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群雄進撃編
第362話 正義のスルタン
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ダヴーが見つめる視線の先、この尻屋港では、小型艇で上陸したトレビアン兵1000が、エスパ・ニャニャ兵3000と戦闘を繰り広げていた。
〔敵だ!青服共が上陸したぞ!〕
〔こんなにあっさり上陸を許すとは、海軍の奴らは何をやっているんだ?!〕
〔うわっ、来やがった!!〕
敵襲にエスパ・ニャニャ軍が慌てふためく中、付近に歌声が響き渡る。
オ パキャマラド パキャマラド
(進もう戦友よ 進もう戦友よ)
パオパオパンパンパン!
(進もう 進もう 進もう!)
オ パキャマラド パキャマラド
(進もう戦友よ 進もう戦友よ)
パオパオパ!
(進もう 進もう 進もう!)
〈そうだ!進め!進め!エジプトで死に損なった古強者共!〉
〈エスパ・ニャニャの臆病者共を蹴散らせ!〉
〈〈〈ラ・グランダルメ、ラ・メイユール!!!(大陸軍、最強!)〉〉〉
陽炎の精霊族と人間との混血の副官であり、ドゼーの双璧である魔法剣士『リディア・フェルナリエ』少佐の激で、士気を上げる兵士たち。
〈はっはっは!燃えろ!燃えろ!燃え尽きてしまえーーー!!!〉
〔ひぇー!見張り台に火が付いたぞ!〕
〔うぎゃ~!熱い!熱い!〕
赤と黒のビキニのような鎧を着たリディアが、愛剣《イグネウス》を振るうたびに、対峙した敵兵たちが炎に包まれる。
〔この女剣士、とんでもなく強いぞ!〕
〔青服共も、こっちの銃撃をものともせず、鼻歌交じりで突っ込んできやがる!〕
陽炎の加護を受け、一斉に突撃したネフェリス直属のドワーフ兵800は、軍歌『玉葱の歌』の歌詞を口ずさみながら、エスパ・ニャニャ兵を、炎が宿った銃弾と銃剣で次々と倒していく。
〈フフッ、相変わらずフェルナは熱苦しいですね〉
〈ならば私たちは、灼熱に燃える敵兵を冷やして差し上げましょう!〉
青と白の混ざったローブを纏う、氷霧(ひぎり)の精霊と契約した純血エルフの魔導士『イゼリナ・グレイスノア』少佐率いる魔法兵200は銃を構え、詠唱を唱え始める。
〈〈〈ひぎりの霜よ、我が銃口に宿れ〉〉〉
〈〈〈白零弾陣!!!(ネージュ・アンヴェルセ!!!)〉〉〉
〔あばば…ば…ば…〕
〔さ…寒い…〕
白氷種エルフの魔法兵から放たれた魔法弾は、命中と同時に凍気の爆裂と霧の結晶化を起こし、敵兵を次々と凍らせていった。
〈やるわよ、あなた達!一面を氷の世界に変えてしまいなさい!!!〉
〈〈〈ラ・グランダルメ・マジック・コンティナンタル、ラ・プリュ・フォルト!(大陸魔法軍・最強!!!)〉〉
調子に乗って来たイゼリナとその部下たちは、片っ端から付近の敵や物を凍らせ始めた。
〔だめだ…兵も指揮官も、質が違い過ぎる…〕
海防を任された、ノブレ男爵の副官『アルビエル』は呟く。
そう、ここで戦っているトレビアン兵は、弾も食料もない状態で、強国であるエジプト軍・大英海龍王国を相手に戦い抜いた強者たちである。
オ パキャマラド パキャマラド パオパオパ!
