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わーお
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「助かった。礼を言う人間」
「………?」
声が聞こえた。それも目の前から。
だが目の前にいるのは先程助けたばかりの狼しかいない。
「どこを見ておる?ここだ」
いったいどこから聞こえるのだろうと周りを見回していたが、こちらを見ろとばかりにその大きな舌で顔を舐められた。
「もしかして貴方が喋りましたか?」
そんなまさかと思いながらも尋ねてみれば、そうだと頷かれる。
わーお、すごい。
「さっきまで喋れてませんでしたよね?お腹が空いて力が出なかったとかですか?」
「そうではない。従魔として契約したが故だ。助けてくれたことに礼を言う。ありがとう」
「いいえ、助けられてよかった。もう身体は大丈夫ですか?」
魔力がご飯だとエルが言っていたため渡してみたが、どこか不具合はないかと聞く。
「どこも問題はない。むしろ良すぎるくらいだ。其方の魔力はとても美味いな」
人間にとってのご飯と同じように、魔獣にとっても魔力によっては美味い不味いがあるらしい。
不味いならともかく美味いなら何も問題はない。
「自己紹介がまだでしたね。私は縁と言います」
「エニシ、か。これからよろしく頼む。我に名はないが、人はフェンリルと呼ぶ」
ならば何と呼べばいいか聞けば好きにしろと言われた。
「ならフェ、フェ……フェル、いや、フリ……あ、リルでもいいですか?」
「リル、か。構わん。」
ブンブンと尻尾を振っていることから気に入ってくれたようだ。
ならばと思いきって抱きついてみれば、ふわふわの柔らかい毛に受け止められる。
「ふふふふ。あー気持ちいい、ふわふわですね」
「エニシのおかげだ。にしても我にこのように抱きついてくるとは少々警戒心がなくはないか?」
「警戒する必要がないじゃないですか。これからはリルも家族なんですから。家族を抱きしめても何も問題はないです」
スノーのすべすべした皮膚も好きだが、リルのふわふわの毛も捨てがたい。
アレンたちにもふわふわがあるが触ると逆にナニをされるか分からないのでしない。
昔ペットを飼いたいと両親に言ったことがあったが、父親がアレルギー持ちだったため飼えず、ずっと憧れていたのだ。
「…………家族」
「……もしかして嫌でしたか?」
契約する前は言葉が交わせず詳しくは話せていなかったが、これはもしかしたらリルには迷惑だったのかもしれないと謝ろうとすれば、何故か撫でろとばかりに頭を押し付けてきた。
「其方がそこまで言うなら家族になってやろう。ほれ、いくらでも触れるがいい」
可愛い。
そのまま思う存分撫でさせてもらっていれば双子も目を覚ましたため皆でご飯を食べるのであった。
「にしても大きいリルもカッコイイですけど、ここまで大きいと家に入れますかね?」
「ムリでしょ」
さてどうしたものか。
このまま森に住んでもらっていても構わないのだが、契約主は定期的に従魔に魔力を渡さなければならないと言われ出来ることなら一緒に暮らしたかったのだ。
「大きいと問題があるのか?ならばある程度は変えられるから気にすることはない」
「…………え?」
どういうことだと聞く前にその場で一回転したリルが、次の瞬間には子犬ほどの大きさに変わっていた。
………何が起こった?
「リ、リル?」
確認するように呼んでみれば、やはりというかその子犬はリルだったようで何だ?と首を傾げている。
「ち、ちっちゃくなっちゃった……」
どんな手品だ。
とりあえず子犬姿になった可愛いリルを撫で回して精神安定を図る。
やって落ち着いてきた頃どういう事だとリルに聞いてみれば、これも従魔契約の中の一つらしい。
「やはり側にいて動き回るには少々問題があるからな。このように広い場所でなければ邪魔にしかならぬだろう」
凄い、凄すぎる。
子狼とほとんど変わらない大きさで親子というより兄弟に見える。
「ね、ねぇコイツいきなりチビになったんだけど…」
目を見開き驚くエルたちにもしや今の会話が聞こえてなかったのかと首を傾げれば、従魔の声を聞くことが出来るのは契約者のみだとリルが教えてくれた。
それからエルたちにもきちんと説明すれば驚きながらも信じてくれた。
「これなら一緒に暮らせますね」
よかったよかったと頷く縁に隣でエルがそれでいいのかと頭を抱えていたが見て見ぬフリが出来る大人な縁であった。
「そういえばお子さんは何て名前なんですか?」
「ん?言ってなかったか?この子は我の子ではない。最近森で拾った子だ」
………………なんですと?
