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第一章 前編
第21話 残された者達へ
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私とリップは旅を再会させ、ジョセが言っていた山道へと足を踏み入れた。
先程とはうって変わって、登り傾斜がある道なので、荷物の重さも相まって、頬から汗が滴り落ちる。
ここの山はまだやさしい方だが、ルドワンの先の山脈は、これより傾斜があるのでジョセの言った通り、出来るだけ身軽な格好でないと通過は厳しいかもしれない。
少し休憩のつもりで、大木を背にもたれ私とリップは御飯を食べることにした。御飯といっても非常用の缶詰ではあるがルドワンに着くまでは我慢。
缶詰を食べ、お腹が膨れると眠気に襲れ気付けばそのまま眠ってしまった。
さすがに今夜は色々ありすぎて疲れてしまった。私は深い眠りについた。
夜はふけていたので数時間後には刻々と日がのぼりはじめ、私の家にも今日という朝を迎えようとしていた。それはいつもの朝とは違くて一家にとって大事件だったであろう。
始めに目を覚ましたのはお母さんだ。お父さんをベッドに残し、キッチンへと向かった。
お母さんは朝の支度があるのでいつも誰よりも早く起きる。
キッチンに向かう途中、お母さんは少し開いた扉を目にした。私の部屋だ。
「アサ起きてる?入るわよ。」
扉の隙間からお母さんが部屋を除き混むが、もちろんそこには誰もいるはずもない。
「もう出たのかしら?」
この時はまだ異変に気付く様子はなく、お母さんは一階へと降り、リビングを出てキッチンへ向かった。
リビングの机には手紙を置いてあったがお母さんは素通りしてしまった。
コンロの火つけ、いつものようにスープを煮立て時折味見をする。
味に満足いったようで鍋ごと持ち上げ、リビングへ向かった。
テーブルのなべじきにスープをおくとようやくお母さんの視線に便箋が目に入った。
「こんなものあったかしら?」
不思議そうに便箋を手に取り、裏返すと私の名前が書いてあり、送り主が私だと理解した。
「お父さん起きてちょうだい」
中身をみたお母さんが慌ててお父さんを起こした。
「どうした母さん」
お父さんは眠たい目を擦り、まだ事の重要さに気付いていない。
「アサがーー」
お母さんの緊迫な表情をみて、お父さんがはアサに何かあった事が分かった。
「これがテーブルにあってんです」
お父さんが手紙を受け取り中身をみて、ことの重大さを理解した。
「なんて事だ。アサの部屋を調べてみよう」
急いで私の部屋へといき、扉を開くとそこは物が散乱してまるで空き巣が入ったかのような光景が広がっていた。
「もしかしたら誘拐かもしれんな」
お父さんが部屋の状態からそう思うのも無理もないが、本当は私がただ散らかしたまま出て行っちゃっただけなんだけど。
「でもあれは確かにアサの字ですよ」
「脅されて書いたかもしれん」
「脅されて書いたとしたら、ここまで力強くは書けないでしょう」
そう言われお父さんは他に痕跡がないか部屋を見渡した。すると1つ目立つ赤い本を見つける。
それは竜の本だ。開いたまま落ちていた本を持ち上げ父母が目にしたのは、私宛の謎のメッセージだ。
「こんなもの一体どこで。アサがこれをみたということはもう私達のことを?」
お母さんが心配しきった顔でお父さんに聞き、お父さんは最悪のケースも考えお母さんには何も言えなかった。するとお母さん腰が抜けたように崩れ、今にも泣き出しそうだ。
「今はその心配よりアサが無事かどうかだ。これも運命のいたづらかもしれんな、私達の口からいう前にアサに知られてしまうとは……」
お父さんが何かに気付き、お母さんに本を見せる。
「この最後のページのを見ろ、まるで未来を予言してるようだ。
これが誰かが仕組んだ事だとしたらアサの身が危ないかもしれん」
「お父さんこれからどうしましょう」
「私はこれからアサを探しにいく。リップを母親の元に返しに行ったのだとしたら、アサはバルセルラに向かっているはずだ」
「私も行きます」
「お前はここに残るんだ。もしアサが帰って来たとき誰がこの家に迎えいれるんだ」
「でも……」
「私は一人でも大丈夫だ。母さんあの装備をもってきてくれ、すぐに支度だ」
「よもやまたこれを身につける事になろうとはな。しかし私の自慢の愛娘のためだ。今一度騎士に戻ろう」
「でもあなた今の体では」
「私は今でも鍛練をおこたったことは一度もない」
「あなた」
「アサが昔危険な目にあっただろ。それから先は、ワシはまたいつか家族に危険がおこるのではないかと不安が消えることはなかった。平穏な日々が続く中で無駄な努力のように思えていたが、全てはこの時のためだったんだ」
お父さんは装備をつけ、外にでると知り合いの友人から馬を借りたいとお願いしにいった。
「こんな早い時間にすまないな。馬は必ず返すよ」
「あんたにはいつも世話になってるからな。代金はいつでもいいぜ。気を付けてな」
事情を汲んで友人は快くお父さんに馬を貸してくれた。
「じゃー母さん行ってくるよ」
「あなた気を付けて下さいね」
「ああ、必ずアサを連れて戻ってくるさ」
お父さんは馬をロープでたたき王都バルセルラを目指し馬を走らせた。
先程とはうって変わって、登り傾斜がある道なので、荷物の重さも相まって、頬から汗が滴り落ちる。
ここの山はまだやさしい方だが、ルドワンの先の山脈は、これより傾斜があるのでジョセの言った通り、出来るだけ身軽な格好でないと通過は厳しいかもしれない。
少し休憩のつもりで、大木を背にもたれ私とリップは御飯を食べることにした。御飯といっても非常用の缶詰ではあるがルドワンに着くまでは我慢。
缶詰を食べ、お腹が膨れると眠気に襲れ気付けばそのまま眠ってしまった。
さすがに今夜は色々ありすぎて疲れてしまった。私は深い眠りについた。
夜はふけていたので数時間後には刻々と日がのぼりはじめ、私の家にも今日という朝を迎えようとしていた。それはいつもの朝とは違くて一家にとって大事件だったであろう。
始めに目を覚ましたのはお母さんだ。お父さんをベッドに残し、キッチンへと向かった。
お母さんは朝の支度があるのでいつも誰よりも早く起きる。
キッチンに向かう途中、お母さんは少し開いた扉を目にした。私の部屋だ。
「アサ起きてる?入るわよ。」
扉の隙間からお母さんが部屋を除き混むが、もちろんそこには誰もいるはずもない。
「もう出たのかしら?」
この時はまだ異変に気付く様子はなく、お母さんは一階へと降り、リビングを出てキッチンへ向かった。
リビングの机には手紙を置いてあったがお母さんは素通りしてしまった。
コンロの火つけ、いつものようにスープを煮立て時折味見をする。
味に満足いったようで鍋ごと持ち上げ、リビングへ向かった。
テーブルのなべじきにスープをおくとようやくお母さんの視線に便箋が目に入った。
「こんなものあったかしら?」
不思議そうに便箋を手に取り、裏返すと私の名前が書いてあり、送り主が私だと理解した。
「お父さん起きてちょうだい」
中身をみたお母さんが慌ててお父さんを起こした。
「どうした母さん」
お父さんは眠たい目を擦り、まだ事の重要さに気付いていない。
「アサがーー」
お母さんの緊迫な表情をみて、お父さんがはアサに何かあった事が分かった。
「これがテーブルにあってんです」
お父さんが手紙を受け取り中身をみて、ことの重大さを理解した。
「なんて事だ。アサの部屋を調べてみよう」
急いで私の部屋へといき、扉を開くとそこは物が散乱してまるで空き巣が入ったかのような光景が広がっていた。
「もしかしたら誘拐かもしれんな」
お父さんが部屋の状態からそう思うのも無理もないが、本当は私がただ散らかしたまま出て行っちゃっただけなんだけど。
「でもあれは確かにアサの字ですよ」
「脅されて書いたかもしれん」
「脅されて書いたとしたら、ここまで力強くは書けないでしょう」
そう言われお父さんは他に痕跡がないか部屋を見渡した。すると1つ目立つ赤い本を見つける。
それは竜の本だ。開いたまま落ちていた本を持ち上げ父母が目にしたのは、私宛の謎のメッセージだ。
「こんなもの一体どこで。アサがこれをみたということはもう私達のことを?」
お母さんが心配しきった顔でお父さんに聞き、お父さんは最悪のケースも考えお母さんには何も言えなかった。するとお母さん腰が抜けたように崩れ、今にも泣き出しそうだ。
「今はその心配よりアサが無事かどうかだ。これも運命のいたづらかもしれんな、私達の口からいう前にアサに知られてしまうとは……」
お父さんが何かに気付き、お母さんに本を見せる。
「この最後のページのを見ろ、まるで未来を予言してるようだ。
これが誰かが仕組んだ事だとしたらアサの身が危ないかもしれん」
「お父さんこれからどうしましょう」
「私はこれからアサを探しにいく。リップを母親の元に返しに行ったのだとしたら、アサはバルセルラに向かっているはずだ」
「私も行きます」
「お前はここに残るんだ。もしアサが帰って来たとき誰がこの家に迎えいれるんだ」
「でも……」
「私は一人でも大丈夫だ。母さんあの装備をもってきてくれ、すぐに支度だ」
「よもやまたこれを身につける事になろうとはな。しかし私の自慢の愛娘のためだ。今一度騎士に戻ろう」
「でもあなた今の体では」
「私は今でも鍛練をおこたったことは一度もない」
「あなた」
「アサが昔危険な目にあっただろ。それから先は、ワシはまたいつか家族に危険がおこるのではないかと不安が消えることはなかった。平穏な日々が続く中で無駄な努力のように思えていたが、全てはこの時のためだったんだ」
お父さんは装備をつけ、外にでると知り合いの友人から馬を借りたいとお願いしにいった。
「こんな早い時間にすまないな。馬は必ず返すよ」
「あんたにはいつも世話になってるからな。代金はいつでもいいぜ。気を付けてな」
事情を汲んで友人は快くお父さんに馬を貸してくれた。
「じゃー母さん行ってくるよ」
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「ああ、必ずアサを連れて戻ってくるさ」
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