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第16話 リィナの願い
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私はベッドに横たわり、虚ろな瞳で部屋の隅の1点を見つめながら、只々時間を過ぎるのを待った。
部屋は寒く静けさに満ち、時計の針が刻む音がいつも以上に大きく聞こえ、まるで自分の心臓の鼓動を聞いてるかのように私を錯覚させた。
ずっーとそうしていると、突然携帯の着信が鳴り出し、私は我に返った。
画面を確認するとフタバからであった。
時間的にお昼の休憩時間に私の事を心配してかけてくれたのだろう。
でも私はフタバからの電話には出なかった。何を話せばいいか分からないし、こんな姿フタバには到底見せられない。
あの時親友だなんて軽々しく言っちゃったけど、なんでも見せられる間柄じゃないよ私達。
携帯をそっと閉じ、私はテーブルの座布団に腰を下ろした。
目の前の景色にリィナとの記憶がちらつく。
ここでリィナのご飯を朝晩毎日食べて、それがもう自分の生活の中で当たり前のようになってた。
そうだここでリィナに勉強もつけてもらってーー。
思い出にふけり、それがもう叶わないことだと理解した瞬間、目頭が熱くなるのを感じた。
「私リィナに世話になりっ放しだ……」
「リィナに会ってから、はじめて自分に自信を持てたんだ、だけどやっぱり私一人じゃ駄目だよ」
私は不安に押し潰されそうで、テーブルに突っ伏した。
「リィナがいたから頑張れたんだ、リィナがいたからここまで来れたんだ。リィナがいなきゃ私何もできないよ。
ねぇー応えてよリィナ、大丈夫心配いらないって私に言ってよ」
声を張り上げ、天に向かって叫んだが、その心の叫びにリィナが答えてくれることはなかった。
私はうなだれながらテーブルに崩れるように突っ伏すと、積み重なった参考書やノートがテーブルの端からこぼれ落ちてしまった。
惨めな気持ちで参考書、ノートを拾い上げていくと1冊だけ私の字じゃない身に覚えのないノートが出てきた。
タイトルには『あなたのレシピ』と書かれていた。
ノートを開くとそのノートには今までリィナが作ってくれた料理の数々の調理法がびっしりと書かれていた。
私の苦手とする野菜もこうすれば、食べれると事細かく記載されており、そこには私の知らない彼女の努力の形がそこにあった。
「リィナが自分がいなくなっても私が困らないようにレシピを書き留めてくれたんだ」
私はそのノートから溢れ出る愛を感じながら、腕の中でノートを抱きしめ、彼女に語りかけた。
「リィナ私これからどうしたらいい?リィナは私にどうして欲しい?」
私はその答えを見つけられないまま、時間になり試験会場へと足を運べせた。少し早くついたが、みんな既に席についていた。
私は番号の指定された席につき、サイジョウさんが近くに居ないか周りを見渡してみたが、皆参考書を片手に視線を下げており、この広い会場では誰が誰だか判別は出来なかった。
みんなこの試験に必死だ。そうだろうな、だって試験の合格者は正答率9割の上位10名まで、参加者は50人を有に越してるだろうし、そんな甘い世界じゃない。私もこの日のためにずっと努力してきたんだ。
それなのにこの空間で私だけが仲間外れみたい。だって私の心の中は、この情熱に溢れた試験じゃなく、リィナのことで一杯なんですもの。
忘れたくないリィナのこと。でも忘れたくなかったお母さんの、顔も声も忘れてしまった。リィナのいう通り私はリィナのこともいとも簡単に忘れてしまうのかな。
私は目をつむり手を合わせ、信じてもいない神様に祈りを捧げた。都合がいいことだって自分でも分かってる。でも自分じゃもうどうすることもできないんだ。
神様もうわがままは言わないから、今日まで頑張ってきたんだ、一つだけ願いを叶えてよ。リィナにもう一度会いたいんだ。
いや私はもう何もいらないから、何も望まないから、だからリィナの幸せを叶えてよ。
すると頭の中に1つの疑問が下りてきた。『リィナの願いは?』
私ははっとなり目からウロコが落ちるかのように、その答えたを見つけた。
そうだリィナの願い、私知ってる。それができるのは神様じゃない、私だ。
そうリィナの願い、それは私がこの世界から抜け出して外の世界に出ること。
「私いかなきゃ、リィナが待ってる。今度は私がリィナにおかえりっていうんだ」
その答えにたどりついた時には、試験監督が試験ルールについて説明を進めており、皆が真剣に聞き入る中、私は気付くと座席から立ち上がって、周りの目を気にすることなく、会場の外へと駆け出していた。
その姿を他の受験者が何事かと見つめ、会場全体がざわつきはじめ、試験監督が静まるように注意をするが、この数の受験者達を統制するまでは至らなかった。
