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友情
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「怒りを感じる。あの姉妹たちが服従するよう調整していることが不服か?」
ロードは眉一つ動かさずユウトへ尋ね返す。
「う、んー・・・」
ユウトは自身の抱いていた漠然とした感情を明確にするロードの問いに、不意を突かれて驚き言葉が出せなかった。
「今のユウトが抱いた感情が、愛情というモノなのかもしれないな」
ロードはまた空を見上げてつぶやき、話を続ける。
「ゴブリンに子を育てるという習性はない。子は今後の戦力以上の価値を認めず、状況によっては食うこともある。その分、成体になるまでの期間は短い。ローゴブリンとはそういう魔物だ」
「同族の子を食べる?そんなことが・・・」
ユウトは何気なく語った一文に戦慄した。
「ああ、そうだ。食料がなくなれば自身の命を長らえさせるための共食いが起こる。我が生まれた頃には頻発していたことだ」
そんな状況をロードは生き延びたのかとユウトは想像する。
「そういった状況だ。我は群れず単独で生き延びる選択をした。結果、一種族を統べる力を得て今に至る。そしてそんな種族のモノが子を育てねばならなくなったとしたら・・・」
「絶対服従させる他の手段が思いつかなかった、か」
「そんなところだ。愛情の意味と必要性は理解できていたとしても、その感情を持つことができるわけではない。リナがいなければあの子等はああはなっていなかっただろう」
そう言ったロードの視線を追った先には荷台の上で四姉妹に毛皮を掛け直すリナがあった。
「なら、なぜオレには・・・・」
「前にも言ったがユウトのその身体は器の役割を持つ。服従の機能は器の容量を圧迫する懸念があった。だから排除している」
「割と単純な理由なんだな」
ユウトの言葉を最後に二人の間に静寂が訪れ、聞こえてくるのは風でこすれあう草の音だけが広がる。ユウトはロードのことを考えていた。
ロードは徹底して種の保存に従事している。己の幸福などなく、この世界の役割を全うしようとしていた。ユウトにそう見える。そしてその徹底した姿はどこか寂しく感じた。
「ロード、一つ提案がある」
「提案?」
ロードはユウトの言葉に驚いたような声色で聞き返す。
「オレと、友達になろう」
ユウトは思いついた。純粋なゴブリンでありながら、唯一ゴブリンロードの影響を受けない存在としてできること。
「友達・・・言葉の意味は知っているが、我にどうしろというのだ」
「どうともしなくていい。お互いもう一緒にいる時間はないだろうし、話をしたり、遊んだりもできないだろう」
ユウトは真剣な眼差しのままにっと笑って一歩踏み出しロードに近寄った。
「ただの関係性の再認識でしかないかもしれない。でも、ロードがこの世から去ったその先。その先ずっと、友としてオレはゴブリンロードではなく、一つの個として存在したロードという存在が確かにこの世界にはあったことを忘れない。そう誓う。あの子たちの幸せを願ったモノ同士、同等の関係で、だ。どうだろう?」
ユウトが話している間、真剣な表情で聞き入っていたロードは眼を見開いている。そしてユウトが語り終えると小さく声を漏らし始めた。
「ふふふふ・・・、はっはっはっは!」
押し殺したロードの声は隠し切れない笑い声となってあたりに重たく響く。
「そうか。友か。思いもしなかった。確かにそうとも言えるのだな。我とユウトの関係とは」
ロードは身体を丸め、頭と肩を揺らす。
「そんなにおもしろ可笑しい提案だったか?」
想像していた以上のロードの反応にユウトは焦りを感じ始めていた。
「すまない。ユウトを笑っていたわけではない。ユウトの提案に喜びを覚えている自身がいることに今頃気づいた、そのことが可笑しいのだ。
ユウトとあの魔女の家で話しをし、またここに来る道中での話しの中で感じていた得体のしれない感情の正体に今更気づく自身の哀れさ、それがどうしようもなく可笑しい」
ロードは確かに笑っている。しかしユウトには上下に小刻みに揺れる、うつむいたその姿がむせび泣くようにも見えた。
「ったく。どうするんだ?オレと友になるか?」
少しぶっきらぼうな物言いでユウトは言い放つと、手の平をロードの先へと指し伸ばす。
「良いだろう。友であると宣言しなければならない種族らしい方法だな。今よりユウトは我の最初で最後の友である」
ロードはそう言って差し伸ばされたユウトの手を握った。
ロードのやせ細っているただのゴブリンの手はハイゴブリンのユウトの手と比べれば、その見た目はとても弱弱しい。それでもユウトはその手から伝わってくる重たい力強さを感じて少し驚き力を入れ直した。
そして間を置き、お互いゆっくりと手をほどく。それからロードは口を開いた。
「基地に戻るのだろう。そろそろ心配するものもで始める」
その口調はいつも通りのロードに戻っている。それでもユウトにはどこか気持ちがこもっているような気がしてしまった。
「ああ。もう、戻らないとな。次に会うのは・・・」
「明後日。決戦の始まりの合図の時だ」
「そうか・・・」
「明日、ヴァルを向かわせる。その時ヴァルより手順を伝える」
「わかった・・・じゃあ、行くよ。また、な」
事務的な会話を交わし、ユウトは軽く手を上げて歩き出す。ロードもそれを真似するように手を掲げると「また」と短く答えた。
ロードは眉一つ動かさずユウトへ尋ね返す。
「う、んー・・・」
ユウトは自身の抱いていた漠然とした感情を明確にするロードの問いに、不意を突かれて驚き言葉が出せなかった。
「今のユウトが抱いた感情が、愛情というモノなのかもしれないな」
ロードはまた空を見上げてつぶやき、話を続ける。
「ゴブリンに子を育てるという習性はない。子は今後の戦力以上の価値を認めず、状況によっては食うこともある。その分、成体になるまでの期間は短い。ローゴブリンとはそういう魔物だ」
「同族の子を食べる?そんなことが・・・」
ユウトは何気なく語った一文に戦慄した。
「ああ、そうだ。食料がなくなれば自身の命を長らえさせるための共食いが起こる。我が生まれた頃には頻発していたことだ」
そんな状況をロードは生き延びたのかとユウトは想像する。
「そういった状況だ。我は群れず単独で生き延びる選択をした。結果、一種族を統べる力を得て今に至る。そしてそんな種族のモノが子を育てねばならなくなったとしたら・・・」
「絶対服従させる他の手段が思いつかなかった、か」
「そんなところだ。愛情の意味と必要性は理解できていたとしても、その感情を持つことができるわけではない。リナがいなければあの子等はああはなっていなかっただろう」
そう言ったロードの視線を追った先には荷台の上で四姉妹に毛皮を掛け直すリナがあった。
「なら、なぜオレには・・・・」
「前にも言ったがユウトのその身体は器の役割を持つ。服従の機能は器の容量を圧迫する懸念があった。だから排除している」
「割と単純な理由なんだな」
ユウトの言葉を最後に二人の間に静寂が訪れ、聞こえてくるのは風でこすれあう草の音だけが広がる。ユウトはロードのことを考えていた。
ロードは徹底して種の保存に従事している。己の幸福などなく、この世界の役割を全うしようとしていた。ユウトにそう見える。そしてその徹底した姿はどこか寂しく感じた。
「ロード、一つ提案がある」
「提案?」
ロードはユウトの言葉に驚いたような声色で聞き返す。
「オレと、友達になろう」
ユウトは思いついた。純粋なゴブリンでありながら、唯一ゴブリンロードの影響を受けない存在としてできること。
「友達・・・言葉の意味は知っているが、我にどうしろというのだ」
「どうともしなくていい。お互いもう一緒にいる時間はないだろうし、話をしたり、遊んだりもできないだろう」
ユウトは真剣な眼差しのままにっと笑って一歩踏み出しロードに近寄った。
「ただの関係性の再認識でしかないかもしれない。でも、ロードがこの世から去ったその先。その先ずっと、友としてオレはゴブリンロードではなく、一つの個として存在したロードという存在が確かにこの世界にはあったことを忘れない。そう誓う。あの子たちの幸せを願ったモノ同士、同等の関係で、だ。どうだろう?」
ユウトが話している間、真剣な表情で聞き入っていたロードは眼を見開いている。そしてユウトが語り終えると小さく声を漏らし始めた。
「ふふふふ・・・、はっはっはっは!」
押し殺したロードの声は隠し切れない笑い声となってあたりに重たく響く。
「そうか。友か。思いもしなかった。確かにそうとも言えるのだな。我とユウトの関係とは」
ロードは身体を丸め、頭と肩を揺らす。
「そんなにおもしろ可笑しい提案だったか?」
想像していた以上のロードの反応にユウトは焦りを感じ始めていた。
「すまない。ユウトを笑っていたわけではない。ユウトの提案に喜びを覚えている自身がいることに今頃気づいた、そのことが可笑しいのだ。
ユウトとあの魔女の家で話しをし、またここに来る道中での話しの中で感じていた得体のしれない感情の正体に今更気づく自身の哀れさ、それがどうしようもなく可笑しい」
ロードは確かに笑っている。しかしユウトには上下に小刻みに揺れる、うつむいたその姿がむせび泣くようにも見えた。
「ったく。どうするんだ?オレと友になるか?」
少しぶっきらぼうな物言いでユウトは言い放つと、手の平をロードの先へと指し伸ばす。
「良いだろう。友であると宣言しなければならない種族らしい方法だな。今よりユウトは我の最初で最後の友である」
ロードはそう言って差し伸ばされたユウトの手を握った。
ロードのやせ細っているただのゴブリンの手はハイゴブリンのユウトの手と比べれば、その見た目はとても弱弱しい。それでもユウトはその手から伝わってくる重たい力強さを感じて少し驚き力を入れ直した。
そして間を置き、お互いゆっくりと手をほどく。それからロードは口を開いた。
「基地に戻るのだろう。そろそろ心配するものもで始める」
その口調はいつも通りのロードに戻っている。それでもユウトにはどこか気持ちがこもっているような気がしてしまった。
「ああ。もう、戻らないとな。次に会うのは・・・」
「明後日。決戦の始まりの合図の時だ」
「そうか・・・」
「明日、ヴァルを向かわせる。その時ヴァルより手順を伝える」
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