そんな話し聞いてないと詳しく説明を求めれば、どうやら数ヶ月前に森に打ち捨てられていたのを助けたらしい。
「この子は魔獣ではなく普通の獣でな、魔獣ならば魔力譲渡により回復も出来たのだろうがそれも出来ず参っておった」
怪我する子狼を放って狩りにも行けず、行けたとしてもまだ身体が出来上がっていない子どもに生肉を与えることも出来ないため困っていたようだ。
リルも雄であるため母乳など出せるはずもなく、弱っていく子狼に自身の食事も忘れていたのだろう。
衰弱する身体で見つけた餌(縁たち)に腹を満たそうと思ったらしい。
「………?」
声が聞こえた。それも目の前から。
だが目の前にいるのは先程助けたばかりの狼しかいない。
「どこを見ておる?ここだ」
いったいどこから聞こえるのだろうと周りを見回していたが、こちらを見ろとばかりにその大きな舌で顔を舐められた。
「もしかして貴方が喋りましたか?」
そんなまさかと思いながらも尋ねてみれば、そうだと頷かれる。
わーお、すごい。
「さっきまで喋れてませんでしたよね?お腹が空いて力が出なかったとかですか?」
「そうではない。従魔として契約したが故だ。助けてくれたことに礼を言う。ありがとう」
「いいえ、助けられてよかった。もう身体は大丈夫ですか?」
魔力がご飯だとエルが言っていたため渡してみたが、どこか不具合はないかと聞く。
「どこも問題はない。むしろ良すぎるくらいだ。其方の魔力はとても美味いな」
人間にとってのご飯と同じように、魔獣にとっても魔力によっては美味い不味いがあるらしい。
不味いならともかく美味いなら何も問題はない。
「自己紹介がまだでしたね。私は縁と言います」
「エニシ、か。これからよろしく頼む。我に名はないが、人はフェンリルと呼ぶ」
ならば何と呼べばいいか聞けば好きにしろと言われた。
「ならフェ、フェ……フェル、いや、フリ……あ、リルでもいいですか?」
「リル、か。構わん。」
ブンブンと尻尾を振っていることから気に入ってくれたようだ。
ならばと思いきって抱きついてみれば、ふわふわの柔らかい毛に受け止められる。
「ふふふふ。あー気持ちいい、ふわふわですね」
「エニシのおかげだ。にしても我にこのように抱きついてくるとは少々警戒心がなくはないか?」
「警戒する必要がないじゃないですか。これからはリルも家族なんですから。家族を抱きしめても何も問題はないです」
スノーのすべすべした皮膚も好きだが、リルのふわふわの毛も捨てがたい。
アレンたちにもふわふわがあるが触ると逆にナニをされるか分からないのでしない。
昔ペットを飼いたいと両親に言ったことがあったが、父親がアレルギー持ちだったため飼えず、ずっと憧れていたのだ。
「…………家族」
「……もしかして嫌でしたか?」
契約する前は言葉が交わせず詳しくは話せていなかったが、これはもしかしたらリルには迷惑だったのかもしれないと謝ろうとすれば、何故か撫でろとばかりに頭を押し付けてきた。
「其方がそこまで言うなら家族になってやろう。ほれ、いくらでも触れるがいい」
可愛い。
そのまま思う存分撫でさせてもらっていれば双子も目を覚ましたため皆でご飯を食べるのであった。
「にしても大きいリルもカッコイイですけど、ここまで大きいと家に入れますかね?」
「ムリでしょ」
さてどうしたものか。
このまま森に住んでもらっていても構わないのだが、契約主は定期的に従魔に魔力を渡さなければならないと言われ出来ることなら一緒に暮らしたかったのだ。
「大きいと問題があるのか?ならばある程度は変えられるから気にすることはない」
「…………え?」
どういうことだと聞く前にその場で一回転したリルが、次の瞬間には子犬ほどの大きさに変わっていた。
………何が起こった?
「リ、リル?」
確認するように呼んでみれば、やはりというかその子犬はリルだったようで何だ?と首を傾げている。
「ち、ちっちゃくなっちゃった……」
どんな手品だ。
とりあえず子犬姿になった可愛いリルを撫で回して精神安定を図る。
やって落ち着いてきた頃どういう事だとリルに聞いてみれば、これも従魔契約の中の一つらしい。
「やはり側にいて動き回るには少々問題があるからな。このように広い場所でなければ邪魔にしかならぬだろう」
凄い、凄すぎる。
子狼とほとんど変わらない大きさで親子というより兄弟に見える。
「ね、ねぇコイツいきなりチビになったんだけど…」
目を見開き驚くエルたちにもしや今の会話が聞こえてなかったのかと首を傾げれば、従魔の声を聞くことが出来るのは契約者のみだとリルが教えてくれた。
それからエルたちにもきちんと説明すれば驚きながらも信じてくれた。
「これなら一緒に暮らせますね」
よかったよかったと頷く縁に隣でエルがそれでいいのかと頭を抱えていたが見て見ぬフリが出来る大人な縁であった。
「そういえばお子さんは何て名前なんですか?」
「ん?言ってなかったか?この子は我の子ではない。最近森で拾った子だ」
………………なんですと?
そんな話し聞いてないと詳しく説明を求めれば、どうやら数ヶ月前に森に打ち捨てられていたのを助けたらしい。
「この子は魔獣ではなく普通の獣でな、魔獣ならば魔力譲渡により回復も出来たのだろうがそれも出来ず参っておった」
怪我する子狼を放って狩りにも行けず、行けたとしてもまだ身体が出来上がっていない子どもに生肉を与えることも出来ないため困っていたようだ。
リルも雄であるため母乳など出せるはずもなく、弱っていく子狼に自身の食事も忘れていたのだろう。
衰弱する身体で見つけた餌(縁たち)に腹を満たそうと思ったらしい。
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