伴奏曲

necropsy

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伴奏曲7

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 葱に似た香味に安藤は唸る。
 老夫婦の生活を安藤は取材とばかりに聞きたいが食べるのに忙しい。
 お袋の味ではなかったがとても懐かしい味に今までの旅が咽ぶ涙となれば大きな喜びとすらなる。
 安藤を感動させたのが梅干だ。嫌いではなかったが敢えて食べるものでもない。弁当に必ずといっていいほど漬物があるが安藤は食べることをしなかった。
 しかし日本米と似た米と梅干に味噌汁までもがある。
 老夫婦は少々厚かましいのはないかと思う安藤の見事な食べっぷりを息子の面影と重ねていた。
 可愛い孫にも会わせてもらえない。息子が来たと思ったら「金」だ。
 日本を離れることを悩んだ老夫婦であったが子供達と若かりし頃、息子達と過ごしたこの島で最期を迎えることを老夫婦は決めた。
 この島に来るのに安藤のように苦心するわけではないが直行便があるわけではない。
 SP以上の警護を連れ、この島に来る。生前贈与など弁護士とこの島に永住する前に入念に話し合った。それでもやはり日本を離れる。それはどこか物悲しさ以上に息子をそのようにしか育てられなかった大きな落ち度が切ない。
 泣き崩れそうな妻の背中を夫は優しくさすりあげた。
「もういいんだよ、あずさが待っている。行こう」
 一歩、一歩とこの島に近づくに連れて奇跡が起こる。
 すべてが輪廻を繰り返す。ここには魂の奇跡がある。
 少しずつ年老いた肉体であってもこころは童心に返っていっていた。この島に到着した頃には出会った頃の老夫婦であった。
 交し合う心の重なりが協奏曲となる。
 教えでも悟りでもない。
 この島には確かに魂のルフランが存在している。

 安藤ははち切れんばかりに膨れあがった腹を叩いた。
 粗末に慣れきってしまった安藤は久々に食べた飯に軽い吐き気を起こす。しかし元々雑食性の安藤は大きな欠伸とともにぐっすりと眠ってしまうと平然といた。
 自家発電を基本としたこの島は電気があってないようなものだ。
 近代文明にしてしまうことを島民達はなによりも恐れている。
 この島はまさに十万億土の恵みすべてにあった。
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