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番外編 午後の甘い独占欲
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春斗が魔王城に来てから、何度目かの午後を迎えた頃。
広間の大きな窓から柔らかな陽が差し込むなか、彼は革張りのソファに腰かけていた。隣には当然のようにバロンがいて、彼は時間さえ合えば、ずっと春斗の隣から離れない。今日も春斗の顔を見つめて「ああ」だとか「はう」だとか呟いている。
「……な、なに?」
「いや、今日も可愛いなと思って」
「そ、そう?あんま言われたことないから、自分じゃ分かんないな……」
春斗が顔を赤くしながら自分の頬をモニュモニュと触っていると、広間の扉がノックされた。
「失礼いたします、魔王様、春斗様。お茶の用意が整っております」
現れたのは、使用人の侍女。年の頃は春斗と同じくらいか、少し下か。メイド服の隙間からは、悪魔のような尻尾がちょこんと飛び出ていて、時折それはゆらゆらと揺れている。
春斗はティーセットをテーブルに並べていく彼女の所作を、美しいなと思いながら眺めていた。
「春斗様、以前蜂蜜を多めにされていたので……本日も少し甘めにお作りしました」
「えっ……ありがとう。覚えてくれてたんだ」
春斗が微笑むと、侍女の頬がわずかに赤くなる。
「で、では私はこれで……」
「待て」
低い声が空気を裂く。
メイド服の彼女はびくっと肩を揺らして足を止めた。
バロンの腕がするりと伸び、春斗の肩を自分の方へ引き寄せる。体勢を崩した春斗が、バロンの太ももにぶつかる形で密着してしまった。
「っ、ちょっ……なにして……!」
「悪いが俺たちはこれから愛し合う予定だ」
侍女はしばし固まった後、顔を真っ赤にしてぺこりと頭を下げる。
「か、かしこまりましたっ!」
足早に部屋を出ていく彼女を見送りながら、春斗はため息をついた。
「……もう、なに今の……」
「彼女がお前を物欲しそうに見ていたから牽制を」
バロンの表情から、それが決して冗談ではないことがわかって、春斗は何も言えなくなってしまった。
頬に残る熱を手で押さえながら、彼はゆっくりと目を伏せる。胸の奥が、くすぐったいように波打っていた。
困った人だな……そう思いつつ、春斗はフフと微笑んだ。
広間の大きな窓から柔らかな陽が差し込むなか、彼は革張りのソファに腰かけていた。隣には当然のようにバロンがいて、彼は時間さえ合えば、ずっと春斗の隣から離れない。今日も春斗の顔を見つめて「ああ」だとか「はう」だとか呟いている。
「……な、なに?」
「いや、今日も可愛いなと思って」
「そ、そう?あんま言われたことないから、自分じゃ分かんないな……」
春斗が顔を赤くしながら自分の頬をモニュモニュと触っていると、広間の扉がノックされた。
「失礼いたします、魔王様、春斗様。お茶の用意が整っております」
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春斗はティーセットをテーブルに並べていく彼女の所作を、美しいなと思いながら眺めていた。
「春斗様、以前蜂蜜を多めにされていたので……本日も少し甘めにお作りしました」
「えっ……ありがとう。覚えてくれてたんだ」
春斗が微笑むと、侍女の頬がわずかに赤くなる。
「で、では私はこれで……」
「待て」
低い声が空気を裂く。
メイド服の彼女はびくっと肩を揺らして足を止めた。
バロンの腕がするりと伸び、春斗の肩を自分の方へ引き寄せる。体勢を崩した春斗が、バロンの太ももにぶつかる形で密着してしまった。
「っ、ちょっ……なにして……!」
「悪いが俺たちはこれから愛し合う予定だ」
侍女はしばし固まった後、顔を真っ赤にしてぺこりと頭を下げる。
「か、かしこまりましたっ!」
足早に部屋を出ていく彼女を見送りながら、春斗はため息をついた。
「……もう、なに今の……」
「彼女がお前を物欲しそうに見ていたから牽制を」
バロンの表情から、それが決して冗談ではないことがわかって、春斗は何も言えなくなってしまった。
頬に残る熱を手で押さえながら、彼はゆっくりと目を伏せる。胸の奥が、くすぐったいように波打っていた。
困った人だな……そう思いつつ、春斗はフフと微笑んだ。
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