そんな大混乱の中、一人不安げな表情浮かべる少年がいた。サイジョウさんだ。遠目ながら走る少女の横顔に私の面影を感じ取ったからだ。
私が向かった先はおやっさんのバーだった。こんな時に頼れる人といえば、あの人達しかいないから。
「こんばんは」
私が入口からこっそりと申し訳程度に顔をちょこっと出すと、カウンター席からおやっさんが出迎えた。
「なんだよお前、リィナならいねーぞ」
「リィナの居場所なら分かったよ、マザーセントラルビルだ」
「マザーセントラル?ならいいじゃねーか、これで家出も解決だ」
「リィナの居場所はあそこじゃないよ、この世界の外にもう一つ、別の世界があるんだ。リィナと私でこの世界から抜け出す」
「クレアお前……」
突拍子もないセリフに呆然とするおやっさんだったが、私の真っ直ぐな眼差しをみて、ふざけて言っている訳じゃないのが分かり、笑うことはしなかった。
「でも一人じゃマザーセントラルに侵入できない。おやっさんこれで最後、力を貸して欲しい」
その言葉におやっさんは目を瞑り、煙草を深く吸うと穏やかに、やれやれと笑みを浮かべた。
「まーた問題児が厄介事を持ってきたか。さてどうしたもんかね、みんな?」
おやっさんがメンバーに視線を送ったが、その答えは今までの信頼関係で分かりきっており、皆の心は一つだった。
「捕まるのは慣れっこだからな、俺はスリルが得られるなら大賛成だぜ」
ジェイドさんは相変わらず前髪で目元を隠して、その表情をみせてくれないけど、本音は私のために賛成してくれたんだと思う。顔が隠れててもその優しさはずっと感じてた。
「あー俺達もクレアちゃんのためなら何日だって務所生活してやるよ」
メンバーのみんなが一斉に立ち上がり、みんな思い思いの言葉で私を励ましてくれた。
ある一人の方は除いてーー
「まったく、ここにいる奴らは馬鹿しかいないのかしら?あんたもどうせ引き受けるつもりなんだろ?」
レムルおばさんだ、みんな捕まって1番迷惑をこうむってるのはこの人だから、おばさんにはそれをいう権利がある。
「おばさんいつも迷惑掛けてごめんなさい」
私はおばさんに深く頭を下げた。いつまでも顔を上げない私を見兼ねてレムルおばさんが言った。
「乗り越えたのは一度や二度じゃないんだ、みんなが捕まっても店は私が切り盛りするよ」
「おばさん」
「はははなんだよレムルお前も賛成なんじゃねーか」
「笑い事がありませんよ」
「わりーわりー、まぁ俺達は走り屋だからなそういう生き方しかできないのさ。クレア最後に最高の走りを見せてやるよ」。
「ありがとうおやっさん。これから作戦練ろう」
部屋は寒く静けさに満ち、時計の針が刻む音がいつも以上に大きく聞こえ、まるで自分の心臓の鼓動を聞いてるかのように私を錯覚させた。
ずっーとそうしていると、突然携帯の着信が鳴り出し、私は我に返った。
画面を確認するとフタバからであった。
時間的にお昼の休憩時間に私の事を心配してかけてくれたのだろう。
でも私はフタバからの電話には出なかった。何を話せばいいか分からないし、こんな姿フタバには到底見せられない。
あの時親友だなんて軽々しく言っちゃったけど、なんでも見せられる間柄じゃないよ私達。
携帯をそっと閉じ、私はテーブルの座布団に腰を下ろした。
目の前の景色にリィナとの記憶がちらつく。
ここでリィナのご飯を朝晩毎日食べて、それがもう自分の生活の中で当たり前のようになってた。
そうだここでリィナに勉強もつけてもらってーー。
思い出にふけり、それがもう叶わないことだと理解した瞬間、目頭が熱くなるのを感じた。
「私リィナに世話になりっ放しだ……」
「リィナに会ってから、はじめて自分に自信を持てたんだ、だけどやっぱり私一人じゃ駄目だよ」
私は不安に押し潰されそうで、テーブルに突っ伏した。
「リィナがいたから頑張れたんだ、リィナがいたからここまで来れたんだ。リィナがいなきゃ私何もできないよ。
ねぇー応えてよリィナ、大丈夫心配いらないって私に言ってよ」
声を張り上げ、天に向かって叫んだが、その心の叫びにリィナが答えてくれることはなかった。
私はうなだれながらテーブルに崩れるように突っ伏すと、積み重なった参考書やノートがテーブルの端からこぼれ落ちてしまった。
惨めな気持ちで参考書、ノートを拾い上げていくと1冊だけ私の字じゃない身に覚えのないノートが出てきた。
タイトルには『あなたのレシピ』と書かれていた。
ノートを開くとそのノートには今までリィナが作ってくれた料理の数々の調理法がびっしりと書かれていた。
私の苦手とする野菜もこうすれば、食べれると事細かく記載されており、そこには私の知らない彼女の努力の形がそこにあった。
「リィナが自分がいなくなっても私が困らないようにレシピを書き留めてくれたんだ」
