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健在
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「今回は俺が勝ちみてぇだな」
「あ、お久しぶりです。マルスさん」
おう!と手を上げながらやって来たのは今日も今日とて元気にお仕事中のマルズスだった。
その肩には来る途中獲ったのか大きな鹿らしきものが乗っていたが。
彼は来る度何かしら食料を置いていってくれるらしい。
「飯は今からだよな?」
まさかまだ食べてないよなとどこか期待するようなマルズスに笑いながらも頷けばガッツポーズをして喜んでいた。
「これで美味い飯作ってくれ」
「構いませんが……お手伝いはしていただけないんですか?」
流石にこうも大人数ともなれば縁1人の手には余る。
食べたいなら手伝ってもらわないと頼めば快く引き受けてくれるのだった。
「おれもやる」
腕まくりをし、さぁやるかと大根を掴めば後ろから来たサウルに袖を引かれた。
数秒考え、ならばと包丁と大根を差し出す。
「ゆっくりでいいですからね。………そう、そうです」
やはり男の子。
力が足りないかなとも思ったが、切れ味のいい包丁のおかげもあり見事に大根を切り分けていた。
「切れたら炒めて、お肉も入れて…………あとはサウルたちが頑張って作ってくれた味噌で味付けしましょう」
隣りでお握りを握りながらも様子を見ていたが、思いの外器用にサウルは調理していた。
聞けば普段からお婆さんを手伝って料理しているらしい。
「………さいきんよくねこむんだ。足もこしもいたいって」
彼女に代わりサウルが子どもたちを引っ張っていってくれているようだ。
怪我や病気は大抵は治せるが、老いという自然の摂理には誰も逆らうことは出来ない。
彼らにとって大切な家族であり、保護者でもある彼女にサウルも不安なのだろう。
「サウルが心配してくれてお婆さんもきっと嬉しいでしょう。けどそうやってサウルが悲しんでばかりだとお婆さんもきっと気にしてしまいますから……笑ってあげて。笑って今日は何をした、これが楽しかった、みんなでこんなことをしたんだと教えて上げて下さい」
「そんなことしてどうすんだよ」
話しをしたところで治りはしないだろうと訴えるサウルも、如何に人が脆いかを分かっているのだ。
確かに話しをしたところで身体を癒すことは難しいだろう。
だが………
「人はね、嬉しいこと楽しいことがあると生きたいと思える生き物なんですよ」
「…………いみ分かんねぇ」
楽しいこと、嬉しいこと、喜びがある中で人が死にたいと思うことはそうない。
「サウルも褒められたら嬉しいでしょ?また頑張ろうと思いますよね。それはつまり生きようという力にもなっているんですよ」
屁理屈と言われるかもしれないが、また頑張ろうはまだ生きてやるという意味もあるのだ。
「サウルの、みんなの成長がお婆さんの力になっているんです。みんなの頑張っている姿が、笑っている姿が何よりの生きる力になる。それはお婆さんがサウルを含めみんなのことが大好きだから。大好きなみんなの幸せな姿を見ることがお婆さんの幸せなんです」
「おれ…………でもおれなんにも……」
手を洗うと俯くサウルの頬を優しく包み込む。
「サウルはここに来て良かったと思いますか?」
「うん」
躊躇うことなく頷いた彼に微笑む。
「仕事もあります。生きるためにと畑も耕しています。やることも多く、辛いこともあるでしょう。それでも?」
「みんながいる。いえも、ごはんも、それに………アンタも」
自分の存在が少なからず彼の支えになっているのなら嬉しい。
「ありがとう。そう言ってもらえてすごく嬉しいです。なら分かりますよね?サウルがみんながいて良かったと思うのと同じで、お婆さんもみんながいてくれて良かったと幸せだと思ってくれている。そんなみんなのために頑張って生きようと思ってくれている」
人には、生きる者全てに寿命はある。
だがどれだけ生きれるかはその人の頑張り次第でもあるのだ。
「今まで以上に頑張れと言っているわけではありません。ただ幸せだと笑って毎日を過ごしてくれることがお婆さんの幸せなんです」
「…………………分かった」
縁が言ったこと全てを理解しろとは言わない。
だが思うところはあるのか、何となく言いたいことは伝わったようだ。
「この料理もサウルが作ってくれたと知ったらきっととても喜びますよ」
「……そう」
素っ気ない返事ではあったが赤い耳が照れているだけなのだと教えてくれる。
それから何品か作り上げると皆で食卓を囲むのだった。
「おいオッサン、やさいも食えよ。いい年してはずかしくねぇの。かっこわりぃ」
