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一話 鳥は行くままに
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空を見上げた。時間は午後の五時、夕立の時で、空は橙色と暗い青色へと姿を変えていった。そんな中、二羽のホシハジロが東の方へと旅立った。
二羽のホシハジロが飛んでいくのを悠々と見ていた少年がいた。少年は、心のどこかで旅の予感を感じていた。なぜそう思ったのか知らずに、少年は口輪を少しだけ上げ、鳥の旅立ちを見守っていた。
鳥が旅立つと、世界は夜の暗闇によって静かになった。少年は、鳥が見えなくなって、いなくなると帰路に立った。少年の目には、ボロボロになった街並みが見えた。街の臭いには、毎回鼻にツンとくるような腐敗臭が入ってくる。だから、少年は息を殺し、少しだけ足取りを早めて行く。その足取りはどんどんと早くなり、早歩きから小走りへ、小走りから駆けていく速さになった。少年の目は、街並みの決して明るくはない灯が過ぎていった。
やがて街の中央へと辿り着いた。街の中央には、噴水があり、水の宴会は決まった時間になると、水が溢れてゆく。水が踊りを始めると、それは見事なまでに綺麗で、中央部から勇ましいばかりに、他の水より高く、太く、勢いのある言わば、主役のような水の柱が立つ。あまりに勢いが強いのか、近くにいる人々を濡らしてしまう。小年もよく濡れては、上だけ裸で帰ってしまうことがある。でも小年はその場所が好きだった。そんな噴水場は、夜に動きを牽制されたかのように、静かで、水がチョロチョロとしか鳴っていなかった。辺を見回すと、皆誰かといて、それぞれ自分の住処へと話しながら帰ろうとしているようだった。それぞれの足音は、三つの方向から聞こえた。少年はその音を確認するために、音のする方向を確認した。
二人の老人は、西の方へと、
三人の中年は、北の方へと、
六人の若者は、南の方へと、
向かっていた。少年の家は、東の方向にあった。東の街は、この大きなスラム街でもとりわけ、治安が悪く、酷い腐敗臭を発する時がある。近くに川があり、普段は底が見え、魚がちらほらと見えるのだが、雨の激しい時期に入ると、川が表情を変えたように激変する。青い水が、茶色で濁り、酷い時は、東の街の一部を侵食し、家を水の大群に連れてゆく。そのような気まぐれの川の近くに少年の家がある。
少年の家は、橋の下にあり、日当たりが少しだけ悪い。早朝や遅い夜の時間の間は、橋を渡る人々の足音によってうるさいことがよくある。家の特徴は、木造で大半を占めており、補強の代わりに金属がちらほらと見える。川に侵食されるのではないかと、よく心配されるが、侵食されることは思いの外ない。橋を作った地形は地高が高く、東の街が川によって浸水する時に、人々は、橋の上へ行き身を守っている。少年の家は、橋の上へと行かなくても、身を守れるくらいの高さに家を置いてるので橋の上へと行く手間をはぶける。
少年は、気がついたら、家の前に着いていた。中央の噴水場から今日の出来事を振り返りながら帰ったら、見覚えのある扉が目の前にあるものだから驚いていた。
とりあえず家に入ってから考えようと思った少年は、鍵をポケットから取り出した。
鍵を鍵穴に刺し、直角に捻った。ガチャっと音を立て、扉を開けると、キィィッと鉄が軋んだ音色を出した。少年は、靴を玄関で脱ぎ捨て、家の鍵を閉めた。用心のためである。
そのまま、手を洗いにバスルームへと行き、手を洗い終えると、台所の横にある自室へと篭った。自室の匂いは、本と少年の汗の臭いがした。
「……くせぇ。」
と少年は言った。ふと鏡が目に映った。少年は、鏡の中にいる自分を見つめた。少年の髪は、動物の毛並みのように綺麗な茶色だった。毛は、ボサボサではあるが、光に反射するとより綺麗に茶髪が煌めく。頭の頂点には、一束のアホ毛が目立ち、髪型は、髪がかなり伸びていて、周りから見ると邪魔そうに見えるが、本人は気にしない。特徴的なのは、揉み上げの髪が比較的に長く、左の揉み上げには、大きな数珠が付けられていた。数珠は、緑色になっており、何か文字のような、紋章のようなものが見えた。
綺麗な髪の中に鋭い双眸が隠れていた。瞳の色は、珍しい赤色、いや紅色で、その瞳を見るとどこか燃えそうな不思議な感覚を覚える。この瞳と茶髪は、少年の先祖から続いてるらしい。少なくとも少年の亡き父や祖父がそうであったように。
少年の名は、『エル・シーレス』である。エルは、この大きなスラム街の出身で、一人暮らしである。幼い時に母を流行病で亡くし、父と祖父に育てられたが、父は、母を追うように肝臓を悪くし帰らぬ人となり、祖父と過ごすことになった。祖父は厳しくも優しく、エルを真っ直ぐに育てた。そんな祖父だが、数ヶ月前、エルに剣術と色々な知識、昔の世界地図を託して、息を引き取った。
