152 / 213
晩飯
しおりを挟む
ほっとした気持ちと連動するようにユウトの腹が低く鳴る。魔獣との戦闘から続く折りつめた気持ちと高速回転させていた思考が落ち着ついたことで下腹の緊張が解けたせいか急激に空腹感をユウトは感じた。
「ははっ。よしセブル、夕食に行こうか」
ユウトは自身の間抜けさに軽く自嘲しながら立ち上がるとセブルに向けて手を差し伸べる
。セブルはその手をつたい駆け上がるとユウトのフードの縁に添い黒い毛皮へと偽装した。
不思議そうに見上げるもう一匹のクロネコテンをユウトは抱きかかえると頭上に掲げフードの中へと移し、魔術灯の明かりを消す。そしてテントから出た。
テントから出てすぐユウトはふと何かを感じ取り、振り返る。テントの頂点に風見鶏のように佇む紅の鳥が一匹確認できた。
「ラトム!帰ってきてたんだな」
そう言いながらユウトは手を掲げる。ラトムはそれに答えるようにユウトの指先に舞い降りた。
「お疲れ様。さっきの戦いではとても助かったよ」
「いえいえッス!もっと光線とかで支援できればよかったんスけど不器用なものでごめんなさいッス」
ラトムはシュンと羽毛を縮ませる。
「明かりで照らしながら核の位置を知らせてくれるだけでも十分だったよ。光線はまたの機会に役立ててくれ」
ユウトはラトムを乗せた手を肩口へと持ってき、答えるようにラトムはユウトの肩へと飛び移った。
「もしかして・・・話し聞いてた?」
ユウトの肩の上でぴょこぴょこと嬉しそうに身体を揺らしていたラトムにセブルが声を掛ける。
「え。えっとー・・・ッスね」
セブルの問いに対してラトムの身体はピタリと動きを止めると言葉を濁した。
「ムー。しょうがない。ペラペラと言いふらさないでよ!」
「もちろんッス!」
あきらめのようなセブルの声にラトムは即答しセブルははぁと呆れたため息をつく。
「さて、食堂にいくか」
ユウトはセブルとラトムのやり取りに懐かしさを感じながら食事の配給所に向け、力強い足取りで向かい始めた。
すっかり日の沈んだ野営基地ではいくつものテントに魔術灯の明かりが灯り、昼間とは違った雰囲気が漂っている。とりわけ配給所の大テントから漏れる光は明るく、加えて賑やかな人の声も混じり合い賑わっていた。
出入りする人の数は多く、フードをかぶらないユウトに対してすれ違う人の視線が吸い寄せられてる。それでもユウトは気に留めることなく堂々とした様子で配給所の中へと足を踏み入れた。
大テントの中は無数の魔術灯によって照らし出され、夜の暗闇を感じさせない。焼いた肉、酒、香辛料の香りが充満して座席を埋める人々の熱気の中でユウトはあたりを見回した。
円形の大テントの中心では忙しく調理が行われ、完成した料理が調理場を一回りする円形の台に並べられた大皿へと山盛りに盛られていく。そしてその縁に沿ってお盆に皿を乗せた人が列を成し、それぞれが思い思いの料理をさらに乗せていた。
ユウトはとりあえずその列に並ぶことにすると最後尾を目指して人を掻き分けて進む。容易に見つけた最後尾に並んで周りを何気なく眺めて順番を待った。席を確保されている者は料理を待つ人々の元へ向かい、席を確保し損ねたりした独り者は大テントから出て好き好きの場所に向かって行くのを観察する。混雑する座席を見るとユウト一人で確保できそうな席はなく食事を確保すればまたあの巨石のところに向かおうかと考えていた。
「ちょっと上から空いた席ないか見てくるっスよ?」
ユウトの考えに感づいたのかラトムが声を掛けてくる。
「うーん。そうだな」
ラトムの提案に気持ちが動かされるユウト。
「え?もしかしてこれは・・・クロネコテンの毛皮・・・?」
通り過ぎていく人の中で急に立ち止まる人影があった。
ユウトにはその声に聞き覚えがある。もしやと思いながら見上げるとそこには湯気立つ料理を持ったメルだった。
「久しぶり、メル。レナの様子はどう?」
「あっ!すすっすみません気づかなくて。
えっとレナの脚は調子いいみたいです。今、一緒に来ていて席を取ってもらっています。
あの・・・よかったら席に余裕があったので一緒にどうですか?料理もたくさん取ってきてしまったし」
ユウトの目線の高さにあるメルの持った盆にはいくつもの皿と大盛りの料理が盛られている。
「それはありがたい。ちょうどメルにお願いがあったんだ」
「はい?わたしにですか?」
メルは不思議そうに小首をかしげる。
「ここで長居するのも通行の邪魔になりそうだ。案内をお願いするよ」
「そうですね。行きましょうか」
ユウトとメルの二人を物珍しそうに見物する視線は短い会話の間にもかかわらず、かなりの人数になっていた。
メルは恥ずかしそううつむき加減に肩をすぼめ歩みを進め始める。ユウトはメルから気持ち距離をとりメルの背中を視界の端でとらえながら追随していった。
ほどなく目的地のテーブルへと到着する。長方形をした食卓にメルは持っていた盆を丁寧に置いた。ユウトはメルの後ろから横に抜けて食卓全体を見渡す。四つある席の一つにはどこか不機嫌そうに頬杖をついた長い赤髪の女性が座っていた。
