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第60話~え?少し勘違いしてるな~

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以来を済ましリノンに整体師にならないかと相談をしようと思いやっと家に帰ってきたが、
まさか整体師の弟子になりたいと言う人間が待っていたなんて。それも2人も…

いや、そもそもこの2人は何者なんだ?
見た感じまだ20そこそこだろうか?
店に来たお客さんでも見覚えないし会った事もないし、見当もつかない。
でも髪が金色で耳が長いしもしかしてヘイルダンさんと同じエルフかな?

「つばさ、この2人は一体誰なんだ?」

俺はすかさずつばさに聞いてみたが

「それがわからんのや、いくら質問しても弟子にしてほしいとしか言わんし…俺らもお手上げやったんや」

ますますわからんぞ?
本当に何者なんだ?まさかとは思うけど整体の技術だけを盗んでどこかの街でやろうとしているとか?
元いた世界にもそんな奴は正直いたし実際に被害にあったという人の話しも聞いている。
もしもそんな考えをもって来たのならとてもじゃないが許せる話じゃないがとにかく話をしてくれなければ何もわからない。
俺は2人の前の椅子に座り話を聞くことにした。
「えっと、初めましてかな?一応このホーリーホック整体院で整体師をしているアオイです」

挨拶すると2人は静かに挨拶してくれた。

「初めまして、突然の訪問申し訳ございません。私はイメラこっちは妹のミナスと申します」

イメラ君とミナスさんか
挨拶を聞く限りでは真面目そうだし好青年って感じだが、ミナスさんは少し引っ込み思案だろうか?

「じゃあイメラ君とミナスさん?何で俺の弟子に、整体師になろうと思ったの?」

「はい、もう気づかれてると思いますが私達はエルフです。エルフというのは人間より長命なのですがそのせいか年を重ねる事に身体への負担が強くなり動けなくなる者もいます。現に亡くなった私達の祖父も晩年は身体が動けずに寝たきりのままでした。」
「…だから私達は両親や仲間に何かあった時助けられるようになりたいと思い風の噂でカルムの街に身体を治せる先生がいると聞いてここまで来たんです」

ミナスさんが急に話して少しビックリしたけど、2人の話を聞いて少なくても変な理由ではないというのは分かった。
けど少し勘違いしてる所もあるからそこは説明しないといけないな。

「えと、2人とも話してくれてありがとう。ただ少し勘違いしている所があるから説明するね」

俺は2人に整体師というのはどういうものか説明した。
現状この世界には広まっていない仕事や出来るのは俺を含めて2人しかいない事などやる事を説明した。
何も知らない人が話だけを聞いたら魔法みたいな方法だと思う人がいるかもしれない。
だから俺は整体師は全てを治せる訳ではなく肩こりや腰痛等身体の負担を減らす、病気を治すわけではないということを説明した。
2人は真剣に話を聞いて納得と落胆の表情を浮かべていた。
自分達が思っていたものと違ったのだろう。

「以上が俺がやっている整体師という仕事なんだけど分かってくれたかな?」

「…」
「…」

考えているのか、言葉が出ないのか2人とも押し黙ったままだった。

「もし自分達が思っていたのと違うのであればやめた方がいいし無理してやる必要はないと思うよ?」

俺はそう2人に伝えた。

どれくらいたったか、意外にもミナスさんが先に口を開いた

「やらせてください!!」

力強く答えた。

「いいのかい?」
「はい。確かに私達が思っていたのとは違いました。でも身体の事を知っていれば何か対策も出来るはずです。だからここで学ばせて欲しいんです!」
「私もお願いします!何も知識がなければ誰かを救おうと思っても誰も救える事は出来ません!だからこそ学びたいんです!」

2人とも物凄い気迫で逆に俺が気圧されそうだでも2人の熱意は確かに伝わった
だから俺も決心できた。

「分かった。それなら2人にはここで働いてもらいたいと思う」

「ホントですか!」
「ありがとうございます!」

2人とも立ち上がって深々とお辞儀してきた。
ただすぐに働ける訳じゃない。
まずは身体についてしっかり覚えてもらってから、実際に施術をしてもらう。
それまではまずは解剖学や実習を受けてもらう。
そして働いていもらうからには給料を支払わなければいけないため、これはリノンにも確認してもらって相場より少し多めの1人金貨3枚渡すことにした(平均で貰えるのは金貨1~2枚らしい)
2人とも驚いていて逆に「貰いすぎです」と辞退しようとしてたが、これから働いて貰うしこの世界で3、4人目の整体師になるし、それだけ重要な仕事なんだと説明した。
この先俺がいなくなった時2人はエルフで長命だから整体師を世界に広めてほしいと思っている。いわば「先行投資」だ。
その位期待していると伝え2人には納得してもらった。
そして俺はリノンにも手伝ってほしい旨を伝えた。
俺がいない時は解剖学を教えてほしいと言うと、「自分なんか師匠みたいに教えられません」と言われたがリノンは物覚えもいいししっかり学んでいる事も知っているから任せたいと、そして人に伝える事で自身も改めて学ぶことが出来る・そしてリノンにも整体師になってほしいと俺の気持ちを伝えた。
当然リノンは驚いていたが、勿論冒険者を優先してもらって構わないし俺がいない時に店の留守や護衛も兼ねてほしいからだ。
つばさやネフリティスさんもいるから大丈夫だけど俺の考えを話しリノンはとりあえず整体師になる事は少し考えるが教える事は承諾してもらえた。

こうしてイメラとミナスのそして一応リノンを入れて3人を整体師見習いとして育てていく事に決まった。
こうして新しい仲間を加えたのだがその後俺はすぐ大事な事に気づいた。
「2人をどこに住むんだ?」

新たな問題が始まった。
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