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思い出は胸に
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別れは突然やってくる。
いくら覚悟や自覚があったとしても、それが何日のいつか、何時何分何秒とまでは確定は出来ず、誰にも予想など出来ない。
「誰も死を避けることは出来ません。命というものがある限り人はそれから逃れることは出来ない」
ジークによって運ばれ地面に寝かされた彼女の表情は変わらず美しいものだった。
「お婆さんがこうして眠りについたように、いつかは私も老い死に辿り着く。…………サウル、君にもそれはいつかは訪れる」
子どもたちの影に隠れるように立ち尽くすサウルを呼び寄せる。
涙こそ流していなかったが、怖いくらいに顔を強張らせているのは我慢しているからだろう。
「時として死に方は選べないかもしれません。私の両親がそうだったように」
何も覚悟などしていなかった。
まさか両親が帰ってこない日が来るなどあの時の自分は考えもしていなかった。
「ーーけど、生き方は選べます。事情があり思った通りにいくとは限りませんけど、それでもまた人はそれを選び生きている。サウル、君がここへ来ることを選び、皆と家族になったように」
「……………うん」
「私は何度も君に言いましたね。幸せになりなさいと。けどそれは君自身の幸せであり、私が決めることじゃありません。人によっては不幸に見えても、君自身が幸せだと思うならそれで構わない」
彼らの未来は、可能性はこれからいくつも生まれることだろう。
その中でどう選び生きていくかは己自身が選び生きていくしかない。
「お婆さんが言っていました。君たちと暮らせて幸せだと。サウルたちの存在がお婆さんを幸せにしてくれた」
俯き見えない表情に、見せてと頬を優しく撫でる。
「悲しみは幸せだったからこそ感じるものなんですよ。だからたくさん泣いてあげて。今までありがとう、楽しかったよ、一緒にいられて幸せだったとお婆さんに伝えてあげて」
大人になるほどそれも難しくもなるが、今は縁やカール一家、イリスたちなど大人たちが近くにいる。
「泣くことは悪いことではありません。時と場所にもよりますけど、今は我慢する必要はない。いっぱい泣いてどれだけお婆さんのことが大好きだったか伝えて上げて」
そう言い背を軽く押してやれば、必死に食いしばっていた口を開き涙を流しお婆さんに縋り付くサウルの姿を見守る。
きっとお婆さんの死を一番悲しんでいたのはサウルだ。
だが子どもたちの中でも年長者ということ、元々の性格もあり素直に泣けていなかったのだろう。
「シャイアさんもきちんとお別れしてきなさい」
先程目を覚ましたらしいシャイアにも、これが最後だということを伝える。
過ごした日数は短くとも、共にいる時間が多かったのはシャイアだ。
縁がいない時はお婆さんに裁縫を習い、寝込むようになってからは隣りで出来を彼女によく見せていたらしい。
「みんなにお願いがあるんです。お婆さんをお花と一緒に送って上げたい。だからみんなでお婆さんにお花を渡して上げてくれますか?」
お別れの挨拶用にとイリスに頼んでおいた花を受け取ると、子どもたち一人一人に手渡していく。
泣きながらも別れを告げ飾り付けていけば、まるで花畑で眠っているかのようだった。
「貴方は私にとって教師であり、友であり、何よりーー同志でした」
縁と同じく獣人を愛した彼女。
こちらへ来て初めて出会った、獣人を人として見ていた女性。
彼女の存在は縁にとって自信にもなっていた。
「愛した人が認められないのは悲しいと言ってくれましたね」
獣人を、自分を愛した人を否定されるのはいつだって辛いものだった。
その気持ちを理解してくれる彼女は縁の支えにもなっていた。
「何が正しいのか、私がしてきたことは間違いだったのではと迷ったこともありました。けど貴方は自分は幸せだと笑ってくれた」
その言葉が、その笑顔に、勇気をもらった。
「貴方に感謝を。そして貴方を選んでくれた旦那様にも。お2人がこれから再び出会い、手を取れることを願っています。お2人から貰った愛情はきっと子どもたちが次へと運んでくれることでしょう。子どもたちの未来を繋いでくれて………………本当にありがとう…ござい、ました」
一瞬声が詰まった縁に、ジークが手を握ってくれる。反対側からはアズが。
泣くサウルとシャイアを呼び寄せると、放たれた火が燃え移っていくのを皆で静かに見守る。
彼女は皆に愛され、何より子どもたち皆を愛してくれた。
子どもたちの涙が何よりそれを物語っている。
「ゆっくりお休み下さい。ありがとうございました」
