魔王様に溺愛されています!

うんとこどっこいしょ

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番外編 風邪っぴき

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 ある朝、魔王城に不穏な気配が漂った。

「……うー……さむ……」

 寝台の上でうずくまる春斗は、毛布にくるまりながらぐったりとしていた。顔はほんのり赤く、鼻声でぐずっている。

「春斗ッ!?お前、どうした?!」

 バロンは扉を破壊しそうな勢いで入ってきた。

「いや、ちょっと熱あるだけだから……風邪ってやつだよ。人間界ではよくあるやつ……」

「熱!?死の前兆か!?すぐに魔界一の大司祭を──いや、世界樹の樹液を煎じて──いやいや、神竜の涙……!」

「落ち着け、バロン」

 春斗は頭を押さえながら、バロンの肩を軽く叩く。なのにバロンの瞳はまるで「愛しき者が死にかけている」と言わんばかりに潤んでいた。

「まずは、寝てろ。動くな。水は俺が。着替えも俺が。何なら呼吸も手伝おうか?」

「え、ちょっと待って最後おかしい。呼吸は自分でできるから!」

 だが、すでにバロンは春斗の頬に手を添え、まるで宝物でも触れるような繊細さで見つめていた。

「熱い……。春斗、お前、こんなに小さな体で高熱に耐えて……」

「泣かない泣かない、俺は大丈夫だから」

 そのあと、春斗が回復するまで、バロンは一日中つきっきりで看病した。

 お粥は魔界の最高級米で炊かれ、熱冷ましは氷精霊が召喚され、バロンは春斗に添い寝をしながら涙を流した。

「春斗……代われるものなら代わってあげたい……」

「大袈裟だよ……でも、ありがとう、気持ちだけで嬉しいよ」

 春斗は過保護すぎるバロンに苦笑しながらも、どこか嬉しそうだった。
 たとえ体は少ししんどくても、こんなふうに誰かが自分のために一生懸命になってくれることが、こんなにもあたたかいものだとは思っていなかった。

「……こんな看病、贅沢すぎるよ」

「贅沢なものか、春斗は俺にとって何よりも大切な存在だからな、足りないくらいだ」

 その言葉に胸の奥がじんわりと熱くなる。
 熱のせいか、それともバロンのまっすぐな想いのせいか──春斗には、もうわからなかった。
 けれどその夜、体温計の数値よりもずっと、心の温度が高くなっていたのは確かだった。
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