アサの旅。竜の母親をさがして〜

アッシュ

文字の大きさ
63 / 102
第二章

第3話 旅の目的

しおりを挟む
 私はアザエルさんに連れていかれ、もう30分は経とうとしていた。
 「ねぇ一体どこまで行くつもり、もうエルモから大分離れたわよ。ねぇー聞いてる?」

 「うるさい小娘だ」
 アザエルさんは私に聞こえないボリュームでぼそぼそと呟いた。

 「ねぇそろそろ教えてくれてもいいんじゃない?私を連れてどうしようっていうのよ」
 それでもしつこく喋りかける私に、アザエルさんはようやく話す気になってくれた。

 「アルカハレム大陸の南に位置する村々で竜が目撃されたと報告を受けた。どうやらその力を悪用してるようなのだ。
 お前なら分かるだろ、あの力が人に与える危険性を」

 「私にその竜を退治をしろっていうの?私なんかよりあなたの方がよっぽど強そうにみえるけど」

 「ふっ勿論私が手を下せば、ことはすぐに解決するだろう。しかしこの世界の事は人間たちが解決すべしと竜王様から言伝をいただいている」

 「なるほどね竜王様が考えつきそうなことだわ」

 「見ろあの村だ」
 アザエルさんが視線を右に広がる小さな村に向けた。
 私も前かがみに下を見下ろしてみると、その村は火事でもあったかのように大地に黒いすすなようなものがこびりついていた。

 「なんだか随分とボロボロね、襲撃でも受けたのかしら」

 「その逆だ、襲撃をして村を奪ったのだ。それも一瞬にしてな」
 アザエルさんは感情なしに淡々と語ったが、私はその話を聞きゾっとしてしまった。
 私は真相を知るためにアザエルさんに聞いた。
 「竜がやったっていうの?」

 「そうだ。あの村サリサに黒き竜がいる、お前がこの先対立するであろうな」
 アザエルさんが言い終わると私は、村を見下ろす視界が乱れるのに気が付いた。

 直ぐ様アザエルに声を掛けた。
 「あっ、いけない。矢が飛んできてる、避けて」
 アザエルさんは視線を送らずとも風の動きで危険を察知したようで、大きく旋回して大量に放たれた矢を避けていった。

 「突然襲ってくるなんて随分と野蛮な人達ね」

 「奴らも竜が自分達以外にいるとは思っても見なかったのだろうからな。このまま目的地まで急ぐぞ」

 「きゃー」
 アザエルさんのスピードに一瞬体が浮き上がり、私はすぐに伏せアザエルさんの背中に必死にしがみついた。

 白き竜を目撃したサリサでは配備された弓兵達が、竜の目撃に動揺し小さな騒ぎになっていた。

 「撃ち方やめ、アーロイ様どう思いますか?さっきの飛行物体?」
 弓兵の部隊長とおもしき人物が言った。アーロイと呼ばれた人物は長い黒髪を背中までたらし、黒の鎧の上に黒のローブを着て、肌も小麦色の褐色である。
 年齢は30代前半程に見える。

 「さぁな双眼鏡で見ようとしたが、あーも高速で動かれては竜だと断定はできないが、背中に確かに人が乗っていたな。もし仮に竜なら近いうちにまた姿を現すだろう」
 アーロイさんがそういうと部隊を一旦下がらせた。



 私はアザエルさんに連れられ、サリサから少し離れた山の熊の洞穴なような場所に降り立った。

 「私に出来るのはここまでだ。あとはお前の仕事だ」
 アザエルさんは私を降ろすなり、淡々と言う。

 「私はいくら竜が悪くても命を奪ったりしたくない」

 「殺さずを突き通すなら、奴を戦闘不能にしろ。そしてこの笛を吹くがいい。私がすぐに迎えにいく」
 そう言われ小さな笛を手渡された。笛には紐がくくられており、私はその笛を失くさないよう首に掛けた。

 「分かったわ」
 
 「それと水だ。その土地では貴重になる、考えて使え」
 
 「ありがとう」 
 アザエルから手渡された水の容器はまるで竜の牙から作られたかのように白く先が尖ってる。私はその水筒にはホルダーがついていたので私は腰似巻いたベルトに牙の水筒をぶら下げた。

 「それでは検討を祈る」
 その言葉を最後にアザエルさんは大空へと飛び去ってしまった。

 私は一旦体を休めるために洞穴の奥を覗いてみた。どうやら熊やはたまた猛獣は住み着いてなさそうで安心した。


 その頃ジョセはリップの鼻を頼りに私の後を必死に追いかけていた。

 「リップ本当にこの先であってるのか?」

 「くぶー、くぶー」
 リップは揺るぎない自信でジョセに返した。

 「それならいいんけどな」
 
 
 サリサの村でリップが目撃され村ではまた弓兵が配備され、臨戦態勢の元アーロイさんがリップ達の姿を見にやってきた。

 「アーロイ様また竜と思しきものが」

 「こんな短時間に2頭もか、双眼鏡を」 
 部下の一人がアーロイさんに双眼鏡を渡した。

 「さっきと違い、大きさはそこまでないな。今度は生け捕りにしてやる」
 そう言うとアーロイさんは弓兵隊に待機命令を出した。

 ジョセとリップはそんなことはつゆ知らずに私の元を目指していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

隠れ居酒屋・越境庵~異世界転移した頑固料理人の物語~

呑兵衛和尚
ファンタジー
調理師・宇堂優也。 彼は、交通事故に巻き込まれて異世界へと旅立った。 彼が異世界に向かった理由、それは『運命の女神の干渉外で起きた事故』に巻き込まれたから。 神々でも判らない事故に巻き込まれ、死亡したという事で、優也は『異世界で第二の人生』を送ることが許された。 そして、仕事にまつわるいくつかのチート能力を得た優也は、異世界でも天職である料理に身をやつすことになるのだが。 始めてみる食材、初めて味わう異世界の味。 そこは、優也にとっては、まさに天国ともいえる世界であった。 そして様々な食材や人々と出会い、この異世界でのライフスタイルを謳歌し始めるのであった。 ※【隠れ居酒屋・越境庵】は隔週更新です。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

氷の公爵は、捨てられた私を離さない

空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。 すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。 彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。 アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。 「君の力が、私には必要だ」 冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。 彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。 レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。 一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。 「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。 これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

処理中です...