エルはベッドに行って横たわった。そして、祖父から貰った世界地図を横目にしながら、今日の出来事を振り返る前に眠ってしまった。
二羽のホシハジロが飛んでいくのを悠々と見ていた少年がいた。少年は、心のどこかで旅の予感を感じていた。なぜそう思ったのか知らずに、少年は口輪を少しだけ上げ、鳥の旅立ちを見守っていた。
鳥が旅立つと、世界は夜の暗闇によって静かになった。少年は、鳥が見えなくなって、いなくなると帰路に立った。少年の目には、ボロボロになった街並みが見えた。街の臭いには、毎回鼻にツンとくるような腐敗臭が入ってくる。だから、少年は息を殺し、少しだけ足取りを早めて行く。その足取りはどんどんと早くなり、早歩きから小走りへ、小走りから駆けていく速さになった。少年の目は、街並みの決して明るくはない灯が過ぎていった。
やがて街の中央へと辿り着いた。街の中央には、噴水があり、水の宴会は決まった時間になると、水が溢れてゆく。水が踊りを始めると、それは見事なまでに綺麗で、中央部から勇ましいばかりに、他の水より高く、太く、勢いのある言わば、主役のような水の柱が立つ。あまりに勢いが強いのか、近くにいる人々を濡らしてしまう。小年もよく濡れては、上だけ裸で帰ってしまうことがある。でも小年はその場所が好きだった。そんな噴水場は、夜に動きを牽制されたかのように、静かで、水がチョロチョロとしか鳴っていなかった。辺を見回すと、皆誰かといて、それぞれ自分の住処へと話しながら帰ろうとしているようだった。それぞれの足音は、三つの方向から聞こえた。少年はその音を確認するために、音のする方向を確認した。
二人の老人は、西の方へと、
三人の中年は、北の方へと、
六人の若者は、南の方へと、
向かっていた。少年の家は、東の方向にあった。東の街は、この大きなスラム街でもとりわけ、治安が悪く、酷い腐敗臭を発する時がある。近くに川があり、普段は底が見え、魚がちらほらと見えるのだが、雨の激しい時期に入ると、川が表情を変えたように激変する。青い水が、茶色で濁り、酷い時は、東の街の一部を侵食し、家を水の大群に連れてゆく。そのような気まぐれの川の近くに少年の家がある。
少年の家は、橋の下にあり、日当たりが少しだけ悪い。早朝や遅い夜の時間の間は、橋を渡る人々の足音によってうるさいことがよくある。家の特徴は、木造で大半を占めており、補強の代わりに金属がちらほらと見える。川に侵食されるのではないかと、よく心配されるが、侵食されることは思いの外ない。橋を作った地形は地高が高く、東の街が川によって浸水する時に、人々は、橋の上へ行き身を守っている。少年の家は、橋の上へと行かなくても、身を守れるくらいの高さに家を置いてるので橋の上へと行く手間をはぶける。
少年は、気がついたら、家の前に着いていた。中央の噴水場から今日の出来事を振り返りながら帰ったら、見覚えのある扉が目の前にあるものだから驚いていた。
とりあえず家に入ってから考えようと思った少年は、鍵をポケットから取り出した。
鍵を鍵穴に刺し、直角に捻った。ガチャっと音を立て、扉を開けると、キィィッと鉄が軋んだ音色を出した。少年は、靴を玄関で脱ぎ捨て、家の鍵を閉めた。用心のためである。
そのまま、手を洗いにバスルームへと行き、手を洗い終えると、台所の横にある自室へと篭った。自室の匂いは、本と少年の汗の臭いがした。
「……くせぇ。」
と少年は言った。ふと鏡が目に映った。少年は、鏡の中にいる自分を見つめた。少年の髪は、動物の毛並みのように綺麗な茶色だった。毛は、ボサボサではあるが、光に反射するとより綺麗に茶髪が煌めく。頭の頂点には、一束のアホ毛が目立ち、髪型は、髪がかなり伸びていて、周りから見ると邪魔そうに見えるが、本人は気にしない。特徴的なのは、揉み上げの髪が比較的に長く、左の揉み上げには、大きな数珠が付けられていた。数珠は、緑色になっており、何か文字のような、紋章のようなものが見えた。
綺麗な髪の中に鋭い双眸が隠れていた。瞳の色は、珍しい赤色、いや紅色で、その瞳を見るとどこか燃えそうな不思議な感覚を覚える。この瞳と茶髪は、少年の先祖から続いてるらしい。少なくとも少年の亡き父や祖父がそうであったように。
少年の名は、『エル・シーレス』である。エルは、この大きなスラム街の出身で、一人暮らしである。幼い時に母を流行病で亡くし、父と祖父に育てられたが、父は、母を追うように肝臓を悪くし帰らぬ人となり、祖父と過ごすことになった。祖父は厳しくも優しく、エルを真っ直ぐに育てた。そんな祖父だが、数ヶ月前、エルに剣術と色々な知識、昔の世界地図を託して、息を引き取った。
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