心安らかな眠りを願い最期の別れを告げるのだった。
いくら覚悟や自覚があったとしても、それが何日のいつか、何時何分何秒とまでは確定は出来ず、誰にも予想など出来ない。
「誰も死を避けることは出来ません。命というものがある限り人はそれから逃れることは出来ない」
ジークによって運ばれ地面に寝かされた彼女の表情は変わらず美しいものだった。
「お婆さんがこうして眠りについたように、いつかは私も老い死に辿り着く。…………サウル、君にもそれはいつかは訪れる」
子どもたちの影に隠れるように立ち尽くすサウルを呼び寄せる。
涙こそ流していなかったが、怖いくらいに顔を強張らせているのは我慢しているからだろう。
「時として死に方は選べないかもしれません。私の両親がそうだったように」
何も覚悟などしていなかった。
まさか両親が帰ってこない日が来るなどあの時の自分は考えもしていなかった。
「ーーけど、生き方は選べます。事情があり思った通りにいくとは限りませんけど、それでもまた人はそれを選び生きている。サウル、君がここへ来ることを選び、皆と家族になったように」
「……………うん」
「私は何度も君に言いましたね。幸せになりなさいと。けどそれは君自身の幸せであり、私が決めることじゃありません。人によっては不幸に見えても、君自身が幸せだと思うならそれで構わない」
彼らの未来は、可能性はこれからいくつも生まれることだろう。
その中でどう選び生きていくかは己自身が選び生きていくしかない。
「お婆さんが言っていました。君たちと暮らせて幸せだと。サウルたちの存在がお婆さんを幸せにしてくれた」
俯き見えない表情に、見せてと頬を優しく撫でる。
「悲しみは幸せだったからこそ感じるものなんですよ。だからたくさん泣いてあげて。今までありがとう、楽しかったよ、一緒にいられて幸せだったとお婆さんに伝えてあげて」
大人になるほどそれも難しくもなるが、今は縁やカール一家、イリスたちなど大人たちが近くにいる。
「泣くことは悪いことではありません。時と場所にもよりますけど、今は我慢する必要はない。いっぱい泣いてどれだけお婆さんのことが大好きだったか伝えて上げて」
そう言い背を軽く押してやれば、必死に食いしばっていた口を開き涙を流しお婆さんに縋り付くサウルの姿を見守る。
きっとお婆さんの死を一番悲しんでいたのはサウルだ。
だが子どもたちの中でも年長者ということ、元々の性格もあり素直に泣けていなかったのだろう。
「シャイアさんもきちんとお別れしてきなさい」
先程目を覚ましたらしいシャイアにも、これが最後だということを伝える。
過ごした日数は短くとも、共にいる時間が多かったのはシャイアだ。
縁がいない時はお婆さんに裁縫を習い、寝込むようになってからは隣りで出来を彼女によく見せていたらしい。
「みんなにお願いがあるんです。お婆さんをお花と一緒に送って上げたい。だからみんなでお婆さんにお花を渡して上げてくれますか?」
お別れの挨拶用にとイリスに頼んでおいた花を受け取ると、子どもたち一人一人に手渡していく。
泣きながらも別れを告げ飾り付けていけば、まるで花畑で眠っているかのようだった。
「貴方は私にとって教師であり、友であり、何よりーー同志でした」
縁と同じく獣人を愛した彼女。
こちらへ来て初めて出会った、獣人を人として見ていた女性。
彼女の存在は縁にとって自信にもなっていた。
「愛した人が認められないのは悲しいと言ってくれましたね」
獣人を、自分を愛した人を否定されるのはいつだって辛いものだった。
その気持ちを理解してくれる彼女は縁の支えにもなっていた。
「何が正しいのか、私がしてきたことは間違いだったのではと迷ったこともありました。けど貴方は自分は幸せだと笑ってくれた」
その言葉が、その笑顔に、勇気をもらった。
「貴方に感謝を。そして貴方を選んでくれた旦那様にも。お2人がこれから再び出会い、手を取れることを願っています。お2人から貰った愛情はきっと子どもたちが次へと運んでくれることでしょう。子どもたちの未来を繋いでくれて………………本当にありがとう…ござい、ました」
一瞬声が詰まった縁に、ジークが手を握ってくれる。反対側からはアズが。
泣くサウルとシャイアを呼び寄せると、放たれた火が燃え移っていくのを皆で静かに見守る。
彼女は皆に愛され、何より子どもたち皆を愛してくれた。
子どもたちの涙が何よりそれを物語っている。
「ゆっくりお休み下さい。ありがとうございました」
心安らかな眠りを願い最期の別れを告げるのだった。
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