〔なんであいつら、鼻歌交じりに戦争が出来るんだよ?!〕
大声で歌いながら攻めてくるトレビアン兵たちに、エスパ・ニャニャ兵たちは、次第に恐怖を感じ始める。
〔やめろ!やめてくれ~!〕
〔もういやだ!俺たちは農民だ!あんな奴らと戦えるか~!!〕
〔こ、こら貴様等逃げるな!踏みとどまって戦うのだ!〕
隊を指揮する下士官の制止を振り切って、逃亡を始めるエスパ・ニャニャ兵たち。
実はここにいるエスパ・ニャニャ兵の殆どが、付近の植民地からかき集めた信者や奴隷に、最低限の武装を施した『即席兵』である為、戦闘自体が未経験の者ばかりなのである。
〔ノブレ男爵!ここで男爵自身が鼓舞しないと、味方が総崩れとなってしまいます!〕
馬に跨ったまま、味方の混乱を呆然と見つめていたノブレ男爵は、思いついたように副官へ命令する。
〔…アルビエルよ、私は報告の為本陣に戻る由、後の現場指揮は任せたぞ!〕
〈ノブレ男爵?!〉
戦争経験のない海防指揮官・ノブレ男爵は、副官であるアルビエルに全てを押し付けると、自身は丘の上にある豪商の家であった、司令本部へと逃げ帰ってしまった。
このように、現場を指揮する立場の貴族たちも、血統だけで官職に就いている者達が殆どである。
当然ながら兵を指揮する能力は全くなく、威張る以外の全ての事を、下級貴族の副官たちが取り仕切っていた。
〔イホ・デ・プタ!(くそったれ!)やってられるか!〕
アルビエルはバイコーン帽を地面に投げつけると、部下に白旗を上げるよう指示する。
〔よ、宜しいのですか?そのような勝手なことをしたら、男爵が激高しますよ?〕
心配する部下に、アルビエルはフン!と鼻を鳴らす。
〔構わん!あんな奴等に忠義を尽くすくらいなら、無理やり戦争をやらされている平民たちの命を救った方が遥かに良い!〕
(…まぁ、俺はただでは済まないだろうがな…)
こうして、覚悟を決めた副官・アルビエルの決断により、海防軍が守る港はあっさりと占拠された…。
制圧された港に降り立った、黒髪のエルフ『ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゼー』軍団長は、部下と双璧の二人が並んで立つもとへと向かう。
〈皆さん、長い船旅で疲れている中、本当によくやってくれました〉
ドゼーはバイコーン帽を胸に当て、感謝の意を表する。
〈水臭いぜ軍団長!それよりも聞いてくれ!あたいの活躍で無事港を占拠できたぜ!〉
〈何を言ってるのリディア!あなたが所構わず火を掛けるから、私の隊がどれだけ火消に大変だったか分かってるの?!〉
得意げに報告するリディアを、イゼリナがすかさず牽制する。
〈イゼリナ、お前こそ何言ってやがる!辺り構わず氷漬けにするから、敵兵も亜人の奴隷共も凍死寸前だったんだぞ!〉
〈だからそれは、あなたが船に火を掛け回ったせいでしょ!〉
〈しゃーねーだろ!そこに敵がいるんだから!〉
〈私だって同じですわ!〉
両者睨み合って一歩も引かない中、ドゼーは優しい笑みを浮かべ答える。
〈お二人とも立派でした。お陰で味方も、捕らえられていた亜人国の民たちも、誰一人失うことなく港を占拠出来ました〉
〈〈有難き幸せ!!〉〉
ヒートアップしていた二人だが、ドゼーからの感謝の言葉を聞くと、はっと我に返った二人は片膝を付く。
そんななか、リディアの部下が、手を後ろに縛り上げた敵の副官・アルビエルを連行してきた。
〔…あなたが海防指揮官・ノブレ男爵の副官・アルビエル大尉ですね?〕
〔…ふん、トレビアンの下種共の主が、気安く俺の名を呼ぶな!〕
暴言を吐くアルビエルを、いつもと変わらぬ優しい目で見据えるドゼー。
〔…チッ!誰かが勝手に白旗を上げなきゃ、今頃貴様がこうなっていただろうがな!〕
そう言い終えたアルビエルはその場に座り込み、ドゼーを睨みつけた。
〈…軍団長、こいつ燃やしていいですか?いや、ダメと言っても燃やしますけど!〉
〈…私も同意見です!リディアが燃やした後、私が氷の棺で固めて、この地に永遠に飾ってあげますわ!〉
敬愛する上司に暴言を吐いた敵の副官に、キレた双璧は剣と杖をかざす。
〈二人とも、おやめなさい!〉
〈しかし!こいつは…〉
食い下がる二人をドゼーは制すると、黒服を着たドゼーの特務部隊『ネビュルー』の隊長、『ミリエル・ヴァネッサ』大尉が現れ、片膝を付き報告を行う。
〔ドゼー様、丘の上にありました敵の司令部の制圧、完了致しました〕
〔司令部が落ちただと?!〕
敢えてエスパ・ニャニャ語で報告するミリエルの言葉を聞き、驚きを隠せないアルビエル。
(ははは…結局、自分が降伏の指示をしなくても、結果は同じであったか…)
敵の諜報員の言葉を聞いたアルビエルは、心の中で失笑する。
〔ありがとうミリエル大尉、ご苦労様でした〕
〔い、いえ。…それと、司令部を制圧中に、この者が逃げ込んで参りました〕
