伴奏曲

necropsy

文字の大きさ
3 / 29

伴奏曲3

しおりを挟む
 母国を離れてあずさははじめて母国語の素晴らしさを痛感していた。
 愛国心まではいかないが、あずさが当たり前に食べていた味噌汁やご飯がここにはない。
 メイドにガイドを通じて伝えれば、あずさが欲しいと思うものがもしかしたら出てくるかも知れない。

 それ以前にあずさはなぜ自分がここにいるのかがわからないでいた。
 辿る記憶は非情に血生臭い。
 ところどころあずさの記憶がすっぽりと抜け落ちている。
 頭に大怪我をしたからかも知れない。
 それでも日本の出来事とは思えない銃の乱射に逃げ惑う記憶があずさの中に確かにある。

 どこか人恋しいでいるあずさは退屈とは大きく違う。
 あずさは自分の記憶が間違いでなければ、いつ自分が殺されるかわからない。
 目を覚ましたあずさは想像もしていなかった異空間に入り込んでいた。
 こんなことが本当にあるのだろうか。
 蔑視したかのようなジェンの眼差し。あずさは懲りずに「日本語わかる?」問いかけ続ける。

 バックパッカーが行き倒れる国がインドだとしたらこの島はすべての時を止めてしまう。ジョンの母親は日本人だ。
 たまたま親しくなった漁師に連れられこの島をジョンの母親は訪れた。
 海原がいつからこの島を移住地としていたのはわからない。
 広いこの孤島はシンジケートから傭兵にとすべてを兼ね備えていた。
 商魂で訪れる船がここに停泊するのは難しい。
 浅瀬になっているこの島に入るには水平線の彼方に見えるスラム街からボートに乗り換えるしかない。
 外貨を得ることができなかった貧しい島がボートを頼む者達によって外貨を得る。
 少しずつ海原の恩恵が外貨を得ることができなかった貧しい島に恵みを齎しだしていた。

 しかしひととは醜い生き物だ。
 その外貨を独り占めしようと醜い争いが生まれだしていた。
 この貧しい島もまた地図に載っていない。
 その日の食べる量の魚を釣っていればよかった島民が裕福な島へと出ようとする。
 だが教育を受けていない独自の島の文化で他国へ出たところで成功などしない。
 いいように勝ち得た外貨をまんまと騙し取られる。泣く泣く故郷である島に帰ろうにも報復がなによりも恐ろしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...