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仕方ないことです
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それから無事に隠れ家に帰宅した縁はまたもやアレンたちの熱い抱擁を受けた。
「遅くなってすみませんでした」
「無事ならいいおかえり」
「おかえり!」
無事を確かめるためだと思っていた手が妖しい動きをしてきたためはたき落としながら食堂へと向かおうとすれば、白い何かが横から飛びついてきた。
「わっ、な、なに、アズ?」
「………」
「アズ?」
何も言わず抱きつくアズを抱き抱えてやればギュッと首に手を回してくる。
見れば少々引っ掻き傷のようなものもある。
「ケンカしたらしいぞ」
「ケンカ?」
アズが?
人見知りで甘えっ子なアズが誰かとケンカするようには思えなかった。
「縁のことを言われたらしい。その…男なのにママはおかしいだろうと」
なるほど。それでアズが言い返したのだろう。
ケンカはいいことばかりではないが、こうして縁のために怒ってくれたのだと思えば嬉しくもある。
「それで泣いて縁を探したけどいないって分かったらさらにガキどもが騒ぎだしてな。男だから逃げたんだの、捨てられたんだと言うからさっきまで部屋にこもってた」
それはアズに悪いことをした。
縁のせいでそんなことになっていたとは。
「もちろんそんなこと言ってたガキどもは俺が殴り飛ばしておいたがな」
アレン。貴方は貴方で何してるんですか。
いくら腹が立ったからといって大人が子どもを殴るなどあってはならない。
「いや、ガキどもの親もその話しを聞いて自分の子を殴り飛ばしてたぞ」
獣人界での教育的指導なのだろか。
縁がそれをされたら首が捻り飛ぶ気しかしない。
「アズ?私のせいで色々言われたんですね。そばにいられなくてごめんね。……嫌いになりましたか?」
首にしがみつきながらもフルフルと首を振るアズをいい子と頭を撫でてやる。
「じゃあそんないい子のアズに今日は一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、今日は一緒に眠りましょうか」
最近はジークに任せっきりだった食事も、アレンたちと入ってばかりだった風呂も一緒だと言えばアズも嬉しそうに頷くのであった。
「ほんっとうにウチの息子がごめんなさい!」
「ウチの子も殴っておいたから」
「ウチはしばらく部屋から出さないことにしたわ!」
「恥ずかしいったらありゃしない。アズくんもごめんね」
アズを抱えたまま食堂へ向かえば、入った瞬間奥様方の謝罪の嵐だった。
この隠れ家では男同士の番がおらず子どもたちには珍しかったのだろう。
変だ変だと騒ぐ子どもたちに顔を青くした親たちが変なことではない!謝りなさいと殴り叱ったらしい。
どの世界でも母は強し。
殴られ、叱られた子どもたちはまだ不満そうではあったが皆謝ってくれた。
「今日はアズの好きなシチューですって。美味しそうですよ」
「………」
まだ気持ちの治りがつかないのか無言のアズにスプーンを差し出そうとし、やめてパンを持たせる。
「?」
不思議そうに見つめてくるアズに「見てて下さい」というとシチューが入った皿にパンを浸し口に入れる。
あまり行儀がいいとはいえないが、少しでも喜んでくれればとアズにもやらせてみれば恐る恐るシチューにパンを浸す。
「……ん!おいしいっ!」
「でしょう?」
パクパクと美味しそうに食べるアズに隣で見ていたアレンたちも真似すれば美味いなと凄い勢いで完食していた。
周りで見ていた住人たちも真似しては美味い美味いと声にしているのが聞こえる。
「今度一緒にドリアでも作ってみましょうか」
「どりあ?」
「シチューの美味しい食べ方です」
「!?つくるっ」
乳製品が好きなアズに提案すればキラキラと目を輝かせている。
包丁は握るなと言われていたが、そこは誰かに任せればいいだろう。