私はそのノートから溢れ出る愛を感じながら、腕の中でノートを抱きしめ、彼女に語りかけた。
「リィナ私これからどうしたらいい?リィナは私にどうして欲しい?」
私はその答えを見つけられないまま、時間になり試験会場へと足を運べせた。少し早くついたが、みんな既に席についていた。
私は番号の指定された席につき、サイジョウさんが近くに居ないか周りを見渡してみたが、皆参考書を片手に視線を下げており、この広い会場では誰が誰だか判別は出来なかった。
みんなこの試験に必死だ。そうだろうな、だって試験の合格者は正答率9割の上位10名まで、参加者は50人を有に越してるだろうし、そんな甘い世界じゃない。私もこの日のためにずっと努力してきたんだ。
それなのにこの空間で私だけが仲間外れみたい。だって私の心の中は、この情熱に溢れた試験じゃなく、リィナのことで一杯なんですもの。
忘れたくないリィナのこと。でも忘れたくなかったお母さんの、顔も声も忘れてしまった。リィナのいう通り私はリィナのこともいとも簡単に忘れてしまうのかな。
私は目をつむり手を合わせ、信じてもいない神様に祈りを捧げた。都合がいいことだって自分でも分かってる。でも自分じゃもうどうすることもできないんだ。
神様もうわがままは言わないから、今日まで頑張ってきたんだ、一つだけ願いを叶えてよ。リィナにもう一度会いたいんだ。
いや私はもう何もいらないから、何も望まないから、だからリィナの幸せを叶えてよ。
すると頭の中に1つの疑問が下りてきた。『リィナの願いは?』
私ははっとなり目からウロコが落ちるかのように、その答えたを見つけた。
そうだリィナの願い、私知ってる。それができるのは神様じゃない、私だ。
そうリィナの願い、それは私がこの世界から抜け出して外の世界に出ること。
「私いかなきゃ、リィナが待ってる。今度は私がリィナにおかえりっていうんだ」
その答えにたどりついた時には、試験監督が試験ルールについて説明を進めており、皆が真剣に聞き入る中、私は気付くと座席から立ち上がって、周りの目を気にすることなく、会場の外へと駆け出していた。
その姿を他の受験者が何事かと見つめ、会場全体がざわつきはじめ、試験監督が静まるように注意をするが、この数の受験者達を統制するまでは至らなかった。
そんな大混乱の中、一人不安げな表情浮かべる少年がいた。サイジョウさんだ。遠目ながら走る少女の横顔に私の面影を感じ取ったからだ。
私が向かった先はおやっさんのバーだった。こんな時に頼れる人といえば、あの人達しかいないから。
「こんばんは」
私が入口からこっそりと申し訳程度に顔をちょこっと出すと、カウンター席からおやっさんが出迎えた。
「なんだよお前、リィナならいねーぞ」
「リィナの居場所なら分かったよ、マザーセントラルビルだ」
「マザーセントラル?ならいいじゃねーか、これで家出も解決だ」
「リィナの居場所はあそこじゃないよ、この世界の外にもう一つ、別の世界があるんだ。リィナと私でこの世界から抜け出す」
「クレアお前……」
突拍子もないセリフに呆然とするおやっさんだったが、私の真っ直ぐな眼差しをみて、ふざけて言っている訳じゃないのが分かり、笑うことはしなかった。
「でも一人じゃマザーセントラルに侵入できない。おやっさんこれで最後、力を貸して欲しい」
その言葉におやっさんは目を瞑り、煙草を深く吸うと穏やかに、やれやれと笑みを浮かべた。
「まーた問題児が厄介事を持ってきたか。さてどうしたもんかね、みんな?」
おやっさんがメンバーに視線を送ったが、その答えは今までの信頼関係で分かりきっており、皆の心は一つだった。
「捕まるのは慣れっこだからな、俺はスリルが得られるなら大賛成だぜ」
ジェイドさんは相変わらず前髪で目元を隠して、その表情をみせてくれないけど、本音は私のために賛成してくれたんだと思う。顔が隠れててもその優しさはずっと感じてた。
「あー俺達もクレアちゃんのためなら何日だって務所生活してやるよ」
メンバーのみんなが一斉に立ち上がり、みんな思い思いの言葉で私を励ましてくれた。
ある一人の方は除いてーー
「まったく、ここにいる奴らは馬鹿しかいないのかしら?あんたもどうせ引き受けるつもりなんだろ?」
レムルおばさんだ、みんな捕まって1番迷惑をこうむってるのはこの人だから、おばさんにはそれをいう権利がある。
「おばさんいつも迷惑掛けてごめんなさい」
私はおばさんに深く頭を下げた。いつまでも顔を上げない私を見兼ねてレムルおばさんが言った。
「乗り越えたのは一度や二度じゃないんだ、みんなが捕まっても店は私が切り盛りするよ」
「おばさん」
「はははなんだよレムルお前も賛成なんじゃねーか」
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