それは肉ばかり食べ野菜を残すマルズスに対してサウルが言った言葉。
随分落ち着いたと思っていたが、口の悪さは今も健在だったらしい。
だが言葉は悪いが言っていることは間違っていなかったため黙って見ていれば……
「お前……フレックみたいなこと言うな。ちっ、仕方ねぇ」
嫌がりながらも怒ることなく残した野菜たちを平らげるのだった。
「あ、お久しぶりです。マルスさん」
おう!と手を上げながらやって来たのは今日も今日とて元気にお仕事中のマルズスだった。
その肩には来る途中獲ったのか大きな鹿らしきものが乗っていたが。
彼は来る度何かしら食料を置いていってくれるらしい。
「飯は今からだよな?」
まさかまだ食べてないよなとどこか期待するようなマルズスに笑いながらも頷けばガッツポーズをして喜んでいた。
「これで美味い飯作ってくれ」
「構いませんが……お手伝いはしていただけないんですか?」
流石にこうも大人数ともなれば縁1人の手には余る。
食べたいなら手伝ってもらわないと頼めば快く引き受けてくれるのだった。
「おれもやる」
腕まくりをし、さぁやるかと大根を掴めば後ろから来たサウルに袖を引かれた。
数秒考え、ならばと包丁と大根を差し出す。
「ゆっくりでいいですからね。………そう、そうです」
やはり男の子。
力が足りないかなとも思ったが、切れ味のいい包丁のおかげもあり見事に大根を切り分けていた。
「切れたら炒めて、お肉も入れて…………あとはサウルたちが頑張って作ってくれた味噌で味付けしましょう」
隣りでお握りを握りながらも様子を見ていたが、思いの外器用にサウルは調理していた。
聞けば普段からお婆さんを手伝って料理しているらしい。
「………さいきんよくねこむんだ。足もこしもいたいって」
彼女に代わりサウルが子どもたちを引っ張っていってくれているようだ。
怪我や病気は大抵は治せるが、老いという自然の摂理には誰も逆らうことは出来ない。
彼らにとって大切な家族であり、保護者でもある彼女にサウルも不安なのだろう。
「サウルが心配してくれてお婆さんもきっと嬉しいでしょう。けどそうやってサウルが悲しんでばかりだとお婆さんもきっと気にしてしまいますから……笑ってあげて。笑って今日は何をした、これが楽しかった、みんなでこんなことをしたんだと教えて上げて下さい」
「そんなことしてどうすんだよ」
話しをしたところで治りはしないだろうと訴えるサウルも、如何に人が脆いかを分かっているのだ。
確かに話しをしたところで身体を癒すことは難しいだろう。
だが………
「人はね、嬉しいこと楽しいことがあると生きたいと思える生き物なんですよ」
「…………いみ分かんねぇ」
楽しいこと、嬉しいこと、喜びがある中で人が死にたいと思うことはそうない。
「サウルも褒められたら嬉しいでしょ?また頑張ろうと思いますよね。それはつまり生きようという力にもなっているんですよ」
屁理屈と言われるかもしれないが、また頑張ろうはまだ生きてやるという意味もあるのだ。
「サウルの、みんなの成長がお婆さんの力になっているんです。みんなの頑張っている姿が、笑っている姿が何よりの生きる力になる。それはお婆さんがサウルを含めみんなのことが大好きだから。大好きなみんなの幸せな姿を見ることがお婆さんの幸せなんです」
「おれ…………でもおれなんにも……」
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「うん」
躊躇うことなく頷いた彼に微笑む。
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自分の存在が少なからず彼の支えになっているのなら嬉しい。
「ありがとう。そう言ってもらえてすごく嬉しいです。なら分かりますよね?サウルがみんながいて良かったと思うのと同じで、お婆さんもみんながいてくれて良かったと幸せだと思ってくれている。そんなみんなのために頑張って生きようと思ってくれている」
人には、生きる者全てに寿命はある。
だがどれだけ生きれるかはその人の頑張り次第でもあるのだ。
「今まで以上に頑張れと言っているわけではありません。ただ幸せだと笑って毎日を過ごしてくれることがお婆さんの幸せなんです」
「…………………分かった」
縁が言ったこと全てを理解しろとは言わない。
だが思うところはあるのか、何となく言いたいことは伝わったようだ。
「この料理もサウルが作ってくれたと知ったらきっととても喜びますよ」
「……そう」
素っ気ない返事ではあったが赤い耳が照れているだけなのだと教えてくれる。
それから何品か作り上げると皆で食卓を囲むのだった。
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