「ははっ。よしセブル、夕食に行こうか」
ユウトは自身の間抜けさに軽く自嘲しながら立ち上がるとセブルに向けて手を差し伸べる
。セブルはその手をつたい駆け上がるとユウトのフードの縁に添い黒い毛皮へと偽装した。
不思議そうに見上げるもう一匹のクロネコテンをユウトは抱きかかえると頭上に掲げフードの中へと移し、魔術灯の明かりを消す。そしてテントから出た。
テントから出てすぐユウトはふと何かを感じ取り、振り返る。テントの頂点に風見鶏のように佇む紅の鳥が一匹確認できた。
「ラトム!帰ってきてたんだな」
そう言いながらユウトは手を掲げる。ラトムはそれに答えるようにユウトの指先に舞い降りた。
「お疲れ様。さっきの戦いではとても助かったよ」
「いえいえッス!もっと光線とかで支援できればよかったんスけど不器用なものでごめんなさいッス」
ラトムはシュンと羽毛を縮ませる。
「明かりで照らしながら核の位置を知らせてくれるだけでも十分だったよ。光線はまたの機会に役立ててくれ」
ユウトはラトムを乗せた手を肩口へと持ってき、答えるようにラトムはユウトの肩へと飛び移った。
「もしかして・・・話し聞いてた?」
ユウトの肩の上でぴょこぴょこと嬉しそうに身体を揺らしていたラトムにセブルが声を掛ける。
「え。えっとー・・・ッスね」
セブルの問いに対してラトムの身体はピタリと動きを止めると言葉を濁した。
「ムー。しょうがない。ペラペラと言いふらさないでよ!」
「もちろんッス!」
あきらめのようなセブルの声にラトムは即答しセブルははぁと呆れたため息をつく。
「さて、食堂にいくか」
ユウトはセブルとラトムのやり取りに懐かしさを感じながら食事の配給所に向け、力強い足取りで向かい始めた。
すっかり日の沈んだ野営基地ではいくつものテントに魔術灯の明かりが灯り、昼間とは違った雰囲気が漂っている。とりわけ配給所の大テントから漏れる光は明るく、加えて賑やかな人の声も混じり合い賑わっていた。
出入りする人の数は多く、フードをかぶらないユウトに対してすれ違う人の視線が吸い寄せられてる。それでもユウトは気に留めることなく堂々とした様子で配給所の中へと足を踏み入れた。
大テントの中は無数の魔術灯によって照らし出され、夜の暗闇を感じさせない。焼いた肉、酒、香辛料の香りが充満して座席を埋める人々の熱気の中でユウトはあたりを見回した。
円形の大テントの中心では忙しく調理が行われ、完成した料理が調理場を一回りする円形の台に並べられた大皿へと山盛りに盛られていく。そしてその縁に沿ってお盆に皿を乗せた人が列を成し、それぞれが思い思いの料理をさらに乗せていた。
ユウトはとりあえずその列に並ぶことにすると最後尾を目指して人を掻き分けて進む。容易に見つけた最後尾に並んで周りを何気なく眺めて順番を待った。席を確保されている者は料理を待つ人々の元へ向かい、席を確保し損ねたりした独り者は大テントから出て好き好きの場所に向かって行くのを観察する。混雑する座席を見るとユウト一人で確保できそうな席はなく食事を確保すればまたあの巨石のところに向かおうかと考えていた。
「ちょっと上から空いた席ないか見てくるっスよ?」
ユウトの考えに感づいたのかラトムが声を掛けてくる。
「うーん。そうだな」
ラトムの提案に気持ちが動かされるユウト。
「え?もしかしてこれは・・・クロネコテンの毛皮・・・?」
通り過ぎていく人の中で急に立ち止まる人影があった。
ユウトにはその声に聞き覚えがある。もしやと思いながら見上げるとそこには湯気立つ料理を持ったメルだった。
「久しぶり、メル。レナの様子はどう?」
「あっ!すすっすみません気づかなくて。
えっとレナの脚は調子いいみたいです。今、一緒に来ていて席を取ってもらっています。
あの・・・よかったら席に余裕があったので一緒にどうですか?料理もたくさん取ってきてしまったし」
ユウトの目線の高さにあるメルの持った盆にはいくつもの皿と大盛りの料理が盛られている。
「それはありがたい。ちょうどメルにお願いがあったんだ」
「はい?わたしにですか?」
メルは不思議そうに小首をかしげる。
「ここで長居するのも通行の邪魔になりそうだ。案内をお願いするよ」
「そうですね。行きましょうか」
ユウトとメルの二人を物珍しそうに見物する視線は短い会話の間にもかかわらず、かなりの人数になっていた。
メルは恥ずかしそううつむき加減に肩をすぼめ歩みを進め始める。ユウトはメルから気持ち距離をとりメルの背中を視界の端でとらえながら追随していった。
ほどなく目的地のテーブルへと到着する。長方形をした食卓にメルは持っていた盆を丁寧に置いた。ユウトはメルの後ろから横に抜けて食卓全体を見渡す。四つある席の一つにはどこか不機嫌そうに頬杖をついた長い赤髪の女性が座っていた。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる