146 / 475
戸惑う
しおりを挟む
「筋肉ってどうすればつきますか?」
今までの人生において最も答えづらい質問だったに違いない。
黙り込むジンとマーガレットに何を思ったか、言い方は違えど同じことを繰り返して言われた時はさらに驚いた。
なんだその大事なことなので2回言いました的な!
ツッコミたいが、真剣な表情でこちらを見てくるエニシに何も言えず黙り込む。
き、気まずい!
これがエニシではない、他の冒険者連中であるならば無言で討伐依頼の紙を渡すか、ダンジョンにでも潜ってこいと言っていただろう。
だが実際に言ったのはエニシであり、そんなこと言えるわけもなければ、ムキムキになったエニシを見たくもない。
聴けば自分なりに色々試してはいたようだが、周りの止める声と身体の悲鳴にお手上げだったのだろう。
頼ってくれるは嬉しい。とても嬉しい。
だがそれが率先して応援できるものではなかった。
隣を見ればマーガレットも同じ気持ちなのだろう、気まずそうに視線を彷徨わせている。
黙り込む室内に、どうすればいいかと考えていればタイミングよくケイが泣いてくれ、ここぞとばかりにミルクを上げた方がいいと促す。
これで話は反らせただろうと安堵しお茶を飲んでいればーー
「で、何かいい方法はありませんか?」
「ぶうっ!?」
「ーーごほごほっ」
思いきり吹き出してしまった。
マーガレットは隣で咽せている。
何やってるんですかと言いながら濡れたテーブルを拭いてくれるエニシに謝りつつ、確認するように何がだい?と聞けばやはり筋肉の話しだった。
「その…無理してつける必要もないんじゃないかな?」
身体が悲鳴を上げているなら無理をすることはないと諭そうとするが、それではダメだと首を振られる。
「家族を守るためにも筋肉は必要です」
いやいやいやいや。いや、いやいやいやいや。
「そんなことないからね!?」
ぶっ飛び過ぎの発言にもうどうしていいか分からない。
「まぁ、それは結果ですね。単純に強くなりたいんです」
「いや、エニシ魔法使えんだからいいじゃん」
エルの助け舟にそうだそうだと頷くが、納得してはくれないらしい。
「確かに使えますが魔法はあくまで遠距離戦でしょ?近距離ではやはり筋肉がーー」
「いやいや、大の男バンバン投げ飛ばしておいて何言ってんの!?」
「あれは……護身術みたいなものですよ。取っ組み合いの喧嘩ではやはりーー」
「しないでね!?っていうかさせないから!」
「何故ですか?」
「「「………」」」
もうどうツッコんでいいのか分からない。
このなんとも真面目なのか、ふざけているのか分からない会話の中で分かったことは1つ。
「………ただ筋肉をつけたいだけなんだね?」
「はい」
迷いの一切ない返事。
先程から喋らないマーガレットをチラリと見れば、頭を抱えてしまっていた。
珍しい姿ではあったが気持ちは痛いほど分かる。
「えーと……えー、なんでそんな拘るんだい?」
何とか説得できるようにと情報収集してみる。
「?、男らしいでしょ?」
「「「………」」」
何故だろう、無性に頭を撫でてやりたくなった。というか撫でた。
マーガレットは疲れたというようにテーブルに突っ伏してしまう。
「そうだねぇ~。君も男の子だもんねぇ~」
「はい?最初からそう言ってたじゃないですか」
あまりに大人びた行動ばかり見てきたため、そんな歳相応の可愛さがあるとは思っていなかった。
ジンも昔は騎士である義理の兄に憧れたものである。
可愛いなぁ~と撫でていたが、そんなことより何かないですか?というエニシにどうしたものかと考える。
そんな可愛いお願い叶えてやりたくもあるが、やはりムキムキなエニシは見たくない。
「男らしさを求めてるだけなんだったら問題ないんじゃないかな?」
「え?」
「君は十分男らしいよ。その言葉然り、その行動然り」
突拍子もないことばかりするエニシには驚かされるが、その決断力と行動力はとても男らしい。
あまりに立派過ぎて怪我をしないか心配は尽きないが。
「私…男らしい、ですか?」
「あぁ」
「そうだね」
「そうそう」
「………」
ここぞとばかりにマーガレットとエルも参戦する。
黙り込むエニシにやっと納得してくれたようだと安堵した途端ーー
「…なら、あとは外見だけですね!」
「「「………」」」
という言葉と笑顔に3人とも撃沈するのであった。
我が孫に今日も今日とて振り回されるジンたちである。
「…………とりあえず肉でも食べてればいいんじゃないかな?」
説得を諦めた投げやりなジンの言葉に、しかしエニシは嬉しそうに頑張ります!と力こぶを作るのであった。
今までの人生において最も答えづらい質問だったに違いない。
黙り込むジンとマーガレットに何を思ったか、言い方は違えど同じことを繰り返して言われた時はさらに驚いた。
なんだその大事なことなので2回言いました的な!
