二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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寝なさい

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 「どうしてこうなっているんですか?」

 「君のおかげだな」

 「ほぅ。私が悪いと?」

 「…………」

 顔を逸らすのは分が悪いと分かっているからであろう。
 久しぶりに会ったレオナルドの顔は明らかに具合が良いとは言えず、むしろいつ倒れてもおかしくないのではと思えるほど顔色が悪い。
 回復薬入りの飴を渡しておいたにもかかわらず。
 どういうことかと問い詰めてみれば飴によって身体的負担が軽くなったため仕事が捗り、そのせいで余計に多くの仕事をこなしていたらしい。
 そんな日が続けばいくら飴を舐めていたとはいえ身体は不調を訴え結果こうなるわけである。

 「私は貴方の負担を軽くするためにあれを渡したんです。決してより多くの仕事をこなさせるためではありません」

 「…………分かっている」

 「分かっていてこの結果ですか?」

 黙り込む男に大きく溜息をつくと隣に腰掛けるアル爺を見る。

 「なんで注意しなかったんですか」

 「儂はしたぞ。したがこやつが聞かなかったんじゃ。なのでお前さんを呼んだ」

 きっとアル爺のことだ、心配する言葉をかけながらも日頃の行いのせいでレオナルドに素直に聞いてもらえなかったのだろう。
 常日頃からかって遊んでいるからだ。
 
 「言い方が悪かったんですよ。ちゃんと心配だから休めと言ったんですか?」

 「………」

 この大人たちは。
 
 「もういいです。宰相様は今すぐ休んで下さい。アル爺は分かるようなら書類の整理を。私も出来るだけ手伝いますので」

 「待て。そんなこと勝手にーー」

 「分からないようなら手は出しませんよ。この国のことに興味はありませんので情報を洩らすということも心配しなくて結構です。貴方はそこで大人しく休んでいなさい」

 問答無用で手を引っ張っていくと空いていた長椅子にレオナルドを横にさせる。

 「大丈夫です。勝手に書類を持ち出すなんてことしません。ほんの数分横になるだけでも違いますよ。ほら目を閉じて。そう……ゆっくり息を吸って……吐いて……吸って……吐いて…………お休みなさい」

 やはり身体は限界だったのだろう、すぐに眠りについたレオナルドを起こさぬよう目蓋に乗せていた手をそっと離す。

 「……寝たか?」

 「はい。倒れてないのが不思議ですよ。どれだけ徹夜したんですか」

 「すまんな。いくら儂等が言っても聞かんでな。むしろ儂等が言えば言うほどムキになってしもうて」

 飴の効果もありまだやれると思ったのだろう。
 無理をさせるために渡したわけではないのだが。

 「起きるまでゆっくりさせてあげましょう。補佐の方とかいないんですか?」

 何度もここへ来てはいるがそれらしい人物を見たことは一度もなかった。

 「いたんじゃがこやつがクビにしおった。まぁ裏で金を横流ししとった挙句、王族の情報まで漏洩しとったから当たり前といっては当たり前じゃがな」

 碌な人間がいないらしい。
 その上縁がエリックのことを頼んだことも彼には負担になっていたのだろう。

 「この感じなら数時間は起きないでしょう。それまで私たちで出来ることをしておきましょう」

 「分かった分かった」

 処理を出来なくともやりやすいように書類を纏めておくことぐらいなら縁にも出来る。

 「邪魔が入らないよう扉に何か貼っておきましょう」

 安眠を邪魔されないようデカデカと立ち入り禁止の紙を貼ってもらうのであった。
 これで入ってくる者はいないだろう。
 逆に入ってくる者がいるとすれば何かやらかそうとしている者に他ならないのだ。

 「それにしてもお前さんに頼んで正解じゃったな。あんなに素直に聞くとは思わなんだ」

 人に頼んでおいてそれはどうなのか。
 皆はレオナルドを気難しい男というが、縁にはそれなりに素直であることをアル爺は気付いていたのだろう。

 「どうせならエリックも呼んできましょう。私たちが駄目でも王子なら問題ないでしょ」

 「王子自ら手伝わせるなぞ剛毅じゃな」

 「自国のことを知る良い機会でしょ」

 普通なら有り得なくとも、これから王となるならば経験しておいて損はないだろう。
 可能ならば来て欲しいと頼めば通信を切って数分足らずでエリックが走り込んでくるのであった。
 事情を話せば快く引き受けてくれ3人で協力して書類整理に勤しむ。

 「エリックは宰相様のこと怖かったりしますか?」

 ふと気になり聞いてみれば意外にも首を振られる。

 「確かに以前までならそう思ってましたけど、エニ…あの、母上と話しているのを見てからあまりそう思わなくなりました」

 未だ慣れないのかぎこちない呼び方に、無理しなくてもいいと言ってみたのだが母上と呼びたいというエリックの意思を尊重した。

 「彼は聞けばちゃんと答えてくれる優しい方ですよ。ただ良くも悪くも忙しい方ですからね。無駄やためにならないと判断すればあっさり切り捨てられるんです」

 そのせいで冷たく感じることがあるのかもしれないが、誰だって忙しい中無駄なことをさせられたら苛立ちもするだろう。
 足を引っ張ることしかしないならば切り捨てられて当然である。

 「なので今も色々とエリックが教わっていられるのは彼が貴方を認めているということです。言葉にしなくとも彼はちゃんと貴方の頑張りを見てくれているんですよ」

 良かったねと微笑めばエリックも嬉しそうに笑って頷くのであった。


 
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