天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

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第十九章 トリックスター編

第53話‐2 盗みの神ヘルメス

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「ああ、伝令の神のヘルメスのこと?彼がどうかしたのかい?」
「あいつ、美少年達から引き抜きをしようとしてるらしい。この僕の目を盗んで」
「へぇ。ヘルメスがねぇ。どの子?」

「ナルキッソス君だ。確かにあいつはナルキッソス君を気に入っていたが。問題はそれだけじゃない。あいつ、僕達の天界アイドルプロジェクトを真似るつもりらしい」
「ほう…」

ロキは思わず声を荒げて叫んだ。


「僕が企画したものなのに!成功したのを見計らって模倣してくるなんて!あいつが別名で何て呼ばれてるか知ってるよね?」
「『盗みの神』だよね」
「ああ、そうだ。あいつは、成功した事業を模倣することで有名だ。しかも、僕が苦労して育ててきた子を引き抜こうとまでするなんて!」


ヘルメスは地球の神話において「盗みの神」としても有名だ。神話においては泥棒の守護神となっているが、本当に泥棒を守護しているわけではない。

彼がそう呼ばれるのは、天界において、彼は他人の成功した事業やアイディアを真似て流用することが非常に上手かったからである。


こうして彼は「盗みの神」という別名で呼ばれるようになったのである。


「ふーん。でも天界にアイドル文化を流行させるのが君の目的だったなら、別に他に現れてもいいんじゃない?真似されるなんてよくある話だよ」

「そうだけどさぁ。けど引き抜きは許せない!ナルキッソス君はこの僕が見つけ出したんだ。他の3人はすでに決まってたけど、その3人に劣らないほどの美少年を見つけ出すのにどれほど苦労したことか!それをあっさり横取りしようとするなんて!」




憤慨した様子のロキを見て、エロスはクスッと笑みを浮かべた。


「そうだなぁ。ガニュメデスが辞める上に引き抜きまでされるとなると、解散の危機だね」

エロスは他人事のようにそう言い放った。


(おやおや。どうする?アポロン。さっそく君がヘルメスに出し抜かれてしまったようだね。君が僕に勝てるかな?)

そう内心でほくそ笑むエロス。
彼にとって、天界アイドルプロジェクトは単なる遊びにしか過ぎないでいた。
娯楽として楽しもうとしているのである。


だがロキは違っていた。自分の考えた企画であり、成功させたいと本気で思っているのだ。

それを横から妨害されようとしているのは由々しき事態だった。


(くそ!あいつめ……。こうなったら直談判してやる!)
ロキはそう意気込むのだったーーー


第54話に続く・・・
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