ツッコミたいが、真剣な表情でこちらを見てくるエニシに何も言えず黙り込む。
き、気まずい!
これがエニシではない、他の冒険者連中であるならば無言で討伐依頼の紙を渡すか、ダンジョンにでも潜ってこいと言っていただろう。
だが実際に言ったのはエニシであり、そんなこと言えるわけもなければ、ムキムキになったエニシを見たくもない。
聴けば自分なりに色々試してはいたようだが、周りの止める声と身体の悲鳴にお手上げだったのだろう。
頼ってくれるは嬉しい。とても嬉しい。
だがそれが率先して応援できるものではなかった。
隣を見ればマーガレットも同じ気持ちなのだろう、気まずそうに視線を彷徨わせている。
黙り込む室内に、どうすればいいかと考えていればタイミングよくケイが泣いてくれ、ここぞとばかりにミルクを上げた方がいいと促す。
これで話は反らせただろうと安堵しお茶を飲んでいればーー
「で、何かいい方法はありませんか?」
「ぶうっ!?」
「ーーごほごほっ」
思いきり吹き出してしまった。
マーガレットは隣で咽せている。
何やってるんですかと言いながら濡れたテーブルを拭いてくれるエニシに謝りつつ、確認するように何がだい?と聞けばやはり筋肉の話しだった。
「その…無理してつける必要もないんじゃないかな?」
身体が悲鳴を上げているなら無理をすることはないと諭そうとするが、それではダメだと首を振られる。
「家族を守るためにも筋肉は必要です」
いやいやいやいや。いや、いやいやいやいや。
「そんなことないからね!?」
ぶっ飛び過ぎの発言にもうどうしていいか分からない。
「まぁ、それは結果ですね。単純に強くなりたいんです」
「いや、エニシ魔法使えんだからいいじゃん」
エルの助け舟にそうだそうだと頷くが、納得してはくれないらしい。
「確かに使えますが魔法はあくまで遠距離戦でしょ?近距離ではやはり筋肉がーー」
「いやいや、大の男バンバン投げ飛ばしておいて何言ってんの!?」
「あれは……護身術みたいなものですよ。取っ組み合いの喧嘩ではやはりーー」
「しないでね!?っていうかさせないから!」
「何故ですか?」
「「「………」」」
もうどうツッコんでいいのか分からない。
このなんとも真面目なのか、ふざけているのか分からない会話の中で分かったことは1つ。
「………ただ筋肉をつけたいだけなんだね?」
「はい」
迷いの一切ない返事。
先程から喋らないマーガレットをチラリと見れば、頭を抱えてしまっていた。
珍しい姿ではあったが気持ちは痛いほど分かる。
「えーと……えー、なんでそんな拘るんだい?」
何とか説得できるようにと情報収集してみる。
「?、男らしいでしょ?」
「「「………」」」
何故だろう、無性に頭を撫でてやりたくなった。というか撫でた。
マーガレットは疲れたというようにテーブルに突っ伏してしまう。
「そうだねぇ~。君も男の子だもんねぇ~」
「はい?最初からそう言ってたじゃないですか」
あまりに大人びた行動ばかり見てきたため、そんな歳相応の可愛さがあるとは思っていなかった。
ジンも昔は騎士である義理の兄に憧れたものである。
可愛いなぁ~と撫でていたが、そんなことより何かないですか?というエニシにどうしたものかと考える。
そんな可愛いお願い叶えてやりたくもあるが、やはりムキムキなエニシは見たくない。
「男らしさを求めてるだけなんだったら問題ないんじゃないかな?」
「え?」
「君は十分男らしいよ。その言葉然り、その行動然り」
突拍子もないことばかりするエニシには驚かされるが、その決断力と行動力はとても男らしい。
あまりに立派過ぎて怪我をしないか心配は尽きないが。
「私…男らしい、ですか?」
「あぁ」
「そうだね」
「そうそう」
「………」
ここぞとばかりにマーガレットとエルも参戦する。
黙り込むエニシにやっと納得してくれたようだと安堵した途端ーー
「…なら、あとは外見だけですね!」
「「「………」」」
という言葉と笑顔に3人とも撃沈するのであった。
我が孫に今日も今日とて振り回されるジンたちである。
「…………とりあえず肉でも食べてればいいんじゃないかな?」
説得を諦めた投げやりなジンの言葉に、しかしエニシは嬉しそうに頑張ります!と力こぶを作るのであった。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
3,609
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる