93 / 395
第92話 四面楚歌と垓下の歌
しおりを挟む
レッドキャップは道から外れ、草木をかき分けながら森の中を歩いていく。
やがて、湧水が出る場所につき、騅と共に喉を潤して休む。
突然、茂みが揺れ動く!
もはやこれまでか…と覚悟を決めたレッドキャップ。
「大王様?」
出てきたのは見覚えがある2頭の熊。
「お前たち!生きていたのか!」
「大王様こそよくぞご無事で!」
レッドキャップと咸陽から逃亡していた武将熊はここで邂逅した。
3頭は今まで起こったことの話をすり合わせる。
「そうか…咸陽は見たこともないもの達に落とされたのか…」
「はい、我ら2頭で『弁慶』なるものと戦ったのですが、全く歯が立ちませんでした」
「さらに他の者も尋常ではない戦闘力でございました」
「あのようなもの達がまだまだいるとなれば、この世界でウサギの国に勝てるものは殆どおりませんでしょう」
しばし沈黙する3頭。
「して、亜父殿は?」
その質問に、レッドキャップは胸をえぐられる気持ちになる。
「亜父は…亜父は私のせいで死んでしまった」
「私が亜父を信用できなかったから…」
肩を震わせてむせび泣くレッドキャップ。
2頭は悲しみを堪えつつ大王に進言する。
「大王様、ご自身を責めになりますな」
「亜父様もきっと大王のその様な姿は見たくないと思われますぞ」
3頭が肩を寄せて話す中、何処からもなく唄が聞こえてくる。
「この唄は…」
3頭ともその唄のことは全く知らない。
ただ、その唄を聞くと、自然と涙が溢れていた。
「何故だろう…聞いたこともない歌詞なのに涙が止まらぬ」
「だがこの旋律は…とても懐かしさを感じる」
「これはきっと…そう、遠い昔によく聞いていた故郷の唄だったのかもしれぬ」
3頭は唄を聞き只々涙を流した。
レッドキャップはふと小川の辺に咲いた花に気づく。
「あの美しい花は何というか?」
「あれは『虞美人草(ぐびじんそう)』でございます」
武将熊の言葉を聞き、何かを思い出したようにレッドキャップは唄い始める。
力山を抜き 気世を蓋ふ
(私の力は山をも動かし 気迫は世界を覆うほどだが)
時利あらずして 騅逝かず
(時勢は私に不利であり 騅は進もうとしない)
騅、逝かざるを 奈何(いかん)すべき
(騅が進まなければ 私に何ができるというのか)
虞や虞や 若(なんじ)を奈何(いかん)せん
(虞や虞や 私はあなたに何がしてやれるというのか)
「大王様、その唄は?」
「わからぬ…」
「ただ、自然にこの唄が浮かんできたのだ」
「そうですか…ただ、とても悲しい唄でございます」
焚火の中で涙を流す3頭。
やがて、レッドキャップは意を決したように武将熊に告げる。
「明日咸陽へ行き、ウサギに会ってみようと思う」
2頭の熊は驚き、レッドキャップを止める。
「大王様、なりませぬ!」
「ラビット王はともかく、まわりの者は決してそれを許しませぬ!」
「このままむざむざ捕まるくらいなら、隣国の『秦』や『宋』」
「離れておりますが『魏』を頼るべきです!」
2頭の必死の説得にレッドキャップは首を振る。
「私はな、興味があるのだよ」
「我々をここまで追い詰めた強敵のことが」
「もし会えば、なぜ私が負けたのかわかるかもしれないと思っておる」
「このまま他国でみじめに暮らすより」
「晴れた気持ちでウサギ共に会い、戦って散りたいのだ」
「大王様!」
悟った大王の足元で泣き続ける熊武将。
やがて、2頭は泣き止み拱手する。
「大王様、我々も最後までお供しますので宜しくお願いします!」
「すまぬな、このようなことに付き合わせて」
「いえ、我ら最後まで一緒に居られることに喜びを感じておりますので!」
その後、3頭は現世に生まれてからいろいろなことを語り明かした。
そして明け方、3頭は立ち上がり咸陽へと向かった。
やがて、湧水が出る場所につき、騅と共に喉を潤して休む。
突然、茂みが揺れ動く!
もはやこれまでか…と覚悟を決めたレッドキャップ。
「大王様?」
出てきたのは見覚えがある2頭の熊。
「お前たち!生きていたのか!」
「大王様こそよくぞご無事で!」
レッドキャップと咸陽から逃亡していた武将熊はここで邂逅した。
3頭は今まで起こったことの話をすり合わせる。
「そうか…咸陽は見たこともないもの達に落とされたのか…」
「はい、我ら2頭で『弁慶』なるものと戦ったのですが、全く歯が立ちませんでした」
「さらに他の者も尋常ではない戦闘力でございました」
「あのようなもの達がまだまだいるとなれば、この世界でウサギの国に勝てるものは殆どおりませんでしょう」
しばし沈黙する3頭。
「して、亜父殿は?」
その質問に、レッドキャップは胸をえぐられる気持ちになる。
「亜父は…亜父は私のせいで死んでしまった」
「私が亜父を信用できなかったから…」
肩を震わせてむせび泣くレッドキャップ。
2頭は悲しみを堪えつつ大王に進言する。
「大王様、ご自身を責めになりますな」
「亜父様もきっと大王のその様な姿は見たくないと思われますぞ」
3頭が肩を寄せて話す中、何処からもなく唄が聞こえてくる。
「この唄は…」
3頭ともその唄のことは全く知らない。
ただ、その唄を聞くと、自然と涙が溢れていた。
「何故だろう…聞いたこともない歌詞なのに涙が止まらぬ」
「だがこの旋律は…とても懐かしさを感じる」
「これはきっと…そう、遠い昔によく聞いていた故郷の唄だったのかもしれぬ」
3頭は唄を聞き只々涙を流した。
レッドキャップはふと小川の辺に咲いた花に気づく。
「あの美しい花は何というか?」
「あれは『虞美人草(ぐびじんそう)』でございます」
武将熊の言葉を聞き、何かを思い出したようにレッドキャップは唄い始める。
力山を抜き 気世を蓋ふ
(私の力は山をも動かし 気迫は世界を覆うほどだが)
時利あらずして 騅逝かず
(時勢は私に不利であり 騅は進もうとしない)
騅、逝かざるを 奈何(いかん)すべき
(騅が進まなければ 私に何ができるというのか)
虞や虞や 若(なんじ)を奈何(いかん)せん
(虞や虞や 私はあなたに何がしてやれるというのか)
「大王様、その唄は?」
「わからぬ…」
「ただ、自然にこの唄が浮かんできたのだ」
「そうですか…ただ、とても悲しい唄でございます」
焚火の中で涙を流す3頭。
やがて、レッドキャップは意を決したように武将熊に告げる。
「明日咸陽へ行き、ウサギに会ってみようと思う」
2頭の熊は驚き、レッドキャップを止める。
「大王様、なりませぬ!」
「ラビット王はともかく、まわりの者は決してそれを許しませぬ!」
「このままむざむざ捕まるくらいなら、隣国の『秦』や『宋』」
「離れておりますが『魏』を頼るべきです!」
2頭の必死の説得にレッドキャップは首を振る。
「私はな、興味があるのだよ」
「我々をここまで追い詰めた強敵のことが」
「もし会えば、なぜ私が負けたのかわかるかもしれないと思っておる」
「このまま他国でみじめに暮らすより」
「晴れた気持ちでウサギ共に会い、戦って散りたいのだ」
「大王様!」
悟った大王の足元で泣き続ける熊武将。
やがて、2頭は泣き止み拱手する。
「大王様、我々も最後までお供しますので宜しくお願いします!」
「すまぬな、このようなことに付き合わせて」
「いえ、我ら最後まで一緒に居られることに喜びを感じておりますので!」
その後、3頭は現世に生まれてからいろいろなことを語り明かした。
そして明け方、3頭は立ち上がり咸陽へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる