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第一章 前編
第8話 役人ベベット
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それからの私の生活は一転した。リップを中心にした生活にシフトしたのだ。
世話は基本私がしてるので一人で外出することは減り、お気に入りだったあの丘にもここ数日はずっと行けていないでいる。
あの小鳥が巣立つまでは通いたかったけど、あの子たちならきっと大丈夫だろう。自分で空も飛べるようになったし、すくすく育ってるに違いない。
リップもはじめに出会った時と比べると幾分たくましく成長したように思う。ずんぐりむっくりした体が心なしかゴツゴツしてきたような気がする。
「くあ」
鳴き声は相変わらず拍子抜けするような声で、恐ろしいドラゴンとは似ても似つかないけど、そこがリップの良いところね。
平和で穏やかな日々が続いていた。それはリップが家にきてから2週間後の昼過ぎのことだった。
「リップは?」
お母さんが言った。
「今寝かしつけた」
この日はお父さんは仕事に出かけお母さんと二人きりだった。
コンコンと扉から小さくノックする音が聞こえた。
「誰かしら?この村じゃこんなに遠慮あるノックする人なんていないのに」
お母さんが扉をあけると見かけない顔の中年の男性が立っていた。
制服に身を纏い、胸元には王都のエンブレムが飾られている。
役人だ、私は警戒すると共にそう確信した。
「これは失礼」
「あら役人の方かい」
「あーそうだ。集金係のベヘットっていうもんだ。あんた方、先月の税金が滞っているようだが」
「と言われてもないもんはないしねー」
お母さんが片手を頭に抱え困った様子。
「これは国民の義務なんでね。金がないなら、家の物を金にするしかねえなぁ。物食するぞ」
男は乱暴に家の中へと入り込んできた。
このままではまずかった。2階にはリップが寝ている、この男が2階に行かなくても、この騒ぎでリップが起きてしまえば見つかるのは必須だ。
どうすべきか、私は焦る心を静め考えを巡らす。
お母さんも1階にある物を次々に勧めていくがベヘットはどれも気に入らない様子。
「1階はどれもこれもガラクタしかなさそうだ、奥さん2階を案内してくれよ」
まずい、私はその言葉に背筋が凍りついた。それにはお母さんも言葉を失った。
「早く」
急かすベヘットの声にお母さんはしぶしぶ2階を案内する。
私は崩れこみ頭を抱えた。何もかもおしまいだ。
そう思った時だった。私の腕の中でチャリンと澄んだ音色がなった。
それは書庫で見つけたイヤリングだった。
「これだ」
「あのこれじゃダメでしょうか?」
私は階段を上るベヘットを制止するように叫んだ。差し出す手には宝石の赤くキラキラ光る輝きがあった。
ベヘットが目の色をかえ、宝石に釣られ階段を降りていく。
「あーこいつは上玉だ、嬢ちゃんいいもんもってるじゃねーか。それじゃー今回はこれでつらかります。次回の税金はちゃんと納めるように」
そういうとベヘットは早々に帰っていった。
「はぁ」
緊張の糸が切れたのか私はその場で崩れてしまった。
すかさずお母さんが私の元へ駆け寄った。
「大丈夫かいアサ?」
「平気だよ、少し怖かっただけ」
「それにしてもアサよかったのかい?大切にしてたイヤリングだろ?」
「いいの、片方は壊れてたみたいだし」
そうあの時リップの助けに応えたのは右側のイヤリングだけだった。左のイヤリングはなんの光も放たなかったのだ。
「ぎゃー」
2階から大きな鳴き声がした。
「あっリップだわ」
私は飛び起きリップの元へ急いだ。
リップの元につくとリップは足をバタバタさせ泣き叫んでいた。餌をあげてみるも食べようとしない、おねしょをしたわけでもなさそうだ。
「最近よく鳴くわね」
お母さんもリップが心配で見に来た。
「うん、なんだかお母さんが恋しいみたいなの」
私は不思議とリップの気持ちが分かった。言葉でうまく説明できないけど、心にスーと気持ちが伝わるのだ。まるでテレパシーのように。
「ほら大丈夫だから」
私はリップの頭を撫で、何度も安心できるようつぶやきかけた。
