
絞り出すように言葉を紡ぐカーレンの両手は強く握り締められ小刻みに震えている。それを見てユウトは語り始めた。
「なぁカーレン。それでいいんじゃないかな。オレはそんなことじゃカーレンのことを嫌いにはなれない。だってみんな少しずつ隠し持っているものだよ。少なくともオレは必死に隠してる、ばれてるかもしれないとはらはらしながらね」
ふっと自嘲しながらユウトはカーレンを見上げている。カーレンはそんなユウトを口を小さく開け、表情の力みが抜けながら見下ろしていた。
「それにオレは知ってるんだ。嫌味の塊みたいなバケモンがこの世界にいるってことを。それに比べたらカーレンなんて全然かわいらしいよ」
「ぷ!ふふっ」
ユウトの語りを聞いてか積みあがる毛の山に寄りかかって黙っていたマレイが吹き出す。突然の反応に皆の視線がマレイに集まった。
マレイは素知らぬ顔で寝たふりを決め込んだように黙る。ユウトはあきれてカーレンに向き直った。
「えっと、だからさ、カーレン。もし嫌な自分の置き所に困ることがあったなら。また今回みたいに誰かを助けてあげたらいいと思う。望まぬ誰かの不運の上に立っているのなら、だれかの幸運にだってなれるはずだ。
魔獣との戦いはカーレンの意志と能力がなければ勝てなかった。本当にオレは助けられたんだ」
ユウトの言葉にカーレンは戸惑いの表情を浮かべて「ありがとう、ございます・・・」とつぶやく。
そして何かにはっと気づいてあたりを見回すと耳を赤くしてぐるりと反転し、元居た荷台の隅に戻っていった。そして足を抱えて顔を隠を伏せる。丸まってしまったカーレンの肩を隣に座るレナは片手で抱いて引き寄せた。
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