年齢が年齢だったので前世では作った回数は多くはないが上手くできることを祈ろう。
「俺も食べるぞ!」
「俺も」
自分たちも食べたいというアレンたちに頷いてやり、全て食べ終えるとアズと一緒に風呂に入る。
「アズは男のママは嫌じゃないですか?」
「ううん。アズのママはママだけなの」
色々言われただろうにそれでも縁をママと呼んでくれるアズが可愛くて仕方ない。
「ありがとうアズ。それならアズに1つ私の秘密を教えてあげますね」
「ひみつ?」
「そう。今日アズに色々言ってい子どもたちのママがいましたね。でもそのママたちの中でも私が一番アズのことが大好きです。他のどんな親子より私が一番ママとしてアズのことが大好きですよ」
「アズもママだいすき!」
聞く人がいればそれはただの惚気、親バカだというだろうが、今はアズと2人だけでママの秘密を知ったと喜ぶアズはそんなこと知るよしもない。
それからお互いに洗い合い風呂から上がると2人でベッドに入る。
「ママはアズおいてかない?」
本当の母親に捨てられたこともあるのだろう。
友達にも言われ不安そうな表情を浮かべるアズを抱きしめてやる。
「置いていきませんよ。アズが大きくなって、それでママなんかもう要らないって言うまで一緒にいます」
「いわない!アズはママいらなくない!」
「ならずっと一緒ですね」
「うん!」
嬉しそうに擦り寄ってくるアズの背をポンポンとリズムよく叩いてやれば、スッと眠りにつく。
これからもきっとこういうことは起きる。
今は獣人の中で、縁たちのことを理解してくれる人たちの中で生活しているからいいが、人間たちの中ではどうか分からない。
気持ち悪いと罵る人たちがきっと現れるだろう。
前世ではそれが怖くてずっと逃げていた。
でも今はみんながいる。
アレンが、セインが、アズが、スノーが。
みんなが縁のことを大好きだと言ってくれる。
ならば逃げない。逃げたくない。
縁を大好きだと言ってくれる人たちのために。
何を言われても縁を守ろうとしてくれたアズのように。
大好きな人たちのために生きてやろうと決めた縁であった。
「遅くなってすみませんでした」
「無事ならいいおかえり」
「おかえり!」
無事を確かめるためだと思っていた手が妖しい動きをしてきたためはたき落としながら食堂へと向かおうとすれば、白い何かが横から飛びついてきた。
「わっ、な、なに、アズ?」
「………」
「アズ?」
何も言わず抱きつくアズを抱き抱えてやればギュッと首に手を回してくる。
見れば少々引っ掻き傷のようなものもある。
「ケンカしたらしいぞ」
「ケンカ?」
アズが?
人見知りで甘えっ子なアズが誰かとケンカするようには思えなかった。
「縁のことを言われたらしい。その…男なのにママはおかしいだろうと」
なるほど。それでアズが言い返したのだろう。
ケンカはいいことばかりではないが、こうして縁のために怒ってくれたのだと思えば嬉しくもある。
「それで泣いて縁を探したけどいないって分かったらさらにガキどもが騒ぎだしてな。男だから逃げたんだの、捨てられたんだと言うからさっきまで部屋にこもってた」
それはアズに悪いことをした。
縁のせいでそんなことになっていたとは。
「もちろんそんなこと言ってたガキどもは俺が殴り飛ばしておいたがな」
アレン。貴方は貴方で何してるんですか。
いくら腹が立ったからといって大人が子どもを殴るなどあってはならない。
「いや、ガキどもの親もその話しを聞いて自分の子を殴り飛ばしてたぞ」
獣人界での教育的指導なのだろか。
縁がそれをされたら首が捻り飛ぶ気しかしない。
「アズ?私のせいで色々言われたんですね。そばにいられなくてごめんね。……嫌いになりましたか?」
首にしがみつきながらもフルフルと首を振るアズをいい子と頭を撫でてやる。
「じゃあそんないい子のアズに今日は一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、今日は一緒に眠りましょうか」
最近はジークに任せっきりだった食事も、アレンたちと入ってばかりだった風呂も一緒だと言えばアズも嬉しそうに頷くのであった。
「ほんっとうにウチの息子がごめんなさい!」
「ウチの子も殴っておいたから」
「ウチはしばらく部屋から出さないことにしたわ!」
「恥ずかしいったらありゃしない。アズくんもごめんね」
アズを抱えたまま食堂へ向かえば、入った瞬間奥様方の謝罪の嵐だった。
この隠れ家では男同士の番がおらず子どもたちには珍しかったのだろう。
変だ変だと騒ぐ子どもたちに顔を青くした親たちが変なことではない!謝りなさいと殴り叱ったらしい。
どの世界でも母は強し。
殴られ、叱られた子どもたちはまだ不満そうではあったが皆謝ってくれた。
「今日はアズの好きなシチューですって。美味しそうですよ」
「………」
まだ気持ちの治りがつかないのか無言のアズにスプーンを差し出そうとし、やめてパンを持たせる。
「?」
不思議そうに見つめてくるアズに「見てて下さい」というとシチューが入った皿にパンを浸し口に入れる。
あまり行儀がいいとはいえないが、少しでも喜んでくれればとアズにもやらせてみれば恐る恐るシチューにパンを浸す。
「……ん!おいしいっ!」
「でしょう?」
パクパクと美味しそうに食べるアズに隣で見ていたアレンたちも真似すれば美味いなと凄い勢いで完食していた。
周りで見ていた住人たちも真似しては美味い美味いと声にしているのが聞こえる。
「今度一緒にドリアでも作ってみましょうか」
「どりあ?」
「シチューの美味しい食べ方です」
「!?つくるっ」
乳製品が好きなアズに提案すればキラキラと目を輝かせている。
包丁は握るなと言われていたが、そこは誰かに任せればいいだろう。
年齢が年齢だったので前世では作った回数は多くはないが上手くできることを祈ろう。
「俺も食べるぞ!」
「俺も」
自分たちも食べたいというアレンたちに頷いてやり、全て食べ終えるとアズと一緒に風呂に入る。
「アズは男のママは嫌じゃないですか?」
「ううん。アズのママはママだけなの」
色々言われただろうにそれでも縁をママと呼んでくれるアズが可愛くて仕方ない。
「ありがとうアズ。それならアズに1つ私の秘密を教えてあげますね」
「ひみつ?」
「そう。今日アズに色々言ってい子どもたちのママがいましたね。でもそのママたちの中でも私が一番アズのことが大好きです。他のどんな親子より私が一番ママとしてアズのことが大好きですよ」
「アズもママだいすき!」
聞く人がいればそれはただの惚気、親バカだというだろうが、今はアズと2人だけでママの秘密を知ったと喜ぶアズはそんなこと知るよしもない。
それからお互いに洗い合い風呂から上がると2人でベッドに入る。
「ママはアズおいてかない?」
本当の母親に捨てられたこともあるのだろう。
友達にも言われ不安そうな表情を浮かべるアズを抱きしめてやる。
「置いていきませんよ。アズが大きくなって、それでママなんかもう要らないって言うまで一緒にいます」
「いわない!アズはママいらなくない!」
「ならずっと一緒ですね」
「うん!」
嬉しそうに擦り寄ってくるアズの背をポンポンとリズムよく叩いてやれば、スッと眠りにつく。
これからもきっとこういうことは起きる。
今は獣人の中で、縁たちのことを理解してくれる人たちの中で生活しているからいいが、人間たちの中ではどうか分からない。
気持ち悪いと罵る人たちがきっと現れるだろう。
前世ではそれが怖くてずっと逃げていた。
でも今はみんながいる。
アレンが、セインが、アズが、スノーが。
みんなが縁のことを大好きだと言ってくれる。
ならば逃げない。逃げたくない。
縁を大好きだと言ってくれる人たちのために。
何を言われても縁を守ろうとしてくれたアズのように。
大好きな人たちのために生きてやろうと決めた縁であった。
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