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第一章 前編

第19話 ジョセs大道芸人VS店主

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 「クソなんだその生き物は?音の正体はそいつって訳か」
 店主は耳を塞ぎなんとか耐えたようだ、リップが私に気を使いボリュームを下げてくれたのかもしれない。私もなんとか意識を取り戻し茂みから脱出できたが、ピンチであることには変わりはない。

 「まぁいい、こっちには銃火器があるんだ。大人しく従ってもらうぜ」
 店主が私の腕を掴み掛かろうとしようとしたその時だ。

 「あたしの連れに、その物騒なものを向けないでもおうか」
 ジョセの声だ。ジョセは店主の背後からそのまま彼を飛び越え、上空からナイフを投げ入れた。

 「ジョセ!!」
 私は安心感から顔を微笑ませ、彼女の名を叫んだ。
 ジョセの手から投げ込まれたナイフは的確に相手の得物をとらえ、店主の猟銃を確実に弾き飛ばした。

 「待たせたな」 
 ジョセは着地し、私の肩に手をぽんとのせ言った。

 「脅かせやがって、女が一人増えた所でなんになる。銃はもう一丁あるんだよ」
 店主は威勢よく懐から護身用の小型拳銃を取り出したが、拳銃はまたしても宙を舞うことになった。
 ジョセが店主が拳銃を構え切る前、拳銃の構え位置を予測さてナイフをなげ入れていたのだ。まさに早業だ、私にはナイフの動きをとらえることはできなかった。

 「オジさん実力に性別は関係ないぜ。女だからって相手を見くびると足元救われるぜ」
 ただでさえ切れ長な目が一段と鋭さをました。私は自分にいわれてる訳じゃないのに、ドキッとしてしまった。

 「今度はお前にナイフおみまいしてやろーか」
 ジョセがナイフを構えた途端店主は背中をむけ逃げ出してしまった。
 その背中に向けジョセがナイフ投げ込む。ナイフは店主の脇にそれ地面に突き刺さった。

 「ヒーーー」 

 「外れた」
 私は当たらなくてほっとした。するとすかさずジョセが私にツッコミを入れた。

 「外したんだよ。あんな小物のために人殺しの汚名をきるのはごめんだからね」 

 「ほら手貸すぜ」
 ジョセの差し出された手を握り私は立ち上がった。

 「ありがとうジョセ。でも逃がしてよかったの?」

 「大丈夫、あの先にはアタシたちの秘密兵器がいるからな。このまま挟み撃ちをしてやろうぜ。動けるか?」

 「うん」

 「リップ、リュックにお入り」

 「クー」
 ジョセはリップの姿をはっきり見たであろうが、その場では何も言わなかった。

 「クソまさかこんな結果になるとは足がつく前にこの村からでるか」
 店主が息をあらげながら必死に逃げていた。

 「うん?」
 店主が目の前の状況に足をとめた。店主の行く先にはポルンさんが道を塞いでいた。

 「なんだコイツ」
 店主も高身長ではあったが2メートル超えのポルンさんの敵ではなかった。
走る足が明らかに減速していった。

 「ポルンそいつだ。おかまいなしにお見舞いしてやれ」
 後を追ってきたジョゼの声が、ポルンさんに伝わると、ポルンさんは水を含んだかのようにほっぺを膨らませ、勢いよく必殺技を店主にお見舞いした。

 「ップハァーーー」
 ポルンさん十八番の火吹きだ。
 私は見るのはこれで二度目だけど、やっぱり迫力が凄い。
 店主は貯まらず後退するが、私たちと目が合った途端進路を左にむけた。

 するとリップがリュックから飛び出し店主の行く手を先回りして遮る。
 店主は小さなリップに怖じけることなくそのまま直進してくる。

 するとリップは大口をあけ、ポルンさんも顔負けの炎を口から吐き出したのだ。
 私がさっき宿部屋で見たものとはまるで比較にならない。ポルンさんの火吹きを二度みたことで野生の本能が目を覚ましたのかもしれない。

 店主は三方向から挟み撃ちにあい、最後の残る1本の道に逃げ出した。

 「残念ねオジさん、悪いけどこっちも行き止まりなのよ」
 暗闇の向こうから聞こえる色気を感じさせる声。
 姿を表したのはカトリーヌさんで手には鞭を握っており、それを馴れた手捌きで一振り。店主を瞬く間にぐるぐる巻きに縛り上げ、店主はバランスを崩しその場に倒れ込んだ。

 「よっ姉貴お見事」
 ジョセがカトリーヌさんをおだてるように言った。

 「イェイ、イェイ」
 カトリーヌさんが照れくさそうにピースをし、はしゃいでる姿をみるとなんとも微笑ましい気持ちになった。

 「ジョセちゃん、イイとこ持ってちゃってごめんなさいね。で、この後どうするの?」

 「そうだな。捕まえた後のことまで考えてなかったからなー」
 ジョゼが頭をかきながら困った様子でいると、周りの民家がぽつぽつと明かり灯りはじめた。静まりかえっていた住宅地がざわつきはじめた。

 「やべー少し派手にやり過ぎたみたいだ」

 「一旦宿屋に隠れましょう」
 私がそう提案し、私達は宿屋に向かって走った。ぐるぐる巻きにされた店主はポルンさんが担いでいって、リップは走る私を翼で追いかけ、私の「リュック」の合図で中に収まった。
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