ドゼーの優しい言葉と笑みに、ミリエルは少し照れながら、バインドでグルグル巻きにされたノブレ男爵を、二人の前に放り投げた。
〔…海防司令官・ドン・バルタサール・デ・ラ・フガ・ノブレ男爵ですね?〕
穏やかな表情を引き締め、ドゼーは本人であることを確認する。
〔そ、そうだ!私はエスパ・ニャニャのノブレ男爵である!分かったなら早くこの縄を外してくれ!〕
震える声で願い出るノブレ男爵。
ドゼーは静かに頷き、部下たちはノブレ男爵のバインドを解除する。
〔ノブレ男爵、あなたが英断して下さったお陰で、こちらの損害も軽微で済みました。我々もその功績を認め、貴方を捕虜ではなく『賓客』としてお迎えする事と致します〕
〔英断?賓客?!〕
あまりの事態に困惑するノブレ男爵。
〔詳しい話はこちらの将軍も交えて、食事でもしながらお話し致しましょう〕
〔は、はぁ…〕
〈イゼリナ少佐、食事の用意が出来るまで、男爵がくつろげる部屋に案内してください〉
〈ビヤン・ルスュ!〉
イゼリナは一礼し、ノブレ男爵を連れて制圧した司令部へと戻っていった。
ドゼーは再びアルビエルに向き直る。
〔アルビエル大尉、これで宜しいのですね?〕
〔…ああ、そう取ってもらって構わない!〕
答えた後も、真っすぐな目でドゼーを見据えるアルビエルに対し、ドゼーは小さく頷く。
〈リディア少佐、彼を他の捕虜を集めている広場へ連れて行き、隷属契約を行ってください〉
〈…ついでにこいつを、一発だけ殴っていいですか?〉
〈…私が許可を出すとでも?〉
〈失礼しました!〉
〔さっさと立て、クソが!〕
リディアは不服そうに敬礼し、力任せにアルビエルを広場へと連行していった。
〈軍団長、あと、これを…〉
そう言ってミリエルは、スクロールに使う羊皮紙に書かれた文章を見せる。
〈…なるほど、これは使えますね〉
ドゼーはその羊皮紙の巻物を元に戻し、ミリエルへ渡す
〈これを、通訳できている『ティモ・クラウス』少尉に急いで渡して…〉
〈ビヤン・ルスュ!〉
耳打ちを終えたミリエルは、そのまま港へと走り去っていった。
(…さて、こちらは片付きましたので、次の要件を済ませましょう)
ドゼーはそう呟くと、制圧した司令部へと向かった。
〔敵だ!青服共が上陸したぞ!〕
〔こんなにあっさり上陸を許すとは、海軍の奴らは何をやっているんだ?!〕
〔うわっ、来やがった!!〕
敵襲にエスパ・ニャニャ軍が慌てふためく中、付近に歌声が響き渡る。
オ パキャマラド パキャマラド
(進もう戦友よ 進もう戦友よ)
パオパオパンパンパン!
(進もう 進もう 進もう!)
オ パキャマラド パキャマラド
(進もう戦友よ 進もう戦友よ)
パオパオパ!
(進もう 進もう 進もう!)
〈そうだ!進め!進め!エジプトで死に損なった古強者共!〉
〈エスパ・ニャニャの臆病者共を蹴散らせ!〉
〈〈〈ラ・グランダルメ、ラ・メイユール!!!(大陸軍、最強!)〉〉〉
陽炎の精霊族と人間との混血の副官であり、ドゼーの双璧である魔法剣士『リディア・フェルナリエ』少佐の激で、士気を上げる兵士たち。
〈はっはっは!燃えろ!燃えろ!燃え尽きてしまえーーー!!!〉
〔ひぇー!見張り台に火が付いたぞ!〕
〔うぎゃ~!熱い!熱い!〕
赤と黒のビキニのような鎧を着たリディアが、愛剣《イグネウス》を振るうたびに、対峙した敵兵たちが炎に包まれる。
〔この女剣士、とんでもなく強いぞ!〕
〔青服共も、こっちの銃撃をものともせず、鼻歌交じりで突っ込んできやがる!〕
陽炎の加護を受け、一斉に突撃したネフェリス直属のドワーフ兵800は、軍歌『玉葱の歌』の歌詞を口ずさみながら、エスパ・ニャニャ兵を、炎が宿った銃弾と銃剣で次々と倒していく。
〈フフッ、相変わらずフェルナは熱苦しいですね〉
〈ならば私たちは、灼熱に燃える敵兵を冷やして差し上げましょう!〉
青と白の混ざったローブを纏う、氷霧(ひぎり)の精霊と契約した純血エルフの魔導士『イゼリナ・グレイスノア』少佐率いる魔法兵200は銃を構え、詠唱を唱え始める。
〈〈〈ひぎりの霜よ、我が銃口に宿れ〉〉〉
〈〈〈白零弾陣!!!(ネージュ・アンヴェルセ!!!)〉〉〉
〔あばば…ば…ば…〕
〔さ…寒い…〕
白氷種エルフの魔法兵から放たれた魔法弾は、命中と同時に凍気の爆裂と霧の結晶化を起こし、敵兵を次々と凍らせていった。
〈やるわよ、あなた達!一面を氷の世界に変えてしまいなさい!!!〉
〈〈〈ラ・グランダルメ・マジック・コンティナンタル、ラ・プリュ・フォルト!(大陸魔法軍・最強!!!)〉〉
調子に乗って来たイゼリナとその部下たちは、片っ端から付近の敵や物を凍らせ始めた。
〔だめだ…兵も指揮官も、質が違い過ぎる…〕
海防を任された、ノブレ男爵の副官『アルビエル』は呟く。
そう、ここで戦っているトレビアン兵は、弾も食料もない状態で、強国であるエジプト軍・大英海龍王国を相手に戦い抜いた強者たちである。
オ パキャマラド パキャマラド パオパオパ!
〔なんであいつら、鼻歌交じりに戦争が出来るんだよ?!〕
大声で歌いながら攻めてくるトレビアン兵たちに、エスパ・ニャニャ兵たちは、次第に恐怖を感じ始める。
〔やめろ!やめてくれ~!〕
〔もういやだ!俺たちは農民だ!あんな奴らと戦えるか~!!〕
〔こ、こら貴様等逃げるな!踏みとどまって戦うのだ!〕
隊を指揮する下士官の制止を振り切って、逃亡を始めるエスパ・ニャニャ兵たち。
実はここにいるエスパ・ニャニャ兵の殆どが、付近の植民地からかき集めた信者や奴隷に、最低限の武装を施した『即席兵』である為、戦闘自体が未経験の者ばかりなのである。
〔ノブレ男爵!ここで男爵自身が鼓舞しないと、味方が総崩れとなってしまいます!〕
馬に跨ったまま、味方の混乱を呆然と見つめていたノブレ男爵は、思いついたように副官へ命令する。
〔…アルビエルよ、私は報告の為本陣に戻る由、後の現場指揮は任せたぞ!〕
〈ノブレ男爵?!〉
戦争経験のない海防指揮官・ノブレ男爵は、副官であるアルビエルに全てを押し付けると、自身は丘の上にある豪商の家であった、司令本部へと逃げ帰ってしまった。
このように、現場を指揮する立場の貴族たちも、血統だけで官職に就いている者達が殆どである。
当然ながら兵を指揮する能力は全くなく、威張る以外の全ての事を、下級貴族の副官たちが取り仕切っていた。
〔イホ・デ・プタ!(くそったれ!)やってられるか!〕
アルビエルはバイコーン帽を地面に投げつけると、部下に白旗を上げるよう指示する。
〔よ、宜しいのですか?そのような勝手なことをしたら、男爵が激高しますよ?〕
心配する部下に、アルビエルはフン!と鼻を鳴らす。
〔構わん!あんな奴等に忠義を尽くすくらいなら、無理やり戦争をやらされている平民たちの命を救った方が遥かに良い!〕
(…まぁ、俺はただでは済まないだろうがな…)
こうして、覚悟を決めた副官・アルビエルの決断により、海防軍が守る港はあっさりと占拠された…。
制圧された港に降り立った、黒髪のエルフ『ルイ・シャルル・アントワーヌ・ドゼー』軍団長は、部下と双璧の二人が並んで立つもとへと向かう。
〈皆さん、長い船旅で疲れている中、本当によくやってくれました〉
ドゼーはバイコーン帽を胸に当て、感謝の意を表する。
〈水臭いぜ軍団長!それよりも聞いてくれ!あたいの活躍で無事港を占拠できたぜ!〉
〈何を言ってるのリディア!あなたが所構わず火を掛けるから、私の隊がどれだけ火消に大変だったか分かってるの?!〉
得意げに報告するリディアを、イゼリナがすかさず牽制する。
〈イゼリナ、お前こそ何言ってやがる!辺り構わず氷漬けにするから、敵兵も亜人の奴隷共も凍死寸前だったんだぞ!〉
〈だからそれは、あなたが船に火を掛け回ったせいでしょ!〉
〈しゃーねーだろ!そこに敵がいるんだから!〉
〈私だって同じですわ!〉
両者睨み合って一歩も引かない中、ドゼーは優しい笑みを浮かべ答える。
〈お二人とも立派でした。お陰で味方も、捕らえられていた亜人国の民たちも、誰一人失うことなく港を占拠出来ました〉
〈〈有難き幸せ!!〉〉
ヒートアップしていた二人だが、ドゼーからの感謝の言葉を聞くと、はっと我に返った二人は片膝を付く。
そんななか、リディアの部下が、手を後ろに縛り上げた敵の副官・アルビエルを連行してきた。
〔…あなたが海防指揮官・ノブレ男爵の副官・アルビエル大尉ですね?〕
〔…ふん、トレビアンの下種共の主が、気安く俺の名を呼ぶな!〕
暴言を吐くアルビエルを、いつもと変わらぬ優しい目で見据えるドゼー。
〔…チッ!誰かが勝手に白旗を上げなきゃ、今頃貴様がこうなっていただろうがな!〕
そう言い終えたアルビエルはその場に座り込み、ドゼーを睨みつけた。
〈…軍団長、こいつ燃やしていいですか?いや、ダメと言っても燃やしますけど!〉
〈…私も同意見です!リディアが燃やした後、私が氷の棺で固めて、この地に永遠に飾ってあげますわ!〉
敬愛する上司に暴言を吐いた敵の副官に、キレた双璧は剣と杖をかざす。
〈二人とも、おやめなさい!〉
〈しかし!こいつは…〉
食い下がる二人をドゼーは制すると、黒服を着たドゼーの特務部隊『ネビュルー』の隊長、『ミリエル・ヴァネッサ』大尉が現れ、片膝を付き報告を行う。
〔ドゼー様、丘の上にありました敵の司令部の制圧、完了致しました〕
〔司令部が落ちただと?!〕
敢えてエスパ・ニャニャ語で報告するミリエルの言葉を聞き、驚きを隠せないアルビエル。
(ははは…結局、自分が降伏の指示をしなくても、結果は同じであったか…)
敵の諜報員の言葉を聞いたアルビエルは、心の中で失笑する。
〔ありがとうミリエル大尉、ご苦労様でした〕
〔い、いえ。…それと、司令部を制圧中に、この者が逃げ込んで参りました〕
ドゼーの優しい言葉と笑みに、ミリエルは少し照れながら、バインドでグルグル巻きにされたノブレ男爵を、二人の前に放り投げた。
〔…海防司令官・ドン・バルタサール・デ・ラ・フガ・ノブレ男爵ですね?〕
穏やかな表情を引き締め、ドゼーは本人であることを確認する。
〔そ、そうだ!私はエスパ・ニャニャのノブレ男爵である!分かったなら早くこの縄を外してくれ!〕
震える声で願い出るノブレ男爵。
ドゼーは静かに頷き、部下たちはノブレ男爵のバインドを解除する。
〔ノブレ男爵、あなたが英断して下さったお陰で、こちらの損害も軽微で済みました。我々もその功績を認め、貴方を捕虜ではなく『賓客』としてお迎えする事と致します〕
〔英断?賓客?!〕
あまりの事態に困惑するノブレ男爵。
〔詳しい話はこちらの将軍も交えて、食事でもしながらお話し致しましょう〕
〔は、はぁ…〕
〈イゼリナ少佐、食事の用意が出来るまで、男爵がくつろげる部屋に案内してください〉
〈ビヤン・ルスュ!〉
イゼリナは一礼し、ノブレ男爵を連れて制圧した司令部へと戻っていった。
ドゼーは再びアルビエルに向き直る。
〔アルビエル大尉、これで宜しいのですね?〕
〔…ああ、そう取ってもらって構わない!〕
答えた後も、真っすぐな目でドゼーを見据えるアルビエルに対し、ドゼーは小さく頷く。
〈リディア少佐、彼を他の捕虜を集めている広場へ連れて行き、隷属契約を行ってください〉
〈…ついでにこいつを、一発だけ殴っていいですか?〉
〈…私が許可を出すとでも?〉
〈失礼しました!〉
〔さっさと立て、クソが!〕
リディアは不服そうに敬礼し、力任せにアルビエルを広場へと連行していった。
〈軍団長、あと、これを…〉
そう言ってミリエルは、スクロールに使う羊皮紙に書かれた文章を見せる。
〈…なるほど、これは使えますね〉
ドゼーはその羊皮紙の巻物を元に戻し、ミリエルへ渡す
〈これを、通訳できている『ティモ・クラウス』少尉に急いで渡して…〉
〈ビヤン・ルスュ!〉
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転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
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