ようやく落ち着きを取り戻したのか、リップはまた眠り着いてしまった。
それからお父さんが仕事から帰ってきて、私たちは夕食を食べることにした。
世話は基本私がしてるので一人で外出することは減り、お気に入りだったあの丘にもここ数日はずっと行けていないでいる。
あの小鳥が巣立つまでは通いたかったけど、あの子たちならきっと大丈夫だろう。自分で空も飛べるようになったし、すくすく育ってるに違いない。
リップもはじめに出会った時と比べると幾分たくましく成長したように思う。ずんぐりむっくりした体が心なしかゴツゴツしてきたような気がする。
「くあ」
鳴き声は相変わらず拍子抜けするような声で、恐ろしいドラゴンとは似ても似つかないけど、そこがリップの良いところね。
平和で穏やかな日々が続いていた。それはリップが家にきてから2週間後の昼過ぎのことだった。
「リップは?」
お母さんが言った。
「今寝かしつけた」
この日はお父さんは仕事に出かけお母さんと二人きりだった。
コンコンと扉から小さくノックする音が聞こえた。
「誰かしら?この村じゃこんなに遠慮あるノックする人なんていないのに」
お母さんが扉をあけると見かけない顔の中年の男性が立っていた。
制服に身を纏い、胸元には王都のエンブレムが飾られている。
役人だ、私は警戒すると共にそう確信した。
「これは失礼」
「あら役人の方かい」
「あーそうだ。集金係のベヘットっていうもんだ。あんた方、先月の税金が滞っているようだが」
「と言われてもないもんはないしねー」
お母さんが片手を頭に抱え困った様子。
「これは国民の義務なんでね。金がないなら、家の物を金にするしかねえなぁ。物食するぞ」
男は乱暴に家の中へと入り込んできた。
このままではまずかった。2階にはリップが寝ている、この男が2階に行かなくても、この騒ぎでリップが起きてしまえば見つかるのは必須だ。
どうすべきか、私は焦る心を静め考えを巡らす。
お母さんも1階にある物を次々に勧めていくがベヘットはどれも気に入らない様子。
「1階はどれもこれもガラクタしかなさそうだ、奥さん2階を案内してくれよ」
まずい、私はその言葉に背筋が凍りついた。それにはお母さんも言葉を失った。
「早く」
急かすベヘットの声にお母さんはしぶしぶ2階を案内する。
私は崩れこみ頭を抱えた。何もかもおしまいだ。
そう思った時だった。私の腕の中でチャリンと澄んだ音色がなった。
それは書庫で見つけたイヤリングだった。
「これだ」
「あのこれじゃダメでしょうか?」
私は階段を上るベヘットを制止するように叫んだ。差し出す手には宝石の赤くキラキラ光る輝きがあった。
ベヘットが目の色をかえ、宝石に釣られ階段を降りていく。
「あーこいつは上玉だ、嬢ちゃんいいもんもってるじゃねーか。それじゃー今回はこれでつらかります。次回の税金はちゃんと納めるように」
そういうとベヘットは早々に帰っていった。
「はぁ」
緊張の糸が切れたのか私はその場で崩れてしまった。
すかさずお母さんが私の元へ駆け寄った。
「大丈夫かいアサ?」
「平気だよ、少し怖かっただけ」
「それにしてもアサよかったのかい?大切にしてたイヤリングだろ?」
「いいの、片方は壊れてたみたいだし」
そうあの時リップの助けに応えたのは右側のイヤリングだけだった。左のイヤリングはなんの光も放たなかったのだ。
「ぎゃー」
2階から大きな鳴き声がした。
「あっリップだわ」
私は飛び起きリップの元へ急いだ。
リップの元につくとリップは足をバタバタさせ泣き叫んでいた。餌をあげてみるも食べようとしない、おねしょをしたわけでもなさそうだ。
「最近よく鳴くわね」
お母さんもリップが心配で見に来た。
「うん、なんだかお母さんが恋しいみたいなの」
私は不思議とリップの気持ちが分かった。言葉でうまく説明できないけど、心にスーと気持ちが伝わるのだ。まるでテレパシーのように。
「ほら大丈夫だから」
私はリップの頭を撫で、何度も安心できるようつぶやきかけた。
ようやく落ち着きを取り戻したのか、リップはまた眠り着いてしまった。
それからお父さんが仕事から帰ってきて、私たちは夕食を食べることにした。
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